僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」岡田さん

2008年11月30日 | ケータイ小説「パトスと…」
岡田さんは大学2年生、中肉中背、優しい顔に
当人曰くジョンレノンと同じなんだという丸いメガネをかけていたが、
パンチパーマでいつも雪駄を履いていたので近所の人は「インテリやくざ風な」と形容していた。
辰雄が触ってみたいと言うと、嬉しそうに頭を差しだした。

「これはな、頭洗った後ドライヤーで固める必要がなくって楽なんだぞ」
「北島三郎と同じ?」

「ま、そうだけどさ、どっちかって言うと清水健太郎って言ってもらいたかったな」

岡田さんは積んであった音楽雑誌の中から一冊取り出すと表紙になった清水健太郎の写真を「ほら、これっ」と投げてよこした。
雑誌の山が崩れ、岡田さんは「よいしょっ」と積み直したが、そのとき大人の週刊誌が何冊か混じっているのを見て辰雄はドキッとした。

その週刊誌にはヌードグラビアが中綴じされていることを辰雄は知っていた。

岡田さんはレコードをかけた。クラシックだった。大きな音だったので思わずボリュームを見た。

「これはラックスの管球アンプなんだ、つっても分からないよな。ほら、こっち来て見てみ、真空管が赤く光ってるから」

岡田さんはオーディオに凝っていて、それを人に見せる時、本当に嬉しそうに説明する。意味が良く分からない辰雄にも分かりやすく説明してくれる。

オーディオっていうのはステレオと同じような意味で、人間の耳が左右2つあるようにスピーカーも左右2つあるから音が立体的に聞こえるんだ。とか、
トーレンスのターンテーブルに付いているボツボツは飾りじゃなくてストロボっていうもので、蛍光灯の点滅でレコードが正しく回転しているか分かるのだ。とか、オーディオテクニカのVMカートリッジというレコード針は電磁石の原理で作動し、しかも磁石をV字型にしてあるのでとてもいいのだとか、いろいろなことを絵に描いて分かるまで説明してくれるのだ。

もともと理科好きだった辰雄はそんな難しい話しをいつも興味深く聞いた。





画像はこちらからお借りしました。



















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