2001年5月19日(土)
レッド・ツェッペリン「BBCライヴ」(イーストウェスト・ジャパン)
今週もヤーディーズつながりの一枚。とゆーか二枚組。
ZEP解散17年後の、1997年発表。69年3月、デビューまもない頃からBBCのプログラム「トップ・ギア」「テイスティ・ポップ・サンデー」「ワン・ナイト・スタンド」にて数度にわたってオン・エアされた演奏14曲が1枚目。
ライヴといっても、一発録りだけではなく、ギター等のオーバー・ダビングがされている、準スタジオ録音的なものも含む。
2枚目は、71年4月、ロンドンは「パリス・シアター」でのライヴ。ただしオンエアはされていない。
ZEPは73年に「永遠の詩」なるライヴ・アルバム(映画「狂熱のライヴ」のサントラ)を発表しているが、はっきりいって、ZEPの一番ベストな時期のライヴとはいいがたい。
特に表看板のプラントの声が、相次ぐツアーのせいか疲弊し、生気を欠いている。
だいたい、そのアルバムを出したのも、ZEPというバンド、コンサートを録音したブートレッグ(海賊盤)があまりに多種多数出まわってしまい、それに業を煮やしたペイジがしかたなく作ることにしたという経緯がある。
人気バンドの宿命ですな。
ということで、この未発表音源を含むアルバムだが、さすがに「永遠の詩」より、ダンチに出来がいい。
なにより、プラントの声のコンディションがいい。超高音シャウトもバリバリである。後年のようなごまかしがない。
演奏のほうも、ガンガンのテンションでベストに近く、もちろん録音もBBCだけに非常によろしい。大規模コンサート会場でないのも幸いして、音にまとまりがある。
「永遠の詩」でちょっと期待ハズれだったかたにも、おススメ。
演奏されるのは、「ユー・シュック・ミー」「コミュニケーション・ブレイクダウン」「ハウ・メニー・モア・タイムズ」など、おなじみの初期ZEPナンバーがほとんどだが、未発表曲も数曲含まれている。
その中で一番出来がいいのが、「トラヴェリング・リバーサイド・ブルース」だ。
いうまでもなく、ロバート・ジョンスン作品のカバー。
でも、ZEPバージョンでは、原曲(「ローリン・アンド・タンブリン」タイプのメロディ)のイメージをほとんどとどめないくらい、見事にフェイクされたボーカルが聴かれる。
「換骨奪胎」とはこーいうことをいうんでしょうな。
オーティス・ラッシュの「アイ・キャント・クィット・ユー・ベイビー」同様、オリジナル・バージョンを超える、ものスゴい歌をプラントは聴かせてくれるのだ。
やはり、不世出のシンガーだよ、パーシーは。
最近じゃ誰もそんなこと言わないから、ワタシが言うしかないんですが(笑)。
ホント、ジョン・ボン・ジョヴィがなんぼのもんじゃい!って思いますな。
71年のほうは、78分余りの収録。コンサートの全体の流れがよくわかる一枚。
こちらは「移民の歌」「ブラック・ドッグ」「天国への階段」といった、サード・アルバム以後のナンバーも含まれていて、若いリスナーのかたにも聴きやすいはず。
圧巻はなんと18分以上におよぶ、「幻惑されて」。
この1曲で、ペイジは、音の実験の限りを尽くしている。長尺でも決して飽きさせない、メリハリある見事な構成。ファンならずとも、一聴に値いするだろう。
個人的には、スロー・ブルース「貴方を愛し続けて」の、泣きのギターに感涙。
もち、プラントのソウルフルな歌にもノックアウト。
とどめは、ご存じ「胸いっぱいの愛を」のメドレー。
ジョン・リー・フッカーの「ブギー・チルン」、ブッカ・ホワイトの「フィクシン・トゥ・ダイ」、アーサー・クルーダップの「ザッツ・オールライト」など実にシブい曲の数々(プラントのフェイバリットがモロに出ている)を折り込みながら、これまた14分近くにわたって熱演。
最後はさらりと「サンキュー」でシメて、オーディエンスへの感謝の意を表するあたりも心にくい演出だ。
20~30年前の作品ながら、ZEPのCD、いまだにアメリカを中心に全世界で売れ続けているというが、その理由、いまさらではあるが判ったような気がした。
やはり、アメリカン・ミュージック、ことにブルース、R&B、ロカビリーといった「王道」をきっちりふまえた作りが、多くのアメリカ人(および日本をはじめとした米国文化圏の人びと)のハートのど真ん中にきた、そういうことだ。
エルヴィスの遺産を継ぐ男、ロバート・プラントの歌声は、今世紀も敵なしぢゃい!