僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」 角砂糖

2009年03月30日 | ケータイ小説「パトスと…」
電車が大きく揺れ、
誰かの手荷物が当たるのを嫌った乗客のひとりが位置を変えようと動く。

満員電車の中では誰かが位置を変えようとすると必ずその回りの数人が影響を受け皆少しずつ動くことになる。

角砂糖を小さな容れ物に移す時、小刻みに揺らすと立方体がきっちり無駄なく揃っていくのに似ている。

要するに乗客達が効率よく車両に詰まっていくわけだ。


毎日毎日そうして詰め込まれたり押し出されたりすることから辰雄の一日は始まる。


角砂糖はどう見ても一つ一つの個性はない。
多少角が欠けていたり、揺らしてもなかなか揃っていかない頑固な奴も時々いることはいるのだが、それを個性と言うには無理があるだろう。

揺れる車内で次第に密着度を増しながら自分が急に角砂糖になった気がして個性のない回りを見回してみた。









コメント
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