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「裏返しの男」 フレッド・ヴァルガス 創元推理文庫

2014-04-23 | 読書


待ち時間があったので図書館でぶらぶら。変な題名の背表紙をみつけた。
何が裏返っているのかな。男がうらがえって??どうなる?

いつものように、まず解説を読むと、これはアダムスベルグ警視が主人公のシリーズもので、前作からこの作品が出るまで首を長くして待っていたとか。
そうなのか。CWA賞を三回、その第二弾、何もかも初めてお目にかかるのだけれど面白いかも。
やはり初見ではまだ友達とはいえない見ず知らずの警視より、気になるのは表題の裏返っている男だ。これは現実か比喩か、それとも両方か。
書名で選び、受賞歴で選び、最優先で読んだ。


まず、フランスの出来事。勿論殺人事件が起きるのだが、次々に牧場の羊が襲われるところから、イタリアからアルプスを超えてきた、野生の狼の仕業ではないだろうか。
ところが傷跡から並みの大きさの狼ではないらしい。

そこで、狼男の話になる、体に毛の無い男、人付き合いを嫌って山にすんでいる白くて毛の無いマサールだ。
そう決め付けた牧場主のシュザンヌが殺された。姿を消したマサールが怪しい。
彼の皮膚には裏がえすと狼の毛が生えているに違いない。
狼男の話はこうして始まる。

テレビでこのニュースを見たアダムスベルグ警部は、映っている木陰の後姿はかっての恋人カミーユではないだろうか。テレビににじり寄って確かめるがはっきりしない。

カミーユはそこにいた。カナダ人でグリズリー研究家、今は狼について調べている恋人と一緒に。
彼女は作曲家で、修理工。工具をバッグに詰めてめて出かけていく。死んだ友達のシュザンヌに頼まれトイレの配管を直したりする。最後のボルトを閉めるまでそこを動かない、読んでいてちょっとウフフとなる。

羊は次々に殺され、マサールは依然見つからない。

マサールの小屋から見つかった地図に羊が襲われた地点にしるしがあった。家畜運搬車を改造して後を追う。先回りして羊殺しを未然に防ぐこと。

運転はカミーユ、同乗は殺されたシュザンヌの養子と老羊飼い。

しかし敵もさるものなかなか尻尾が掴めず、ついに警部の登場となる。特異な感覚と推理で活躍する警部が到着して事件が解決に向かう。

羊が殺されたり殺人もあったり、残虐なシーンも多いが、作風としては落ち着いた描写で読みやすい。会話は機智に富んで面白い。
良質な作品だ。

初めて読んでみると、警部の登場まで、そしてカミーユたちの車が走り出すまでは、あまり変化を感じない。
だが三人の追跡行が始まると実に興味深く面白い、これが本領か。

まだ馴染みがないだけに、話に没頭して一気に読むというところまで行かなかった。

裏返しの男には曰くがあり、巧い具合に納得できる。

警部が命を狙われていたり、恋しいカミーユが思い切れなかったり、スパイスもちょっと効いていて、これならファンもいるだろうと思った。

シュザンヌが黒人の赤ちゃんを見つけて抱き上げ息子にすると宣言するところ、女性作家ならではの情感があふれ、赤子の様子もとてもかわいい。

ちょっと時間はかかったが、風邪で休養中にはこのくらいの刺激がちょうどいいかもしれない。
機会があれば一作目も読んでみたいと思う。
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