どうも最近は自分を開放し過ぎる気がする。
丁度一月前、柳川の駅前街で呑んだ事は「束の間の息抜き」で記事にしたが、お金を払ってまで楽しめる場ではなかった。少なくともその時はそう思った。
その埋め合わせとして、久留米では多少は?いい思いをした(「ロシアンパブ」参照)。その勢いを買い、隣組の世話の打ち上げでは再び柳川駅前で呑むも、これが大きな誤算と悪夢の始まりになる。
でもなぜ年末になって、夜の街に出掛けるようになったのか?
一つにはコロナ渦が明けた事にある。勿論、オミクロン変異株は怖いが、地元ではそれらしき報告は1つもない。もう一つは亡き母の葬儀が終った事によるある種の開放感である。
それと三つ目は実はこれが一番は大きいが、スクワットをやってる事で急速に体力と精力が向上し、お酒に強くなり、晩酌くらいでは酔えなくなっているのだ。
本当は久留米に行きたがったのだが、なかなか言い出せない。大川に行くか柳川に行くかで迷った挙げ句、近場の柳川駅前で呑む事にした。
駅前の居酒屋は悪くはなかった。
3人の世話人で飲み明かし、コロナ明けの隣組の飲み会としては不思議と盛り上がる。
私も自分を開放したばかりだったし、廃墟と化した週末の久留米の繁華街の事を説明すると、みな不思議がった。というのも、柳川は週末だけは賑やからしい。
居酒屋を出てそのまま帰る気でいたが、世話人の1人が”もう一軒ハシゴしよう”と言い放つ。
火曜日だというのに、駅前はそこそこ賑わってはいた。しかし、世話人の行きつけのスナックは閉まっていた。
私は先月の事を思い出し、目の前のビルにあるフィリピンパブを思い出したが、口には出せなかった。そんな時、もう1人の世話人が同じビルの2Fにある外人パブへ行こうと言う。
最初の誤算
古き良きスナックに行きたがったが、仕方なくついていく事にした。
店内はしっくりと落ち着いた作りだったが、客はいない。女の子はそこそこいるものの、みな緊張感もなく暇そうにしている。大体において、スマホを弄ってる娘がいる飲み屋は腐っている。
事実その通りだった。
世話人の二人は行きつけらしく、屈託のない会話を駆使しながら横についた女の子を笑わせていた。私の横についた女の子も決して悪くはなかったが、どうも久留米の女が頭から離れない。
そうこうするうちにダンスが始まり、嫌な気分に陥る。
”これだからフィリピンパブはいつまで経っても駄目なんだ💢”
ダンスの後は二軍の消化試合みたいだった。みな会話もなくなり、言葉もなく店を後にする。
”コロナのせいかな”
”盛り上がりそうだったけど、結局はジリ貧ですよね”
私は敢えてウソをついて、二人を励ました。
”でも横についた女の子たちは可愛かったじゃないですか。久留米よりも全然良かったですよ(嘘)”
”ええ?そうなんだ”
”そんなもんですよ(もっと嘘)”
私も含め、残りの二人も何だかに煮え切らなそうである。
私は勇気を持って、二人を誘った。実は、一ヶ月前のフィリピンパブが気になって仕方がなかったのだ。
二人はその店も何度か行った事があるらしく、すぐさま意気投合し、その店を潜った。
店内に入った瞬間、嫌な予感がした。
ガラーンとしてて誰も出てこない。そんなに遅い時間じゃないのに、この緊張感のなさは???
勇気を持ってカーテンを捲り、奥に入った。慌ててボーイらしき男が出てきて、検温計を額に当て、テーブルに案内する。
店内は多少は賑やかだった。前回よりも客は多いみたいだ。
二度目の誤算
前回と同様、ママらしき中年女がやって来た。
ここでも嫌な予感がした。
女は私の事を知っていた。そして、前回私の横についた女の子も知っていた。
しかし、話が微妙に食い違う。前回最後まで横についてたタレントはこの店にはいない。
ママは違う女の子を私の所に呼んだ。スタイルはほぼ同じだったが、横に付くと全然違った。
横についた女に、前回の女の事を話すと、”一時帰国した”という。冷めた表情の女とは最初から会話が食い違った。まるで悪夢みたいな時間と空間である。
顔は閑散とした朝鮮系でスタイルはそこそこだったが、私には無味乾燥な悪魔に思えた。
私の悪いクセだが、どんな嫌な女でも相手と無理に合わせる所がある。
金を払って飲んでんだから、”この女はイヤだ”とハッキリと言えないのだ。
女もそれを察してか、新しい客が来るとそっちへ逃げ込んだ。残りの二人も横についた女と盛り上がってそうで盛り上がらない。先の店よりもテンションは明らかに低くなっていた。
そこからが最悪だった。腐った様な中年女が横に付き、私は少しヤケになった。しかし床を見ると1枚だが千円札が落ちてるじゃないか。少し気を持ち直した私だが、目の前ではしゃいでる金髪女が否応なく視界に入った。
視力の悪い私には、そこそこ若い娘に見えた。
”目の前の金髪女を呼んでくれ”
中年女はすぐにその女を私の横につける。まるで私の怒りをすぐさま察知したみたいな素早い行動だ。
近くで見ると(30代中盤という事で)少し年老いてたが、グラマラスな女ではある。私も60近くになるから、丁度いい組合せかもしれない。
牛蛙みたいな不器用な人相と分厚いパンストだけが✘だったが(笑)、私の機嫌を取り繕うよう色々と気を遣ってくれた。
女としても程遠かったし、指名料とドリンク代の2千円は大きな余計だったが、もう二度とこの店に来る事はないだろう。
お金を払って悪夢を見るのは、一度だけで十分だ。
ビルを降りて外へ出ると、一ヶ月前に感じた虚しさは不思議と消え失せていた。
若い時は、駅前でよく飲み明かした。決して楽しくも愉快でもなかったが、只々飲み明かしたもんだ。
でも昔に戻る事は出来ない。
若作りして、無理に若い娘を笑わせる気もない。そう思うと、こうして呑み歩いてる事が無機質なおママゴトにも思えてくる。
三度目の誤算
”今日は全くのハズレでしたね。私とした事がスミマセンでした”
私は素直に二人に侘びた。
世話人の1人は私を庇った。
”いやいやお互い様です。いい娘もいなかったし・・・”
突然、もう1人の男が意を決した様に言い放つ。
”いや、柳川が終わってんですよ。大川に良い店があるから行きましょう”
我らは最後の望みに賭けた。
”大の男がこのままじゃ終われない”
タクシーを拾い、すぐさま三人は大川へと向かう。
私が”(大川は)10年ぶりほどだ”と言うと、二人は少し驚いていた。
”大川は一時は廃れてましたが、最近は少しはマトモになってますよ”
大川に詳しい世話人が口を開く。
私達は、ある飲み屋ビルの1Fにある人気のクラブに入った。
しかし、タイミングが悪かったのか客で満杯である。出迎えたホステスはそこそこチャーミングだったが、”今はちょっと無理みたいですね。ゴメンナサイ”と残念そうに囁く。
これまた裏切られた我らは肩を落とし、店を後にした。
気をなんとか取り直し、目の前のド派手なピンク色の大きな看板が目に入った。
ただ予約しようも電話番号がない。(県外客お断りとか)何だか少し怪しげな店だが、新しく新装したフィリピンパブに向かう。
店内からは団体客の浮かれ切った罵声が響く。
これまた、嫌な予感がした。
チーママらしきオバサンが出てきて、我ら3人を招き入れようとするも、ここも満杯らしく、支配人と相談の上、”女の子はいるんですが、この状態だとね・・・”と、案の定断られてしまう。
”ド田舎の平日でこれなんですかね。久留米なんて週末でも真っ暗でしたよ”
”確かに、週末でこの賑わいなら解るんですが・・・”
”コロナ明けの年末という事で、みな鬱憤が溜まってるんですかね”
私は諦めの境地に浸っていた。
”今日は仏滅だろうか。いや、そう思う事にしよう”
しかし、世話人の1人が何処かに電話をかけてるではないか。
”何とか入れそうな店がある。そこに行ってみよう”
もうここまでくれば、開き直りしかない。
予約を入れてたせいか、店の前で店長らしき人が快く出迎えてくれた。
ラウンジにしては狭く貧相な店内だったが、我らお年寄りが寛ぐには丁度いい空間ではあった。
我ら三人はホッとしたのか、いきなりハイボールで乾杯した。柳川で連敗し、大川でも二度断られた。そんな後だから余計に炭酸が身にしみる。
横についた女達は”可もなく不可もなく”と言っておこう。ここで愚痴っても悲しくなるだけである。
ホステスはフィリピンと日本人の混成みたいだが、みな同じ様なパッとしない風貌で落ち込みは隠せなかった。
私の横についた日本人ホステスが(この店が終わったら)”隣の店でアフターしましょ”と誘う。中途にセクシーな娘だったが、子供の写真を見せつけられ、ゲンナリした。
二人は乗り気だったが、私はどうもその気になれなかった。
最後に〜悪夢の中の悪魔
突貫工事で建てた様なプレハブの店内では、ラウンジとは名ばかりで、流石に雰囲気が台無しである。私は店の外に出ると、アフターを約束した二人と別れた。
大通りに出てタクシーを呼ぼうと思ったが、先程のチャーミングなホステスが客を送り出そうと店の前にいた。
女は”今なら少しは空いてるかな”と微笑むと、私は店内を覗き込んだ。若い客でごった返しし、とても私が入る余地はなかった。
”いや、今度暇な時に来るよ”と言って、その場を後にする。
閉まってる筈の店内からは、相変わらず団体客の騒ぎ声が響く。
”すでにコロナは過去のものかもしれない”
確かに、コロナ渦で日本は多くのものを失った。しかし、その反動で新たなる何かを掴もうとしている。
少なくともド田舎の大川では、息を吹き返しつつある鼓動を十二分に感じる事が出来た。
呑み屋ってつくづく思うのだが、明らかにハズレと思える店に立ち寄り、当然の様にハズレを引く。記事では”金を払ってまで行く店ではない”と書きながら、ふと行きたくもなる。
あたかも書いた記事に対するアテツケの様な悪夢にも感じた。
悪夢は何処にも存在する。勿論、快楽や悦楽の中にも存在する。要は、悪夢に陥った時どう賢く機敏に切り抜けるかである。
若い頃は、その切り替えが早かった様に思う。年老いた今は只々意固地になり、その場の(時の)流れに任せたがる自分がいる。
自分を開放するのはいい事だが、それによって危機感がなくなるのは致命的ではある。
もし神様が存在するとしたなら、今回の悪夢?は神様のご褒美なのだろうか?それとも神が仕組んだ香典返しなのだろうか?
今の飲み屋ってどこもそんなもんじゃないですか?
ウシガエル似の金髪女は思い切り笑わせてくれました。
でもチャーミングな女は転んださんに気があるかもしれんですよ・・・多分
反省しきりです。
居酒屋で不思議と盛り上がって、その場の勢いってあるんですよ。コロナで長く塞ぎ込んでた気持ちを一気に発散させようというか・・・
柳川も大川も基本的にはスラムなんですが、コロナの打撃を受けなかったので復活も早いかもです。久留米のように近隣住民の信用を失ったら致命的ですから。
男の人は、そうやって散財するのかなと思いながら読ませてもらいました。しかし、女性の魅力って何でしょうね。短大のときに福岡出身のモテモテの友人がいたんですが、顔はブスの部類だったかもしれないけれど話術がすごかったです。私の夫も彼女が我が家に初めて来た時、一瞬ブスなのに驚いたけれど、次第に顔が気にならなくなって、最後は彼女の魅力に引き込まれてしまったと言っていました。かといって、話術だけでもなかったような…。結局、性格が魅力的ということになるのかな。プラス、頭も良いということなのでしょう。水商売の女性の魅力も顔と身体だけでもないのでしょうね。
テニスとか山歩きとか釣りとか、そうした高尚な趣味があれば、こうした惨めな事態には陥らないんですが。
確かに、ホステスの中にもオバケみたいなのはいますね。でも会話とか性格とか不思議な魅力とか、そういうものも夜の街には必要なんでしょうか。
でもスクワットって1日僅か数分でも凄い体力(精力もですが)が回復するんですよね。ビコさんもお試しあれです。
日本人はずっと我慢しっぱなしだったから
コロナとは無縁だった田舎へ行くほどに夜は盛り上がってんですかね。
神が仕組んだ香典返しも良薬になれば良いんですが。
人は一度でも箍(タガ)が外れると元には戻りません。
今の私がそんな感じです。
昨晩もやんわりと誘いがありましたが、何とか断りました。火曜日の失敗がなければ誘いに乗ってたでしょうね。
何でもそうですが、中途にいい思いをすると中毒になるんですよね。特にコロナ明けの今はもう一度、タガを締め直す時期に来てるのかなと痛感します。
ああこれも記事にしたくなりました。