NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#21 グレイプバイン「LIFETIME」(ポニーキャニオン)

2021-12-02 05:00:00 | Weblog

2001年3月4日(日)



グレイプバイン「LIFETIME」(ポニーキャニオン)

1999年5月発表の、彼らのセカンド・アルバム。

ここ数年着実にシングル・ヒットをとばして、いまやトライセラトップスと並んで20代ロックバンドの代表的存在となった彼らの、いわば出世作だ。

最初のスマッシュ・ヒット「スロウ」とそれに続く「光について」、先行のシングル曲「白日」、コンサートで人気の「いけすかない」など、全13曲。

非常にメロウでメロディアスな「バイン・サウンド」が、二枚目にして早くも確立されているのがよくわかる。

バインには、他の多くの若手バンドにはほとんどない、はっきりした特徴がひとつある。

それは「ブルースの匂い」だ。

いわゆるブルースの3コード進行の曲などひとつもないが、リードボーカル・田中和将のフレージング、ギターやベース、ドラムスのやや「重たい」ノリにそれを感じる。

聞けば、フロントマンである田中の愛聴するのは、他のメンバーがどちらかといえば80年代以降のロックであるのに対して、ストーンズやR&Bなど60~70年代の「黒い」音が中心だそうだ。

明らかに彼の年齢にしては、「古め」のサウンドがお好きのようである。

当然ながら、グループ名もマーヴィン・ゲイのあの名曲からとったもの。

ファンキーなインスト・ナンバー「ラバーガール」「ラガーガールNo.8」などに、「その手」の音への偏愛が強く感じられる。

もちろん、ただのオールドスクール・ロックやR&Bの再現ではなく、より高度の演奏力と、彼ら独自の深みのあるグルーヴを加味したところが、またすごい。

これには、プロデュースをしたDr.Strageloveの根岸孝旨に負うところも大であろう。

一方、サウンドのみならず、坂口安吾の「堕落論」に大きな影響を受けたという、田中の特異なる歌詞世界もまた聴きどころ。死滅したといわれる「文学」が、そこにまだ生き続けている。

いまどき、「一発録り」が基本というのもうれしいじゃないか。

「ライブの音こそが自分たちの音だ」というグレイプバイン、これぞロック・バンドのあるべき姿勢だと思う。

このアルバム発表後の活躍は、皆さんご存知であろうが、99年のベスト・ジャパニーズ・ロックアルバムといって間違いない本作、今からでも聴いて絶対損はない。