空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「激流」 上下 柴田よしき 徳間文庫

2013-01-25 | 読書




図書館の予約は10冊出来る。予備カートに30冊入る。
予約した中から準備が出来るとメールが来る。
「激流」は人気作だと思っていたが、すぐに来て驚いた。
2009年初刷の文庫だから早かったのだろう。話題になった本も最近は回転が速い、次々に読み捨てられ消えて行くようだ。

* * *

七人の中学生の二十年後の話。
中学の修学旅行でふっといなくなった冬葉はその後も行方が分からなかった。
七人は同じ班で、冬葉の失踪当時は、騒がしい取調べもあり周囲の話題になったが、進学や就職で進路も別れ、20年後はほとんどの班員はその出来事を思い出すこともなくなっていた。

ところが、

私を憶えていますか? 冬葉

というメールが次々に来て、残った6人の周りに、変化が訪れる。

冬葉は生きているのか、班別の自由行動の途中、バスから降りるところを確認できなかった6人は、メールを見てこころが騒ぐ。

三隅圭子(サンクマ)・・・編集者になっていたが、夫婦それぞれの不倫で離婚調停中。
秋芳美弥(ミヤ)・・・歌手でもあり小説も書く。麻薬使用で有罪になり、一時芸能界から消えかけたが、才能があり、再出発しようとしている。
鯖島豊(サバ)・・・優等生、進学校から東大卒。就職先は大手企業ではあるが出世コースからはずされている
萩野耕司(ハギコー)・・・警視庁の刑事になっていた。
御堂原貴子(オタカ)・・・美少女、成人してからもぐんを抜く美貌が目立っている。平凡な男の妻になり、夫はリストラで求職中。
長門悠樹(ナガチ)・・・高校中退で住所不明。

この6人、一人ひとりの20年間、お互いの人生は交わらずにきたが、冬葉からのメールで、急遽再会することになる。
彼女は生きていたのだろうか。
それぞれの暮らしが明らかになっていく、日常の仕事ぶりや苦しみを、中学生の時代から遠く過ぎてしまった今になって振り返る。
再会すると、忘れていた些細な出来事、中学生活の一齣を振り返ることになった。
今になって交差する時、冬葉の失踪に関心が深まり、刑事になったハギコーの捜査する殺人事件に遠いかかわりを持ってきたりする。
冬葉は生きているのだろうか。
6人の胸の中の疑問は、情報を交換して、当時の日々を煮詰め、それを語ることで少しずつ、見えてくるものがある。

* * *

20年前の中学時代の出来事が6人の中で甦ってくる。
一人ひとりの生活がえががれる。接点のあることもないことも20年の歴史だった。
その中から、冬葉につながる情報が少しずつ浮かんでくる。
確かに面白い話になっていて流れに沿って読み進める。

しかし、盛り上がりに乏しい。
ページ数が多い大部の中には、説明や冗長な部分が多い。
貴子の頭抜けた美人振りが何度も繰り返され、彼女が子供のころから、顔の美しさだけをほめられることに罪悪感を持ってしまうくだりは分からないでもないが、だから今の生活はそうなるのかという疑問をもつ。
メンバーをイメージでつかむと、仕事や出来事の繰り返しは読んでいてだれる。
読み通すことに抵抗がないくらい読みやすく、終わり方にも問題はないが、全体的に、冬葉はどうなのかという結末以外には、忍耐のいる作品だった。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする