「リヴィエラを撃て 上下巻」
上巻を途中まで読んで、これは読むのを休むと混乱すると思った、(すでにほどほどに混乱してきたので)相関図とそこまでの出来事をメモした。
アメリカ、イギリス、中国、日本、各国の情報部とそれに属するスパイ組織、テロリスト、CIA、英情報局保安部(MI5,MI6 チラと名前だけJ・ボンドが^^)、IRAの革命家、スコットランドヤードの情報部。それに協力する人間、巻き込まれる人間、「リヴィエラ」というコードネームを持つ日本人を追う人間。核になる「リヴィエラ文書」はどこにあって何が書かれているのか。様々な要素がサスペンス風に展開し ハードボイルドあり「リヴィエラ」絡みのミステリありと飽きることがなかった。
息もつかせない面白さというが、高村さんの実際に歩いたという海外の街(イギリスの風景)が実に鮮明に描写され、雰囲気を盛り上げている。
アイルランドの小さな村から始まるIRA戦士による殺人。その息子である、主人公の青年ジャック・モーガンと恋人のリーアン。
彼は上巻の最初の部分ですでに千鳥ヶ淵で射殺されている。一緒に日本に来ていた若い女の「ジャック・モーガンが捕まった。リヴィエラに殺される」という通報で、初めて「リヴィエラの名前が出る。検死には公安にいたイギリス人との混血、手島管理官が立ち会った。
香港返還、文化大革命を下敷きに、リベート問題がある。エージェントとしての「リヴィエラ」がどうかかわっているのか、すべての人達の視線の先にある「リヴィエラ」について名前が分かった時点でも正体が最後まで分からない。
ジャック・モーガンが身を寄せた先で知り合った、ノーマン・シンクレアと彼のマネージャーと称するエイドリアン。シンクレアは世界的なピアニストで二人とも翳の多い生き方をしている。貴族の称号を持ち自由な暮らしの中で、ジャックと濃密な関係を持つ。シンクレアは密かにスパイ活動と、「リビィエラ」に日本で一通の文書を受け渡しをしていた。
IRAの活動家だった父親が殺された後、ジャックは銃の腕を見込まれてテロリストになる。彼の夢は、リーアンと穏やかな家庭を築くことだったが、次第に深みにはまり、腕の良さで次々に殺人を成功させ、情報部に目を付けられるようになる。
ジャックをかくまうために預けられるCIA職員のケリー・マッカラム(一名伝書鳩)との暖かい交流がいい。ケリーは同じ組織の恋人サラがいたが彼女は車の事故で悲惨な死に方をする。そして彼はドーヴァーを前にしたウェスタンドッグ駅でジャックをフェリーに乗ると見せかけ電車に乗せる。東京へ。
直後にケリーは駅で死んだ。
読みどころというか、殺伐としたテロ、スパイ合戦にあって、人間関係と事件の裏事情と、人命がかかった情報が錯綜する中で、筋道だった詳細が独特の筆致で深く重く書かれる。その中で登場人物たちのエピソードが情感たっぷりに心を潤す。一人ひとり死んでいく現実の中で読みながらこういった世界では茶飯事でありながら生と死の物語がこころに響く。
お気に入りらしい、ピアニスト、シンクレアの日本公演で初めて「リビィエラ」が現れる。ここで一気に読み手も冷静に戻り、シンクレアの魂を込めた演奏も、彼の最後を飾るのにふさわしい、悲しい未来を予見させる。ジャックとシンクレアの関係もただのスパイ小説でない、人の絡みの妙を感じてホロリとする。
裏で生きる人たちのおびただしい死とそれぞれの生き方が詳しく、はいりこんでしまった。どうしてこの人たちがお互いにかかわることになったのか、と硬派な高村さんの筆は休むことがない。
最後まで読んで、手島に抱かれた無邪気なジャック二世が可愛い。
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HNことなみ
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