2001年3月18日(日)
エリック・クラプトン「BLUES」(Polygram)
「師匠」の次は「弟子」というつながりである(笑)。
クラプトンはフレディ・キングのデビュー・インスト曲「ハイダウェイ」を、ブルースブレイカーズ時代にカバーしていることからわかるように、フレディのプレイをお手本にして、自らのギター・プレイを磨いてきた。
フレディだけではない。BBはいうに及ばず、アルバート・キング、バディ・ガイ、オーティス・ラッシュ、ヒューバート・サムリンなど、代表的な黒人ブルース・ギタリストのレコードを手当たり次第に聴きあさり、コピーしまくったという。
いってみれば、クラプトンは究極の「パクリスト」。
彼ら先達がいなかったら、いかな天才クラプトンといえども、我々を魅了してきたあのプレイは存在しなかったはずだ。
そういう恩恵を、クラプトンは十二分に感じているから、彼らに対するリスペクトを惜しみなく表明する。
「ライディング・ウィズ・ザ・キング」の制作は、その端的な例のひとつといえるだろう。
さて、このアルバムはそのタイトル通り、クラプトンのルーツ・ミュージックであるブルースの、主に既録音のナンバーを2枚のCDに収めた編集もの。
1970年発表の名盤「いとしのレイラ」に収録された「愛の経験」にはじまり、99年の新録「ビフォア・ユー・アキューズ・ミー」(ボ・ディドリーの曲)にいたるまでの全25曲。
CD1枚目はスタジオ録音、2枚目はライブ録音という色分けだ。
中には「ワンダフル・トゥナイト」のような非ブルースも入っているが、セールス上の対策なんだろうな。
基本的には、スタンダードなブルース、そして一部に自作のブルース・テイストな曲という構成。
皆さんおなじみの曲としては、レッドベリーの「アルバータ」、マディの「ブロウ・ウィンド・ブロウ」、T・ボーンの「ストーミー・マンデイ」、ビッグ・メイシオの「ウォリード・ライフ・ブルース」、ロバート・ジョンスンの「カインド・ハーテッド・ウーマン」、オーティス・ラッシュの「ダブル・トラブル」、チャールズ・ブラウンの「ドリフティン・ブルース」などなど。
さて、出来のほうはといえば、1曲1曲はそこそこなのだが、通しで聴くと、ちょっとゲップが出そうというかんじではある。正直言うと。
やはりクラプトンの歌は、基本的に「へたウマ」なので、あまり連続して聴きたくなるようなものではない。
とくに胃にもたれそうなのが、「ストーミー・マンデイ」。
ライブとはいえ、超スローテンポで、12分以上も延々と演奏されると、いいかげんゲンナリしてしまう。
この曲に関しては、迷うことなく、BBやアルバート・キングらのバージョンに軍配を上げたい。
クラプトン氏の、ブルースが好きでたまらないというお気持ちはよくわかるのだが、趣味の押し付けはいかんよな。
自己陶酔する前に、まず観客を楽しませないと。
ちょっと辛口な言い方のようだが、クラプトンの「驕り」のようなものをその1曲に感じたので、あえて書いておく。
やはり、彼の真の面目は、もっと気合いの入った、アップ・テンポのナンバーにこそあるだろう。
たとえば、亡くなる直前のフレディ・キングと共演した、ライブ・バージョンの「ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード」(1976)。
「E.C. WAS HERE」に収められたバージョンも名演だが、こちらも負けじと素晴らしい。
「師弟」の、まさに火花を散らすような、熱気にみちた競演が聴けるのだ。
死の間際のフレディの、渾身の名プレイ。
クラプトンを聴くつもりで、結局、本物のブルースをそこにこそ感じてしまった。ちょっと皮肉ではある。
でも、クラプトン自身のプレイももちろん、悪くはない。
ブルースのアルバムとして聴くよりは、やはりクラプトンのアルバムとして聴くべし。
コアなブルース・ファンより、ブルース・ビギナーのかたに聴いていただきたい一枚である。