NEST OF BLUESMANIA

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音盤日誌「一日一枚」#22 V.A.「GREAT BLUES GUITARISTS:STRING DAZZLERS」(COLUMBIA/LEGACY)

2021-12-03 05:04:00 | Weblog

2001年3月10日(土)



V.A.「GREAT BLUES GUITARISTS:STRING DAZZLERS」(COLUMBIA/LEGACY)

「ROOTS & BLUES」シリーズも、これで3枚目。今回は輸入盤にて、最近購入したやつだ。

これも、相当「古~い」音のコンピレーション。1924年から40年までの録音である。

当然、すべてアコースティック。ブルースがまだ、ラグタイム、ジャズ、フォークなどと未分化だったころのノスタルジックなギターサウンドに浸れる。

ビッグ・ビル・ブルーンジー、ブラインド・ウィリー・ジョンスン、ブラインド・レモン・ジェファースンといった、おなじみのブルースの巨人たちが取り上げられているが、この一枚で一番注目すべきはロニ―・ジョンスンだろう。

ロニ―・ジョンスン、1889年ニューオーリンズ生まれのシンガー兼ギタリスト。

戦前のブルース界において、いわば「スター」だったひとで、「トゥモロー・ナイト」の大ヒットがある。

メリハリのきいた、リズム感あふれる達者なギター・ワークで一世を風靡したが、ボーカルはどちらかというと、甘ったるい感じの泣き節。

このコンピでは、白人ギタリスト、エディ・ラングとのデュオ、彼のギターソロ、そしてボーカル曲と、5曲が収録されている。

「I LOVE YOU,MARY LOU」という曲のボーカルを聴くと、すぐに判ると思うが、彼は同姓の後輩、ロバート・ジョンスンに多大な影響を与えている。

その母性に訴えるかのような甘い歌い方は、ロバートの「MALTED MILK」や「DRUNKEN HEARTED MAN」あたりでまんまパクられている。

また、ギター奏法においても、その2曲や「TERRAPLANE BLUES」「STONE IN MY PASSWAY」などでそのカッティングや単弦奏法などが巧妙に取り入れられている。

あくまでも陽性のロニーにくらべて、ロバートのほうはよりブルース性を煮詰めたという個性の違いはあるが。

ロバートは生前、「自分はあくまでも一流を目指す」と周囲に公言していたようだが、スターとして確固たる地位を築いていたロニ―が目標となったのは間違いのないところだろう。

ただ、その単なるコピーに堕することなく、ワン&オンリーなRJワールドを構築したことにロバートの面目がある。

ロニ―自身は、その時代のヒーローで終わってしまったが、ロバートはいまだに聴き継がれる、エヴァグリーンな存在にまでなっている。まさに「青は藍より出でて、藍より青し」である。

すぐれたアーティストの登場のかげには、かならず良き手本となるすぐれた先達の存在がある、ということの例証といえるだろう。

ロニ―・ジョンスンに限らず、ギタリストがテクを磨くヒントになりそうな、バラエティゆたかな名演奏のつまった一枚である。