ヴァリアス「天国への階段」(イーストウェスト・ジャパン)
トリビュートつながりで、もう一枚。
タイトルでお察しいただけるように、レッド・ツェッペリンへのトリビュート盤である。1997年作品。
ZEPが解散して、優に20年以上の歳月が過ぎ去ったが、いまだに彼らのCDがきちんと売れており、その後の彼ら(というかプラントとペイジ)の活動もつねに注目の対象になってきたことを見れば、やはりZEPはスゴいグループだったのだなと思わざるをえない。
後続のグループに直接・間接に与えた影響は、はかり知れない。
とくにアメリカのハードロック/ヘビーメタル系のミュージシャンたちにおいては、それは絶大なものがある。もともとZEPがメジャーになれたのも、アメリカ人にウケたから、という事情があるわけだし。
ただし、ZEPを好んでコピーしてきた後続の彼らが、ZEPがやろうと考えていたことを、どのくらい正しく理解していたかというと、かなり懐疑的にならざるをえない。
たとえばボン・ジョヴィとZEPは、ちょっと見には似ているかもしれないが、その音楽はまるきり別のテイストのものである。 ボン・ジョヴィに限らず、どのフォロワーもZEPにはなりえなかった。
やはり、ZEPは空前絶後の存在であり、今後も彼らのサウンドは、どんなバンドだって再現できないだろうと思う。
マクラが長くなった。本題に移ろう。
このCDは、フリートウッド・マック、ホワイトスネイク等との仕事で有名なエンジニア/プロデューサー、キース・オルセンのもと、ルー・グラム(フォーリナー)、ザック・ワイルド、リタ・フォード、セバスチャン・バック(スキッド・ロウ)、ジェフ・ビルスン(ドッケン)、ジェイムズ・コタック(スコーピオンズ)といった、おもに80年代活躍したハードロッカーたちを集めてレコーディングされたものである。
収録曲は、タイトル・チューンのほか「ブラック・ドッグ」「コミュニケーション・ブレイクダウン」「ハートブレイカー」「移民の歌」「胸いっぱいの愛を」など、代表曲ばかりだ。いかにも売れセンの作り。
基本的には、ZEPの原曲のイメージを崩さず、アレンジもできるだけ似せてカバーしている。
トリビュート盤には、大別すれば、原曲を出来るだけ忠実に再現するようなものと、新しい解釈を加えるようなものの二通りがあると思うが、この盤は明らかに前者である。
というよりもむしろ、「ZEP大好きだから、オレらも歌っちゃうもんね~」みたいな、ミーハー的な姿勢といったほうが近いかも知れない。「夜もヒッパレ」みたいなものか。まあ、トリビュート盤なんて、所詮それでいいのだが。
とはいえ、80~90%くらい元のアレンジを再現していても、残りでどうしてもZEPにはなりきれない異質のものを感じる。
いかにペイジのフレーズをなぞろうとしたって、ザックはザック流のギターを弾いてしまうし、ルーの超高音シャウトも、プラントのもつエロティシズムまでは再現できない。
コタックのドラムも巧みではあるが、あの唯一無二のグルーヴを叩き出したボンゾとは別のビートだ。比較するのも気の毒ではあるが、それは事実だからしかたがない。
たとえ、実の息子であるジェイスンだって、ボンゾの代わりにならない、だから再結成は出来ない、そう判断したペイジは正しかった。
レコードやCDさえ聴けば、ZEPはいつだってベストな演奏を聴かせてくれるのだから、それで十分じゃないか、ってことだ。
となると、トリビュート盤はどう考えたって、本物に負ける。分が悪すぎる。
でも、けっこう聴ける。
ZEPの音楽の「深い」部分までは理解できなくても、「運動神経」的にはしっかりコピー出来ているからだ。
大音量でガンガンならして、カラダで聴く、そういう理屈抜きの聴き方なら、全然オッケー。
まちがっても、原曲との比較なんかしちゃダメだからネ。