「ひとんち」や「ひとさま」についてアアダコウダいえるような人生を送っているわけではない。
ないが、
昔、柳美里の『石に泳ぐ魚』問題というのがあったけれど、「書きたがり病」を患うものは、ほんとうに「なんだって書きたがる」傾向にあり。
というわけで、こんなことを書いてみる。
高校1年、夏の出来事である。
シナリオ書きとマスかきに青春を捧げた自分は、その日も自分の部屋にこもり、デヴィッド・リンチをパクッた物語を紡ぎつつ、エロ本を見てシコシコやっていた。
深夜2時ごろ―若い女子ふたりが口論する声が聞こえてきた。
ほとんど悲鳴にちかい怒鳴り声。
物を投げつける音も聞こえる。
そーとー激しい喧嘩だな・・・って、待てよ。○○さんの家から聞こえてくることは確かなのだが、ここの家に若い女子はひとりしか居なかったはず。
いったい、誰と誰が喧嘩しているのだ?
怒鳴り声の内容はきちんと聞き取れなかったが、ときどき「姉さん!」といっているのは分かった。
姉と、妹?
どうなっているのだ、ワケガワカラン。
口論は2時間ちかくに及び、田舎特有の静寂が戻ったのは早朝になってからだった。
そうして。
この日からほぼ毎日、口論が展開されることになる。
夏の暑さにも負けず。
冬の寒さにも耐えて。
台風の夜は、台風に負けぬ音量で。
数ヵ月後―かーちゃんから、信じ難い話を聞いた。
「光永、きのうの晩もひどかった?」
「うん、ひどかった。眠れなかったよ、ぜんぜん」
「注意してもどうにもならないみたいだから・・・耐えられる?」
「どうにもならない?」
「・・・ひとり、らしいのよ、やっぱり」
「ひとり?」
「うん、○○さんちの●●さん、ひとりで喧嘩しているみたいなの」
「・・・!?」
いわゆる、多重人格。
精神をやられた彼女は「ある部屋」に閉じ込められ、そこから出されることはなかった。
深夜になるときまって「ある人格」つまり「自分のなかで創りあげた姉」が顔を出し、妹である自分と喧嘩をする。
自分で物を投げつけ、自分で「姉さん!」といっている。
映画の世界の出来事が、ほんの数メートル先で実際に起こっている。
最初は興味津々だったが、毎日こうだと、こっちの精神もやられちまう。
しかし彼女の症状はやむことがなく、ほぼ毎日、自分が上京するまで続いたのだった。
なぜ入院させない?
誰もが思うことだろうが、世間体というもの? を気にして、○○さんちは閉じ込めることに決めたようなのである。
上京した自分は年1度のペースで帰省している。
19歳の夏も20歳の秋も、21歳の正月も22歳の春も、「彼女と彼女」の口論を聞いた。
さらにいえば。
症状はやむどころか悪化し、深夜だけだったはずの「そのアクション」が、日中にも展開されるようになっていたのだった。
もっといえば。
人間の恐ろしいところというか、まぁ自分だけかもしれないが、所詮はタニンゴト、
毎日の「騒音」と捉えれば迷惑な話でも、年に1度の帰省となると、なんとなく「楽しみのひとつ」になってしまった―じつはこのことこそ、本コラムのメインテーマである。
あぁサイテーだよ。
否定なんかしないし、出来ない。
カエルの合唱とともに聞こえてくる、「彼女と彼女」の口論。
あぁやってるやってる、そうか自分、帰省しているんだな、、、と実感する。
ちょっと意味はちがうが、風物詩、的な。
今年もそんな感じで帰省した―しかし、「彼女と彼女」の口論が聞こえてこない。
死んでしまった、とか?
聞くと、やっとのことで精神科に入院したらしい。
ある日の「彼女と彼女」の口論がひど過ぎて、警察に通報されたのだそうだ。
そして入院した途端、その環境に順応し、体調も精神も回復したというのである。
自分が高校生のころ、彼女はたしか20代後半か30代前半だったはず。
いちばん「はっちゃける」ことの出来る年齢。
繰り返すが「ひとんち」のことについてアアダコウダいえるものではないけれど、それはつまり「失われた時間」なのではないか。
そういう意味できょうのトップ画像をマクマーフィー(=『カッコーの巣の上で』)にしてみたが、
ジョン「エレファントマン」メリックにしても、よかったのかもしれない。
なにがいいたいかっていうと、自分にとって彼女とは、ある意味でミセモノであったと。
怖いけど、見たい。
怖いけど、知りたい。
そんな感じ。
血のつながるものであればミセモノ化を避けるために「あらゆる手段」を取るだろうが、つくづく人間って残酷だなぁと。
「ひとさま」から、自分の本性が見えてくる。
ただ最後になって自己弁護するわけではないが、彼女が回復傾向にあることを聞いて、ちょっとホッとしたところがある。
「失われた時間」を取り戻すために、思いっきり「はっちゃけて」ほしい。
…………………………………………
本館『「はったり」で、いこうぜ!!』
前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』
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明日のコラムは・・・
『箱の中身』
ないが、
昔、柳美里の『石に泳ぐ魚』問題というのがあったけれど、「書きたがり病」を患うものは、ほんとうに「なんだって書きたがる」傾向にあり。
というわけで、こんなことを書いてみる。
高校1年、夏の出来事である。
シナリオ書きとマスかきに青春を捧げた自分は、その日も自分の部屋にこもり、デヴィッド・リンチをパクッた物語を紡ぎつつ、エロ本を見てシコシコやっていた。
深夜2時ごろ―若い女子ふたりが口論する声が聞こえてきた。
ほとんど悲鳴にちかい怒鳴り声。
物を投げつける音も聞こえる。
そーとー激しい喧嘩だな・・・って、待てよ。○○さんの家から聞こえてくることは確かなのだが、ここの家に若い女子はひとりしか居なかったはず。
いったい、誰と誰が喧嘩しているのだ?
怒鳴り声の内容はきちんと聞き取れなかったが、ときどき「姉さん!」といっているのは分かった。
姉と、妹?
どうなっているのだ、ワケガワカラン。
口論は2時間ちかくに及び、田舎特有の静寂が戻ったのは早朝になってからだった。
そうして。
この日からほぼ毎日、口論が展開されることになる。
夏の暑さにも負けず。
冬の寒さにも耐えて。
台風の夜は、台風に負けぬ音量で。
数ヵ月後―かーちゃんから、信じ難い話を聞いた。
「光永、きのうの晩もひどかった?」
「うん、ひどかった。眠れなかったよ、ぜんぜん」
「注意してもどうにもならないみたいだから・・・耐えられる?」
「どうにもならない?」
「・・・ひとり、らしいのよ、やっぱり」
「ひとり?」
「うん、○○さんちの●●さん、ひとりで喧嘩しているみたいなの」
「・・・!?」
いわゆる、多重人格。
精神をやられた彼女は「ある部屋」に閉じ込められ、そこから出されることはなかった。
深夜になるときまって「ある人格」つまり「自分のなかで創りあげた姉」が顔を出し、妹である自分と喧嘩をする。
自分で物を投げつけ、自分で「姉さん!」といっている。
映画の世界の出来事が、ほんの数メートル先で実際に起こっている。
最初は興味津々だったが、毎日こうだと、こっちの精神もやられちまう。
しかし彼女の症状はやむことがなく、ほぼ毎日、自分が上京するまで続いたのだった。
なぜ入院させない?
誰もが思うことだろうが、世間体というもの? を気にして、○○さんちは閉じ込めることに決めたようなのである。
上京した自分は年1度のペースで帰省している。
19歳の夏も20歳の秋も、21歳の正月も22歳の春も、「彼女と彼女」の口論を聞いた。
さらにいえば。
症状はやむどころか悪化し、深夜だけだったはずの「そのアクション」が、日中にも展開されるようになっていたのだった。
もっといえば。
人間の恐ろしいところというか、まぁ自分だけかもしれないが、所詮はタニンゴト、
毎日の「騒音」と捉えれば迷惑な話でも、年に1度の帰省となると、なんとなく「楽しみのひとつ」になってしまった―じつはこのことこそ、本コラムのメインテーマである。
あぁサイテーだよ。
否定なんかしないし、出来ない。
カエルの合唱とともに聞こえてくる、「彼女と彼女」の口論。
あぁやってるやってる、そうか自分、帰省しているんだな、、、と実感する。
ちょっと意味はちがうが、風物詩、的な。
今年もそんな感じで帰省した―しかし、「彼女と彼女」の口論が聞こえてこない。
死んでしまった、とか?
聞くと、やっとのことで精神科に入院したらしい。
ある日の「彼女と彼女」の口論がひど過ぎて、警察に通報されたのだそうだ。
そして入院した途端、その環境に順応し、体調も精神も回復したというのである。
自分が高校生のころ、彼女はたしか20代後半か30代前半だったはず。
いちばん「はっちゃける」ことの出来る年齢。
繰り返すが「ひとんち」のことについてアアダコウダいえるものではないけれど、それはつまり「失われた時間」なのではないか。
そういう意味できょうのトップ画像をマクマーフィー(=『カッコーの巣の上で』)にしてみたが、
ジョン「エレファントマン」メリックにしても、よかったのかもしれない。
なにがいいたいかっていうと、自分にとって彼女とは、ある意味でミセモノであったと。
怖いけど、見たい。
怖いけど、知りたい。
そんな感じ。
血のつながるものであればミセモノ化を避けるために「あらゆる手段」を取るだろうが、つくづく人間って残酷だなぁと。
「ひとさま」から、自分の本性が見えてくる。
ただ最後になって自己弁護するわけではないが、彼女が回復傾向にあることを聞いて、ちょっとホッとしたところがある。
「失われた時間」を取り戻すために、思いっきり「はっちゃけて」ほしい。
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明日のコラムは・・・
『箱の中身』