僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」 終着駅ホーム

2009年03月15日 | ケータイ小説「パトスと…」
ドアの左右から揉み出されるように乗客がホームにこぼれる。

こんな狭い空間に何十分間も一緒にいたのに、皆一様に無表情だ。

毎日毎日ほとんどの、おそらく半分以上の人がいつも同じ車両に乗っている。
しかもほとんど同じ場所だ。辰雄と同じようにお気に入りの場所がそれぞれあり、回りにいつもの顔を認めて安心しているのかも知れない。


ホームに流れ出た人達は皆競うように急ぎ足だ。
ライオンに追われるトムソンガゼルか?
誰かの後を追う宿命のヌーか?
いや、それほどでもないか

もしそうだったら辰雄は真っ先に食われてしまうか踏みつぶされてしまうか、いずれにしても生き残れないだろう…


辰雄は父親譲りの性分なのだと思うが、出勤にはいつも充分すぎるくらい時間に余裕を持っているので自然とゆっくりとした歩調になる。
その分、周りにあるものや人間を観察しているのだが、友人と並んだ歩くと「おせーよ」とか「おのぼりさんかよ」と言われてしまったりする。


何かを踏んだ。見るとキーケースだった。









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