NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#34 スモール・フェイセズ「OGDEN'S NUT GONE FLAKE」(CASTLE COMMUNICATIONS)

2021-12-15 04:13:00 | Weblog

2001年4月21日(土)


スモール・フェイセズ「OGDEN'S NUT GONE FLAKE」(CASTLE COMMUNICATIONS)

「スモール・フェイセズ」、ご存知のかたはどのくらいおられるだろうか。

1965年にスティーブ・マリオット(vo,g)、ロニー・レイン(b)を中心に結成され、8月にシングル「ホワッチャ・ゴナ・ドゥ・アバウト・イット」でデビューしたイギリスの4人組。

デッカ、イミディエイト、ふたつのレーベルに数多くのレコーディングが残されている。

代表的ヒットは「シャ・ラ・ラ・ラ・リー」「イチクー・パーク」「レイジー・サンデイ」など。

「イチクー・パーク」は本国のみならず、アメリカでもチャート・インしている。

だが、グループ結成4年目の69年3月、スティーブがハンブル・パイ結成のため脱退し、かわりに元ジェフ・べック・グループ(第一期)のロッド・スチュアート(vo)、ロン・ウッド(g,JBGではb)のふたりが加入、新生スモール・フェイセズが出発。

ほどなくグループ名もフェイセズに変えて、ワーナーから再デビューすることになる。

と、ここまで書けば、おおかたの皆さんはピンとこられたハズ。

「スモール・フェイセズ」は、ロッド・スチュアートをスターダムにのし上げた「フェイセズ」の前身なのである。

さて、本題。

この「OGDEN'S NUT GONE FLAKE」という奇妙なタイトルとジャケット(オリジナルのお皿では、円形のジャケットだった!)を持つアルバムは、日本ではほとんど騒がれなかったものの、本国イギリスでは大ベストセラーとなったレコードなんである。

68年6月にリリース、全英アルバム・チャート6週連続ナンバーワン獲得という輝かしい記録を残している。

なにせ当時はビートルズの全盛期。チャートの最上位は常に彼らが独占していた時代だっただけに、この記録がいかにスゴいものかおわかりいただけるだろう。

そんなモンスター・アルバムならさぞや、大ヒット曲が満載されているんだろうと期待するのだが、あにはからんや。

たしかに「レイジー・サンデイ」という、全英第2位のスーパー・ヒットを擁してはいる。これはR&B色の濃いスモール・フェイセズとしては異色のポップな曲である。

「レイジー~」以外の目玉曲としては、前年の11月にヒットした「涙の少年兵」(全英第9位)もラストに収録。これはライブ・バージョンである。

しかし、それらヒット曲以外はかなりシブめのナンバーが中心だ。

「レイジー・サンデイ」とカップリングの「ローリン・オーヴァー」なぞは、スティーブの多重録音ボーカルがまことにソウルフルな、のちのハンブル・パイを思わせるハード・ロック・サウンド。

「アフターグロウ」も、「レイジー~」とは対極の、うねるように熱~いR&Bサウンド。イアン・マクラガンのハモンド・オルガン・プレイが実にイカしている。

翌年の3月にシングル・カットされたものの、シブすぎたのか全英チャートでも第36位どまりであった。

R&Bやハード・ロック系以外には、実験音楽風インストゥルメンタルあり、環境音楽風あり、ブラスバンド風あり、フォーキーなものありと、きわめてバラエティに富んでいる。

アルバム全体の作りとしては、ナレーションを加えて物語風にしたコンセプト・アルバム。

当然これは、前年リリースされたビートルズの「サージェント~」やストーンズの「サタニック~」あたりを意識したものと思われる。

全編に「ヒット・シングルの寄せ集め」としてのアルバム作りを脱し、さまざまな音楽実験を試みようという意欲が強く感じられ、今聴いてみてもまるで古臭さを感じさせない。

近年、ポール・ウェラー(元スタイル・カウンシル)を中心にスモール・フェイセズ再評価の動きが活発化している。

96年には彼やミック・タルボット(同上)、オーシャン・カラー・シーンらにより、「A Tribute To The Small Faces」なるトリビュート・アルバムが制作されている。

時代を超えて多くのアーティストたちに直接・間接に影響を与え続けていることがよくわかる。

ブリティッシュ・ロック・シーンにおける、最重要バンドのひとつといえるスモール・フェイセズ。

そんな彼らのシャレっ気にあふれた最高傑作、ぜひ一度チェックしてみてほしい。


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