2001年4月21日(土)
スモール・フェイセズ「OGDEN'S NUT GONE FLAKE」(CASTLE COMMUNICATIONS)
「スモール・フェイセズ」、ご存知のかたはどのくらいおられるだろうか。
1965年にスティーブ・マリオット(vo,g)、ロニー・レイン(b)を中心に結成され、8月にシングル「ホワッチャ・ゴナ・ドゥ・アバウト・イット」でデビューしたイギリスの4人組。
デッカ、イミディエイト、ふたつのレーベルに数多くのレコーディングが残されている。
代表的ヒットは「シャ・ラ・ラ・ラ・リー」「イチクー・パーク」「レイジー・サンデイ」など。
「イチクー・パーク」は本国のみならず、アメリカでもチャート・インしている。
だが、グループ結成4年目の69年3月、スティーブがハンブル・パイ結成のため脱退し、かわりに元ジェフ・べック・グループ(第一期)のロッド・スチュアート(vo)、ロン・ウッド(g,JBGではb)のふたりが加入、新生スモール・フェイセズが出発。
ほどなくグループ名もフェイセズに変えて、ワーナーから再デビューすることになる。
と、ここまで書けば、おおかたの皆さんはピンとこられたハズ。
「スモール・フェイセズ」は、ロッド・スチュアートをスターダムにのし上げた「フェイセズ」の前身なのである。
さて、本題。
この「OGDEN'S NUT GONE FLAKE」という奇妙なタイトルとジャケット(オリジナルのお皿では、円形のジャケットだった!)を持つアルバムは、日本ではほとんど騒がれなかったものの、本国イギリスでは大ベストセラーとなったレコードなんである。
68年6月にリリース、全英アルバム・チャート6週連続ナンバーワン獲得という輝かしい記録を残している。
なにせ当時はビートルズの全盛期。チャートの最上位は常に彼らが独占していた時代だっただけに、この記録がいかにスゴいものかおわかりいただけるだろう。
そんなモンスター・アルバムならさぞや、大ヒット曲が満載されているんだろうと期待するのだが、あにはからんや。
たしかに「レイジー・サンデイ」という、全英第2位のスーパー・ヒットを擁してはいる。これはR&B色の濃いスモール・フェイセズとしては異色のポップな曲である。
「レイジー~」以外の目玉曲としては、前年の11月にヒットした「涙の少年兵」(全英第9位)もラストに収録。これはライブ・バージョンである。
しかし、それらヒット曲以外はかなりシブめのナンバーが中心だ。
「レイジー・サンデイ」とカップリングの「ローリン・オーヴァー」なぞは、スティーブの多重録音ボーカルがまことにソウルフルな、のちのハンブル・パイを思わせるハード・ロック・サウンド。
「アフターグロウ」も、「レイジー~」とは対極の、うねるように熱~いR&Bサウンド。イアン・マクラガンのハモンド・オルガン・プレイが実にイカしている。
翌年の3月にシングル・カットされたものの、シブすぎたのか全英チャートでも第36位どまりであった。
R&Bやハード・ロック系以外には、実験音楽風インストゥルメンタルあり、環境音楽風あり、ブラスバンド風あり、フォーキーなものありと、きわめてバラエティに富んでいる。
アルバム全体の作りとしては、ナレーションを加えて物語風にしたコンセプト・アルバム。
当然これは、前年リリースされたビートルズの「サージェント~」やストーンズの「サタニック~」あたりを意識したものと思われる。
全編に「ヒット・シングルの寄せ集め」としてのアルバム作りを脱し、さまざまな音楽実験を試みようという意欲が強く感じられ、今聴いてみてもまるで古臭さを感じさせない。
近年、ポール・ウェラー(元スタイル・カウンシル)を中心にスモール・フェイセズ再評価の動きが活発化している。
96年には彼やミック・タルボット(同上)、オーシャン・カラー・シーンらにより、「A Tribute To The Small Faces」なるトリビュート・アルバムが制作されている。
時代を超えて多くのアーティストたちに直接・間接に影響を与え続けていることがよくわかる。
ブリティッシュ・ロック・シーンにおける、最重要バンドのひとつといえるスモール・フェイセズ。
そんな彼らのシャレっ気にあふれた最高傑作、ぜひ一度チェックしてみてほしい。