Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

そういえば昔―コンビニのレジ前で告白したっけな

2013-05-13 00:15:00 | コラム
恋愛マスターというわけではない自分に、なぜか後輩が恋の相談を持ちかけてきた。

最寄りのコンビニ店員に、惚れちゃったというのである。

「まぁ、そういうこともあるわね」
「どうしたらいいと思います?」
「でもさ、お前の友達ってイケメン多いじゃん? なんで恋の相談を、こんなザーメン小僧に?」
「(笑う)いや、顔関係ないっす。だって、まっき~さん、いろんなシチュエーションで告白してるじゃないですか」
「なにか話したっけ?」
「本屋の店員さんとか、ひとりで映画を観にきた子にも声かけたって」
「(苦笑)よく覚えているよね」
「コンビニの店員って、、、さすがに経験ないですか?」
「・・・あっ」
「あります?」
「あった、あった」

10年以上も前の話―。

まだパソコンを持っていなかった自分は、シナリオを手書きで仕上げていた。

脱稿して、まずやることといえば、師匠や友人たちに読んでもらうため、250枚もの原稿を10部コピーすること。
コンビニのコピー機を占拠するのだが、正味120分くらいを要する。
だから「ほかの利用者」とかぶらないよう、早朝におこなうのが常だった。

スポーツバッグに原稿を入れ、ポケットには沢山の小銭。

2時間もコンビニに居ると、しかも早朝だからノーゲス(=専門用語かな、ノーゲスト、つまり客ゼロの意味)になることも多く、なんとなく店員さんに話しかけてみたりする。

強盗対策などもあり、ふつうのコンビニは深夜だろうが早朝だろうが「ふたり」は居るはずだが、その最寄りのコンビニ『スリーエフ』は、早朝の時間帯だけ女子大生がひとりで働いていた。

顔はちょっとだけELT持田香織に似ていただろうか、
好みではなかったが、色白長身で清潔感漂い、あぁこういう子もいいなぁ、、、なんて。

「おねーさん、紙切れだってさー」
「はいー、ちょっとお待ちください」
「あれだよ、紙さえ渡してくれれば、こっちでやるよ」
「でもマニュアルでは、、、」
「いいじゃん、ばれないでしょ」
「・・・そうですかね」

なんてな具合で会話が始まり、客が入ってくると会話中断・・・みたいなことを繰り返していた。

「しかし、すごい量ですね。卒論かなにかですか」
「俺、大学生に見えて?」
「・・・」
「いいよ、はっきりいって」
「あんまり、見えないかも」
「素直でよろしい」
「あはは!」

「シナリオ」
「シナリオ?」
「映画の、シナリオ」
「わぁすごい!」
「素人だよ、コンクールに出すの」

「でもすごいです、それぜんぶひとりで書かれたんですよね?」
「書くだけなら、好きなヤツは出来るんだけれどね、こっから選ばれないことには」
「頑張ってくださいね」

「映画、好き?」
「たぶん、ヒトナミには」

その日の会話はそこまでだったが、彼女のことがなんとなく気になり始めたので、翌日以降も「早寝早起き」を心がけ、わざわざ同時間帯に買い物をするようになった。

ただ「大量のコピーをする」というイイワケ? がないために、それほど長時間の滞在? は出来ない。
ノーゲスになった瞬間を狙い、弁当を持ってレジ前に。

そこでヒトコトフタコト交わし、最後にジョークを行って店を出る、、、みたいな。

それを毎日、3ヶ月くらい続けていたら、完全に好きになっていた。

で、いてもたってもいられないくらいに恋情が大きくなったころ、告白することにした。

いつものようにノーゲス時間帯を狙って、レジ前に立つ。

「Aさんって、付き合っているひととか、居るの?」
「あたしですか? 居ないです」
「居ないの? そんなに素敵なのに?」
「(笑う)ありがとうございます、女子大ですし、出会いの機会がないっていうか」
「合コンとかは?」
「苦手なんです、よく誘われはするんですけど」
「自分は・・・出会いっていうのに、入らない?」
「え?」
「単なる話好きの客人っていう感じ?」
「・・・」

―と、ここまで持ってきたときに、タイミング悪く客が入ってきた。

「い、いらっしゃいませ~♪」

こうなると、展開を戻すのが難儀で。

「(小声で)答え、あした、聞きにきます」
「えっ」
「もし、イヤな感じがしないのであれば、こんどデートにでも」
「・・・」
「その答えを、あした聞かせてね」
「・・・」

なんか自信満々っぽく感じるかもしれないが、精一杯格好つけてみたというわけである。


「すごいっすねー、で、どうなりました?」
「これがね、信じられないんだけれど、辞めちゃったのよ」
「え!」
「自分の所為かどうかは分からないけれど、でもさ、告白した翌日に居ないっていうのは、あきらかに自分の所為だわね」
「・・・わー」

イヤだったのかなー、やっぱり。

「だからね、自分に適切なアドバイスが出来るとは思わないけれど、とにかく足繁く通ってさ、ちょっとずつ親しくなっていくっていう」
「それがベストですかね」
「でもね、気をつけなくちゃいけないことがある」
「なんすか?」
「バイトってさ、仲間内の恋愛も多いから」
「社内恋愛ってやつですね」
「この前ね、セブン・イレブンで可愛い子が居たから、清算時に馴れ馴れしく話しかけてみたのさ」
「馴れ馴れしく(笑う)」
「そうしたら男性店員ふたりが、ギロッと俺を睨んだ」
「えっ」
「間違いない、あのふたりは確実に彼女に惚れてるね」
「あー」
「そういう関係性のなかに飛び込んでいく自分っていう存在は、紛れもなく異端なんだから」
「はい」
「その覚悟がなくちゃいけない」
「なるほど、いろいろ難しいな~」


で、その後輩はどうなったのかというと、
親しくなる前に彼氏が居ることが判明し、撃沈したらしい。

まぁ、そういうこともあるべさ。

なんの話かっていうと、乙女だけじゃなく、ザーメン小僧だって命短し、どんどん恋せよって話である。


※コンビニを舞台にした映画、、、といえば、これか




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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『初体験 リッジモント・ハイ(41)』

コメント (2)
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