NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#45 ジェフ・ベック・グループ「ベック・オラ」(東芝EMI)

2021-12-26 05:53:00 | Weblog

2001年5月27日(日)



ジェフ・ベック・グループ「ベック・オラ」(東芝EMI)

「毒食らわば皿まで」という感じもしますが(笑)、またまたジェフ・ベックであります。

つまりですね~、塩と胡椒、ヤン坊とマー坊みたいなもんで、片方を出したらもう一方も出さざるをえなくなるって関係なんすよ、「トゥルース」と「ベック・オラ」の二枚は。

実際、現在のCDでは2イン1という形で、同居しとりますし。

ジェフ・ベックというお方、どうもバンドを長期にわたって維持することが苦手なひとのよーで(ペイジと好対照)、アルバムをせいぜい二枚出したら脱退、ないしは解散なんてパターンを繰り返していましたな、60~70年代は。

ヤードバーズしかり、この第一期JBGしかり、第二期JBGしかり、BB&Aしかり…。

あまりに長続きしないんで、遂にはグループというかたちをとるのをやめちゃいましたが(笑)。

そうしたら、ソロなら解散せずにすむということで、ようやく落ち着きました。

とにかく彼は「二の線」で売ってるんで、「三枚目」を出すわけにいかないって寸法で……って、下手なシャレいってる場合じゃないすね、反省。

話を元に戻しますと、この「ベック・オラ」、デビュー・アルバム「トゥルース」を出した翌69年、メンバーも一部入れ替えて、レコーディングされてます。

ベック、ロッド・スチュアート、ロン・ウッドはそのままですが、ドラムスはミック・ウォーラーからトニー・ニューマンに交代。前作ゲスト参加の扱いだったニッキー・”エドワード”・ホプキンスは正式メンバーになっております。

また、ロン・ウッドは今回ベース以外に、一部ギターも弾いてますな。

オープニングは「オール・シュック・アップ」。つまり、プレスリーの「恋にしびれて」のカバー。

でも、その音はオリジナルとはまるきり別物。ウルトラ・ヘビー級のハード・ロックで、エルヴィスのほのぼの、甘ったるいイメージは木っ端微塵です。ベックのギターも暴れまくってますが、ホプキンスのパーカッシヴでスピード感溢れるピアノも実にカッコいい。

そしてもちろん、ド迫力で吼えまくるロッドのボーカル、絶品です。ロック・シンガー多しといえど、まちがいなく五指に入る、そういう素晴らしい歌いっぷり。

続いてのオリジナル曲「スパニッシュ・ブーツ」、これも「オール~」同様、ひたすらハードでヘビーなチューン。ウッドのブブリブリ・ベースソロがナイスです(フェイド・アウトしちゃうけど)。

このまま行くと血圧上がりっぱなしですが、一転、三曲目のインスト、「ガール・フロム・ミル・ヴァレー」ではホプキンスが奏でる美しいメロディーに、ほっとひと息。

アナログLPではA面最後にあたるのが、「ジェイルハウス・ロック(監獄ロック)」。ロッドの趣味なんでしょうな、これもエルヴィスのカバー。

またも血圧大いにUPの、ロックン・ロール大会(言い回しが古いか)で締めくくります。とにかくベックのギターがワイルド。縦横無尽に走りまくってます。

B面はすべてオリジナル。BB&Aライヴでも演奏していたのでご存知の方も多い「プリンス」が一曲目。アップ・テンポの16ビートで快調に飛ばす、そんなナンバー。70年代のクロスオーバー~フュージョン・ブームを先取りしたようなサウンドです。

それに対して「ハングマンズ・ニー」は、オーソドックスなミディアム・テンポの8ビート。これぞハード・ロックの基本ともういうべき、ヘビーなリズムを聴かせてくれます。

ラストは「ライス・プディング」。7分半近いインスト・ナンバーですが、最後までダレることなく緩急自在、緊張感に満ちた構成で一気に聴かせます。ベックのスライド・ギターとホプキンスのピアノのインタープレイが絶妙。ロック・インストの最高峰にある一作といえそう。

ただただ、思いつきのアドリブで時間をうずめるのでなく、序破急のツボを押さえた展開は、何度聴いても脱帽モノです。

本アルバム、今回もプロデュースはミッキー・モストなんですが、わりとグループのやりたいようにやらせた、という感じで、余りあれこれ干渉しなかったようです(というより、実のところは他のアーティストの仕事にかかりきりで、口を出す余裕がなかったとか)。

そのせいか、曲もポップ路線のシングル(「恋は水色」なんてのもありましたっけ)とは対照的に、オリジナル中心。

それがプラスの方向に働いてこの「ベック・オラ」、前作以上にハードでタイト、聴きごたえのある音作りになってます。

前作はよくいえばバラエティに富んだ、悪くいえばポップ路線とハード路線が相乗りの、まとまりを欠いたサウンドだったんですが、今作ではだいぶん音が練り込まれて、ハードロック・バンドとしての狙いどころが明確になってきた、そんな感じです。

それには、けっこうホプキンスの貢献度が大、とみましたが、いかがでしょう?

ギター・バンドだったころには、派手なプレイでとにかく聴衆を驚かせる、こういう傾向があったのですが、ホプキンスの加入により、サウンドに厚みが加わり音楽的にもしっかりした作りになった、これはいえそうです。

音的には申し分なく、順風満帆かに見えたJBGですが、しかし、その後の活動はうまく行きませんでした。

そうです、リスナー(とくにアメリカでの)の関心は、JBGより後発のZEPの方へすっかり吸い寄せられてしまったためです。

この2グループが69年、とあるジャズ&ロックのフェスティバルに出演したとき、ベックはZEPの物凄い人気に、すっかり意気をそがれてしまったといいます。

「だめだこりゃ」そう言ったとか、言わないとか…。

しかも、ロッドとロンの二人は、スティーヴ・マリオットが脱退したばかりのスモール・フェイシズから参加を求められており、すっかり乗り気状態。

そのため、当初8月のウッドストックへの出演も決まっていたのに、それを待たずしてあっさり解散。

なんとも惜しい結末でしたが、でも、われわれの手元には「トゥルース」と「ベック・オラ」、二枚の名盤があります。

この二枚、ロック・アルバムのスタンダードとして、今後もずっと聴かれていくに違いありません。

「パワー」「スピード」「スリル」、すべてにおいて頂点を極めたロックが、この2枚にはあります!