僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」⑬

2008年10月31日 | ケータイ小説「パトスと…」
あいつは正面からやってきた。

あいつはずいぶん前から気付いていたらしく、辰雄と視線が合うのを待っていたかのようにニヤリと笑った。
辰雄はどきりとしたが、今は長池と並んで歩いているし回りに人もいるし、接触することは無いだろうと思った。だからちらりと見ただけですぐに視線を逸らし長池の話しに相づちを打ちながら歩いた。

距離が7-8メートルに近づいたかなと思った時、確認するとあいつはしっかりと辰雄を見つめたまま確信的に衝突コースを歩いてくる。長池はそんなことは気にも止めずにしゃべっている。

もう辰雄は話しを聞いていられなかった。あいつは友達といてもお構いなしに辰雄を標的にし、何かするつもりに違いない。辰雄は長池と同じ歩幅で歩きながらあいつとの距離に反比例するように恐怖感が膨らんでいくのを感じた。
距離が3メートル程になった時、長池は普通誰もがそうするように自然に衝突コースを逸れ辰雄から離れた。

その時辰雄は、心のどこからか不思議な感情がわき上がり恐怖を包み込むのを感じた。それは熱い一本の筋のようでもあり分厚い盾のようでもあった。











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