最近は、あまり翻訳小説が出ないので、出版されたものは有名作家のものか、ある程度読めるものなのだろうと思っている。
2012年9月刊の新しい本。
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50代になったケイトは、30年以上昔に恋人だったダニーの母から、会いたいという手紙を受け取る
1972年の夏休み、ダニーとサイモンは大学生だった、私(ケイト)と三人でサイモンのおじの家で、過ごすことになった。私は厳しい両親にフランスのおじの家で果物の収穫を手伝うと嘘をついていた。
うだるような夏の日、海岸でトゥルーディーという女の子に出会い、同居することになった。
二組のカップルが出来そうだったが、なぜかサイモンとトゥルーディーは友人以上には見えなかった。
しかし家事の出来ない私と違ってトゥルーディーは食事の用意もできて、当時のヒッピー風放逸な自堕落な生活を少しは引き締めていた。
ジミーとサイモンは、家を借りる代わりに、庭の管理と池を作る条件があった。
夏の日が照りつける中、彼らの作業は遅遅として進まなかった。
そのうち期限が近づくにつれ、なんとか掘り進んで形が出来てきていた。
だがこの頃、うまくいっていたはずの4人の生活は、暑い夏の日にあぶられ、
きまりのない崩れた暮らしの中から少しずつ崩壊し始める。
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事件が起きてから(事件にはならなかったが)ケイトは、ダニーの母が瀕死の床で書いたらしい手紙を無視出来ず会いに行く。
若い日のダニーの写真を見せられても、息子を失った母の疑問には答えられない。
遠い夏のあの日、なにが起きたのを知っているのはもうケイトだけだった。
ケイトの現在と過去が交互に書かれる。面白い構成で、夏の暑さの中で狂っていく生活が、不気味な低音になり、それとなく先をにおわせる手並みは面白い。
単調にも見える生活描写が、次第に歪んでいく日々を写して、先を急がせる。
こうした中で起きた事件の原因も、謎も、ありそうな設定だが、興味深い展開になってクライマックスまで引きずられていく。
新人の作品にしては、瑕疵のない出来で、ダイナミックといえないまでも、暑い夏の描写も、狂って行くさまも、それぞれのキャラクターもよく出来ている。
登場人物も少なく、読みやすかった。