僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」⑳

2008年11月17日 | ケータイ小説「パトスと…」
湯が沸くとコップにぬるま湯を作り分解したペン先を入れた。

しばらく見ていると緩やかに筋を描いてまるで体内に溜まっていた宿便が逃げ出すようにインクが溶け出してくる。
コップを揺り動かすと幾つもの筋が揺らめき、やがて限りなく薄い筋になりコップ全体を青く染める。
湯を換えて数回繰り返すと青はどんどん薄まっていく。ただそれはどんなに薄まっても決して水色になるわけではなく、あくまで薄い青なのが辰雄には不思議だった。

やがて湯は染まらなくなった。
トントンと水気を切るちり紙にも色は付かなくなり、丁寧に拭き取ると辰雄自身が風呂から上がったようなサッパリとした気分になった。

次にちり紙を半分に折り太いこよりを作るとキャップにねじ込んだ。
引き出してみるとそれは意外なほど汚れていた。
湯で少しだけ湿らせ、何度も拭き取った。

キャップを丸ごと湯に浸けるとクリップの留め具が錆びてしまうような気がしたからだ。

湯上がりのモンブランに新しいインクを吸わせると濁りのないブルーブラックになり、机に便せんを置き直すと自然に背が真っ直ぐに伸びた。


辰雄はエイトマンが強化剤のタバコを吸うとこんな気持ちになるのかもしれないと思った。





















コメント
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