空耳 soramimi

あの日どんな日 日記風時間旅行で misako

「ソウルケイジ」 誉田哲也 光文社文庫

2021-07-09 | 読書

 

会話の部分は一人分で改行しているので白地の部分も多く、眠くなる暇がなく読み終えた。軽く面白かった。前作の「ストロベリーナイト」ほどのグロテスクさは薄味。
警察内部の話で紅一点の姫川刑事がいい。それに絡む年上の部下から監察医、そして背景では、組織の闇の部分に落ちていく警官など、前作は衝撃的だったが面白かった。
前置きが長くなったが、その「ストロベリーナイト」の数ヶ月後に起こった事件だ。


多摩川の土手に放置されていたライトバンから左手首が発見された。
だがほかの部分は見つからない。姫川班も動員され、周辺の捜査が始まる。
事件現場は確定したが、捜査は進展しない。

調べていくうちに、建築工事の関係者らしいということがわかってくる。

そして、事件の関係者の生い立ちがそれぞれ一人称で語られる。

身寄りのないものどうしの結びつきや、建設工事の裏や表、過去に地上げ屋のために苦しんだ家族のこと。

極貧の借金生活を清算するために、生命保険を当てに死んだ親を持つ若者のその後。
父親の自殺現場にいて助けられなかった贖罪の意味で若者を援助し、育ててきた過去のある男。

そういった人たちの話が絡んで、複雑な歯車がまわりだし、警察もそれに巻き込まれる。

生活のために命がけで金を工面する生き方。
それを食い物にするやくざ。
そこに生まれていく憎悪。
一方同じ境遇のものが強く結びついて、事件の謎を深めていく。

前作の猟奇的な面は少し陰を潜め、底辺で暮らしている恵まれない星の元に生まれた人たち。
その哀感が漂う生き方が事件を招き、最後にすべてが明らかになる。

捜査本部のお馴染みユニークな人たちは、姫川を中にして面白く、次第にそれぞれの生活も語られる。この息抜き的な空間があり、重い現実と平行して解決へのスピード感が増し、読む速度が上がる。

この警察ミステリ、面白かった。
 
 

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