僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

ケータイパトス(略)

2008年10月17日 | ケータイ小説「パトスと…」
鈴木が部活をやめると辰雄に告げたのはその日の朝だった。

バレーボール部は県内でも1、2を競う強豪でスパルタで有名な監督に率いられていた。だが部員は少なく1学年で9人制のチームのレギュラーを組むのは難しい現状だった。
鈴木は体が大きかったので前衛のポジションを与えられスパイクの練習をし、チビの辰雄は回転レシーブと球拾いの毎日だった。

ある日のいつも通りの練習中ボールがコロコロと鈴木の方へ転がった。辰雄は「あっ」と声をあげた。鈴木は監督とスパイクの練習中で、そのジャンプした真下に転がって行ったからだ。
鈴木はタイミング悪くボールの真上に着地することになった。瞬間「うわっ」、とも「ぎゃっ」ともつかない声をあげて転倒し、「おぉぅ危ねぇー」と上半身だけ起こしながら言った。

すぐに監督が辰雄を呼んだ。辰雄は鈴木を助けるために呼ばれたのだろうと思いながら走り寄った。鈴木を抱き起こそうとするといきなり強烈な拳骨を見舞われチカチカと星を見た目が一瞬視力を失った。
どうゆう状況か把握仕切れず 立ち上がり、監督を振り仰いだのと同時にもう一発拳骨がさっきと反対側の頭がい骨にたたき込まれた。堅く握られたこぶしの中央に飛び出た中指の骨が当たるのがはっきり感じられる嫌な痛さだった。

監督の拳骨には慣れていたつもりだったがいきなりの2発はきつい。
監督は口から泡を飛ばしながら
「危ないだろう、鈴木はアタッカーなんだから怪我でもしたら大変だ、お前は鈴木の代わりができるのか?球拾いもろくにできんのか」
というようなことを言っていた。

しかし辰雄はもうそんな言葉は聞いていなかった。監督の後ろに立ち上がった鈴木を見ると、目に涙をいっぱい溜めていたのだ。













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