2001年4月15日(日)
マウンテン「SUPER HITS」(COLUMBIA/LEGACY)
マウンテン、といっても、若いリスナーにはとんとなじみのないグループ名だろうな。
なにせ、30年前に活躍していたロック・バンドなのだから。
レスリー・ウェストのソロ・プロジェクトとしてスタートしたのが、1969年。同年ウッドストック・フェスティバルでのパフォーマンスで一躍注目され、何枚かのヒット・アルバムを出すも、72年に解散。その後、ウェスト・ブルース&レイングとしての活動を経て、74年に再結成。
しかし、長続きせず、再び解散。グループの音楽的中心であったフェリックス・パッパラルディは、もはやこの世にはいない。
実にその活動期間は短い。
しかし、「太く短く」というか、短期間に非常に内容の濃い作品を残したのも事実である。
かつて、ヤングブラッズやクリーム等のプロデューサーとして高い評価を受けていたパッパラルディ。
その彼が自らバンドを結成、ハード・ロックの向かうべきひとつのベクトルを明示したのである。
一言でいうならば、ハードながらもメロディを重視し、楽器での高度なハーモニーを導入したロック。
ボストン、カンサス、スティクス、フォーリナーら、後続の多くのバンドに、マウンテンのこの方法論が引き継がれることになる。
日本でも、SHOGUNやクリエイションあたりにかなりその影響が感じられると思うのだが、いかがであろう。
このアルバムは、そんなマウンテンのヒット曲を中心に10曲を収録(再結成後の曲は1曲)。
「ミシシッピー・クイーン」「想像されたウェスタンのテーマ」をはじめとして、いずれもタイトで歯切れのいいサウンド、哀感のあるキャッチーなメロディが光っている。
「暗黒への旅路」の、あのおなじみのフレーズは、今聴いてもゾクゾクする。
ウッドストックがらみの「フォー・ヤスガーズ・ファーム」のようなバラードも、味わい深い。
ベースにあるものはブルースながら、クラシック、トラッド・フォークなど、さまざまな他のジャンルの音楽をブレンドし、音楽的にきわめて奥行きのある作りだ。
彼らのキャッチ・フレーズ「バッハが作ったブルース」は、まさに言いえて妙である。
そして、曲作り、アレンジのうまさもさることながら、巨漢レスリー・ウェストのパワフルなギター・プレイも聴きもの。
ツヤと伸びのある音色、絶妙な泣きとタメ。とにかく、今でも十分「使える」おいしいフレーズ、リフがテンコ盛りなのである。
ギタリストなら、ぜひチェックすべし。
きょうびのただ速いだけの超絶テク・ギタリストたちのプレイより、よっぽどパクり甲斐があると思う。
個人的な意見でいえば、あと「アニマル・トレーナー」と「ロール・オーバー・ベートーベン」も入ってれば100点満点だったが。
したがって90点。
はじめてマウンテンを聴かれるひとにもお薦め。
もし気に入ったら、「ナンタケット・スレイライド」「悪の華」等のオリジナル・アルバムも、ぜひどうぞ。