NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#27 ポール・ロジャース「マディ・ウォーター・ブルース」(ビクターエンタテインメント)

2021-12-08 04:33:00 | Weblog

2001年3月25日(日)



ポール・ロジャース「マディ・ウォーター・ブルース」(ビクターエンタテインメント)

今日の「マディ・ウォーター・ブルース」もまた、「ホット・フット・パウダー」にまさるとも劣らない超話題盤といえよう。

フリー、バッド・カンパニー、ファーム等々、常にブリティッシュ・ロックの第一線で活躍してきた名ボーカリスト、ポール・ロジャースが、マディ・ウォーターズをトリビュートして、彼の死後10周年の1993年に発表した、セッション・アルバム。

ゲストの顔ぶれが、とにかくスゴい。

ロック畑からはトレヴァー・ラビン、ブライアン・セッツアー、ジェフ・べック、スティーヴ・ミラー、デイヴ・ギルモア、スラッシュ、ゲイリー・ムーア、ブライアン・メイ、二ール・ショーン、リッチー・サンボラと、聞いているだけでため息の出そうな面々が参加。

ブルース畑からは、御大バディ・ガイも登場。ポール・ロジャースの声がかりでなくては、これだけのメンツが揃うことはもちろんなかったろう。

収録曲は「キャント・ビー・サティスファイド」「ローリン・ストーン」「フーチー・クーチー・マン」「アイム・レディ」など、おなじみのマディ・ナンバーが勢揃い。それに、アルバート・キングの「ザ・ハンター」「ボーン・アンダー・ザ・バッド・サイン」も。

ゲスト・ギタリストはゴリゴリのメタル系から目一杯タメるブルース系まで、それぞれ個性あふれるプレイヤーばかりだが、意外にサウンドに一貫性が感じられる。ひたすらストレートでパワフルなハード・ロックに仕上がっているのだ。

これは、ベースのピノ・パラディーノ、ドラムスのジェイスン・ボーナム(ボンゾの息子)の好演によるところが大きい。

もちろんポールのボーカルも、切れ味鋭くかつディープで、ご本家マディに迫るものがある。

トリビュート・アルバムというと、総花的でお祭り的要素の強い、作品的にはどうってことのないものになりがちなのだが、この一枚は、珍しく一本筋の通った仕上がりになっている。

ポール個人の作品としてみても、一定水準に達した出来である。

これはやはり、ポール・ロジャースがいかにマディ・ウォーターズを真剣にリスペクトしているか、その表れだと思う。

その真摯な思いは、アコースティック&エレクトリック、2タイプのヴァージョンが収録されたオリジナル、「マディ・ウォーター・ブルース」に結実している。

私個人としては、デイヴ・ギルモアを迎えた「スタンディング・アンド・クライング」が、シカゴ・スタイルをきっちりふまえたオーソドックスなプレイで、一番気に入っている。

ゲイリー・ムーア参加の「シー・ムーヴス・ミー」も重心の低いへヴィーなサウンドで、泣きのギターが実にカッコいい。ベテラン組の面目躍如といったところだ。

マディの曲をカバーしているとはいえ、あくまでも「ロック」のアルバム。ブルース・ファンにとってみれば、「守備範囲外」の音かも知れない。

だが、ポール・ロジャースは、まちがいなく、マディのスピリットを継承するひとりといえよう。その歌声、一聴の価値はある。


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