Cape Fear、in JAPAN

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シネマしりとり「薀蓄篇」(41)

2013-05-20 00:15:00 | コラム
よんじゅうはちじ「かん」→「かん」べえ(勘兵衛)

「世界の映画史」という視点から日本映画を捉えると、確実に取り上げられる映画はふたつあって、それは、小津の『東京物語』(53)と黒澤の『七人の侍』(54)。

両方とも、約60年が経過している50年代の作品。
だから50年代は、「日本映画の黄金期」と称されるわけで。


自分の神はスコセッシと黒澤、しかし好みでいえば現代劇を撮る黒澤のほうが好き。
世界的には「時代劇の黒澤」みたいに捉えられているけれどね。

うちの父親にいわせると、「『七人の侍』は、三船がぎゃーぎゃーうるさいだけ。様式美を追究する黒澤のほうが好き」なんだそうだ。
ということは、後期の大作のほうが好みなのだろうか。

市井の民、という視点を忘れた―という理由で後期の黒澤を批判したのは松本清張。

父親のいうことも、清張の主張も分からないでもない。
巨匠はたいへんだ、なにをどう撮っても、誰かがアアダコウダいってくるだろうから。

しかし『七人の侍』を観て、真正面から文句をいえるものがどれだけ居るかっていう話で。
好き嫌いはあっても、とりあえずは凄い―そうとしかいえない映画のダイナミズムが、この作品にはある。

イマサラ、筋をどうこうとは解説する必要はないだろう。
だからキャラクターについてだけ述べる。

菊千代に三船敏郎、
岡本勝四郎に木村功、
片山五郎兵衛に稲葉義男、
七郎次は加東大介、
林田平八は千秋実、
久蔵は宮口精二が、
そして島田勘兵衛を演じるのが、志村喬。

『七人の侍』の7人で、誰かいちばん好きか? と問われれば「朴訥な久蔵」と即答する。
宮口精二が好きだというのもあるけれど、とにかく格好いいから。

映画小僧へのアンケートで見えたのは、菊千代は意外と票を集めない、、、ということ。

1位はリーダーの勘兵衛、
2位に久蔵、
3位が勝四郎で、
菊千代は4位なのである。

映画ファンではなく、ヘソマガリな小僧だからね、なんとなく分かる。
「ぎゃーぎゃーいうだけ」という父親の印象、割と的を得ているのかもしれない。

ともかく勘兵衛の人気は絶大である、
「上司にしたい有名人」なんていうアンケートの結果を見ると、池上彰とかイチロー、天海祐希の名が上位にくるけれど、
「有名人」を「映画のキャラクター」に変えたとしたら、まちがいなく勘兵衛はランクインされるだろう。

慌てない、動じないという精神的な落ち着き。
「この米、おろそかに食わぬぞ」「勝ったのは、百姓たちだ」などの、哲学者のような台詞。

格好いいにもほどがある!
というくらいで、
ここからは「あくまでも推測」なのだが、このキャラクター性を超えることが出来ない―という理由から、正式なリメイク作品『荒野の七人』(60)のリーダーを、スキンヘッドのユル・ブリンナーにしたのだと思う。
とりあえず髪型は一緒だ! みたいな。
ジェームズ・コバーンでも、よかったはずだものね。

ある意味では黒澤が、三船以上に信頼を置いて起用し続けた志村喬という俳優。
このひとが目立っている黒澤映画は、
『酔いどれ天使』(48)、『野良犬』(49)、『醜聞』(50)、『羅生門』(50)、『生きる』(52)、そして『七人の侍』くらいで、意外と少ない。
その代わり、目立つキャラクターの場合は「とことん」格好よく―と思っていたかどうかは分からないが、
三船との初タッグ『酔いどれ天使』も、三船以上に痺れるキャラクターであったし、
『醜聞』を支えたのは二大スターの共演(三船×山口淑子)ではなく、志村喬の力演であり、
さらにいえば『羅生門』が「ある高み」に達したのは、赤ん坊を抱える志村喬の存在があったから、、、と結んでも、映画小僧からブーイングは聞こえてこないと思う。

恐るべし、たらこ唇。





あすのしりとりは・・・
かんべ「え」→「え」れべーたー。

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コメント (2)
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