僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

宇宙(ひろし)の夢 10日目 老婆

2006年07月11日 | SF小説ハートマン
その時老婆は自らLMS(ライフモニターシステム)のコードをそっと引き抜き、フルサポート6モーターベッドを起床介護にセットした。

地球、人里離れた深山にひっそりと建つ老人用サナトリウムの一室だ。

ベッドはウィーンというわずかな機械音と共に老婆を優しくサポートし、彼女を遊歩カプセルへと導いた。つい今までまるで植物のように眠りに就いていた老婆は、2つの目を異常なまでに広げ瞬きもせず何かを見つめていた。
深いしわに包まれた彼女の手は絶え間なく震え、何かを指し示している。

遊歩カプセルは音もなく建物を離れ、しっとりと霧に霞む森林の中を移動していった。

アダルト雑誌に見入っていた当直の保安担当官がライフモニターの異常に気付き老婆のベッドを確認しようと監視カメラの向きを操作した時、制御回路に細工を施された遊歩カプセルは既にトップスピードでサナトリウムの監視範囲を脱していた。   つづく
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