暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

散華  大炉の茶事 (1)

2011年03月09日 | 思い出の茶事
東大寺二月堂のお水取り(修二会)の時期になりました。
2月下旬、茶友のNさんに誘われて、大炉の茶事へまいりました。

茶飯釜の茶事以来、一年ぶりのK先生の茶事です。
それはそれは楽しみに伺いましたが
一つだけ心配の種が・・・正客あらそいのことです
K先生の正客として、申し分ないように見受けられる方がいらしたので
内心ほっとしていると、
虫の居所がわるかったのでしょうか?
「皆さまが私に正客を・・・とおっしゃるのは年をとっているからでしょうか。
 正客を卒業したいので、どなたかお若い方がお勉強してください」

スタートがこじれると茶事の印象が悪くなるので覚悟を決めました。
「未熟でございますが正客のお勉強をさせて頂きます。
 皆さまのお力添えをどうぞお願いいたします」

待合に大きな火鉢がおかれ、黒々とした藁灰が炭の赤さを引き立てていました。
床には大綱和尚の埋火の歌がかけられています。
生姜の効いた葛湯でほんのりあたたまり、腰掛待合へ。
板木が打たれ、枝折り戸のはじとみを開けてご亭主の迎え付けです。

床は、淡々斎のお筆で「黄鶴楼中吹玉管」。
「黄鶴楼中吹玉笛 江城五月落梅花」
(黄鶴楼中、玉笛を吹けば  江城 五月 梅花落つ)
という李白の詩があるそうで、
笛の調べ、梅の花が静かに散る場面が脳裏に広がりました。

昨年の立礼の茶事で亭主を務められたN先生が最近お亡くなりになり、
待合の埋火の和歌は、N先生を想いだし、語り合えたら・・という、
ご亭主のお気持ちが込められていたのでした。
N先生には水屋で茶事の一からお教えいただきましたので
感謝の気持ちや思い出話を少しは語り合うことが出来て好かったです・・・。

               

玄々斎が北国の囲炉裏から考案されたという大炉にまつわる、
さまざまなお話を興味深く伺いました。
まだ消化不良でして、きちんと調べてから大炉について書きたい
・・と思っています。

春とはいえ、如月はまだ寒く、火や温かさが一番のごちそうです。
一尺八寸四方の大炉に炭が置かれました。
大炉の炭点前は火を最大限に生かしたごちそうと思いながら
炉中の灰、羽箒の動き、湿し灰を撒く様子に見とれました。
大きな野溝釜を掛ける瞬間は客一同、ご亭主の所作に息を合せました。

炭斗は円能斎手づくりのはまぐり篭、
東大寺古材で作られた炉縁がしっくりと大炉に合い、
香合は玄々斎在判のはまぐり香合、香銘は梅ヶ香でした。

懐石の頃にやっと正客の緊張感もほぐれ、
K先生との掛け合い(?)もはずみ、愉しくなってきました。
いつもはお道具より懐石の献立を覚えているのですが、
この時はご亭主のお気持ちに添うことに一生懸命で、
懐石は?・・・うーん 思い出せません。

   散華 大炉の茶事(2)へつづく              

    写真は、「東大寺二月堂の修二会」
          「囲炉裏で点前」 (横浜市長屋門公園にて)