
話題の本を今年の初読みにした。大いにサスペンス色が加わったフランスのミステリで、今年の読書傾向もこれで定まった感じがする。
堂々6冠という、発売当時には違う帯がついていた、2014年のミステリランキングが出た後は、帯に6冠の文字が躍る。
6冠(このミス、文春、早川、IN☆POCKET、英国ダガー賞、仏リーヴル・ド・ボッヂュ読者賞)まず珍しい国内1位独占で、これで読む気が出る。年が明けても、雑用が多く本ばかり読んでいられない、それでも面白くて一日かけて読み終わった。
アレックスという美女が主人公で、彼女の現在と過去が複雑に絡み合っている。
三章に分かれているが、肝心の書き出しを忘れてはならない、作者の優れているところはこの何気ない書き出しが全ての底に流ていて低音部をなしていると言うことで、読み飛ばしそうな冒頭から実力を知ることが出来る。
ーーーアレックスはその店で過ごす時間が楽しくてたまらなかった。今日も先ほどから一時間も、とっかえひっかえ試してみている。一つ着けてみても、どうかしらと迷い、試着室を出てほかのを選んできてまた着けてみる。その店にはヘアウィッグとヘアピースがいくらでもあり、毎日でもここに来て午後を過ごしたいくらいだった。
(略)試しに赤毛のをかぶって鏡を見たら、まるで別人のような自分がいたので驚き、こんなに変われるものなのかと感動してその場で買ってしまった。ーーー
店を出てすぐに誘拐される。人気のない建物の地下室に用意された箱に入れられ、宙吊りにされる。「死ぬのを見たい」と言う男に裸のまま身動きできない状態で水とペットの餌で放置される。体力が消耗してくると放たれた鼠が襲ってくる。
一方、パリ警察に女が誘拐されるのを見た、という通報があった。現場にかけつけたがまったく手がかりはない。
アレックスの現状と、警察の捜査が交互に語られる。
ここで捜査は絶望的だと読んでいて思う。警察がやっとたどり着いたとき誘拐犯は自殺してしまう。お手上げである。
しかしこれで物語りは終わるはずがなく、鼠に狙われながら、それを利用して、固まった姿勢のまま太いロープを切り、箱を揺らして落とし、抜け出して逃走する。
アレックスのこの監禁場面は、最悪の環境描写と、逼迫した心理が読むのをためらうほどおぞましい。
しかし警察の捜査は進み、アレックスの足跡を辿って物語りは進んでいく。
ここからはもう読んでいただくしかない。
アレックスと言う一人の美しい女が、転々と異動して、一つところにとどまってはいない。
主だった四人の警官の捜査がどこまで足跡を辿れるか。アレックスが巧妙に逃げながらどういう生活をしているのか。
交互に進んでいく物語は読み出すと止まらない。
4人の警官も特徴が際立っている、145センチで背の低いカミーユ警部、富豪で知的礼儀正しいルイ、けちに見える倹約家アルマン、縦横ともに大きすぎる上司ル・グエン。
第二章でアレックスの逃走劇が悲劇的におわる。
第三章は、彼女の背景がやっと明らかになる。ここが、裏表紙にある梗概「孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、物語は大逆転を繰り返し、最後に待ち受ける慟哭へと突進するのだ」という結末になる。
結びに立ち会う4人の警官、妊娠中の妻が誘拐殺害されたカミーユの再生話にもなっている。
6冠が並でないところを探すとすれば、ストーリーが二転三転して見事な構成になっていること。文章がたくみで描写に優れ、情感もある。ときには箴言を思わせる記述に味がある。ミステリと言う枠をはずしても深い部分に余韻が残る。
ただここではネタバレになるので書けないが、ささやかな疑問が残ったが、ごくささやかなことで(笑)
しっかりφ(..)メモメモしました。
年末年始は忙しかったですが、そろそろ時間も見つけられるかな・・・
御節もあるしのんびりできると思ったのですが。
今年もよろしくお願いします。
一眼は重いので写真はコンデジです。新しくしたのでいま設定を勉強中です。
でも一番は本ですね。これおもしろかったです。また私も訪問させて頂きます。
遅くなりましたU+1F64F