僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」 通勤電車

2009年03月14日 | ケータイ小説「パトスと…」
まもなく終着駅に到着を告げる車内放送があった。

放送を聞きながら辰雄はいつも思うのだが、降車口は右か左かと言う時、それは電車の進行方向を見て言っているということを乗客全員が本当に分かっているのだろうか。

小学1年生の頃だったと思う、電車に乗ることだけでうれしくて座れなくてもドアの窓にへばりついて流れる景色を見ていた。
手前の建物は電車と同じスピードで後ろに流れ、遠くに見える風呂屋の煙突とか大型スーパーの看板はゆっくり動き、夏の入道雲はほとんど動かないのが不思議で面白かった。

終着駅のアナウンスを聞くことは楽しみの終点でもある。

残念な気持ちで降車口の案内を聞いた。ドラムを締め付けるタイトなブレーキ音が消えると、ドアは辰雄の思っていた方と反対側が開いた。
確か右側って言ったけど開いたのは左側だ、はっきりと聞いたから多分間違えだろう、車掌さんも間違えることがあるんだな。と単純に思っていた。


終着の駅に近づきポイントを通過する。何番線ホームに到着するかによって違うが左右どちらに大きく揺れる。
いつもの電車なら右に大きく揺れるはずだ。

そして左側のドアが開く。

ナベサダのマイディアライフはまだ途中だったが、辰雄はオーディオテクニカのイヤホンを外しウォークマンをバッグにしまった。














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