暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

瀬谷の吊るし雛 (1)

2010年03月03日 | ハイキング・ぶらり散歩
今日は3月3日、雛まつりです。

「今年はぜひ一緒に行きましょう」
Tさんに誘われて、瀬谷の吊るし雛を見に行きました。

横浜市瀬谷区竹村町にある川口さんのお宅へ伺うと
玄関のベンチに赤い毛氈が敷かれ、早速、五人囃子のお出迎えです。
玄関には桃の花と菜の花が飾られ、応接間に入ると手作りの人形たちが
表情豊かに吊るし雛と一緒に飾られていました。

                   

表座敷の二間に雛壇が飾られ、ご当主手作りの
吊るし雛がたくさん吊るされていて、圧巻です。
「一つの吊るし雛の数は50個なので一年がかりです」
ご主人が亡くなってから始められたとのことで、
毎年一つずつ作っているそうです。
華やかな別世界に入ったような、そんな空間を楽しみました。

           

ご当主は裏千家茶道をなさっていて、若いお弟子さんたちが
薄茶席を担当していました。
築120年の味噌蔵を改造した「茶蔵庵(さくらあん)」という
茶室で薄茶を友人と頂きました。
太い梁のある天井が高い六畳の茶室には炉が切られ、
味噌蔵とは思えない落ち着いた佇まいです。

           

もう一つ、庭の奥に「雲夢庵(うんもあん)」という
扁額のかかる茶室があり、拝見すると三畳台目出炉で、
にじり口の位置が違いますが、三渓園春草廬と似ている作りです。
こんなにお近くに素敵な茶室のある川口邸があったことを知り、
驚きました。

毎年、春と秋に百名のお客さまを招いて
二つの茶室で茶会を催していたそうですが
「身体を壊してから出来なくなりました・・」と、ちょっと淋しそう。

でも、毎年吊るし雛を見に来るお客さまが千客万来で
とてもお元気そうで何よりです。
また、来年も伺いたいと思いました。

        (次へ)
                                

峯風庵  雛の茶事 (2)

2010年03月01日 | 思い出の茶事
   (つづき)
雛たちの大歓迎を受けて童心の昔に戻れ、
正客の緊張感が少しは薄らいだようです。

釣釜での初炭手前を雛たちと一緒に拝見しました。

関西風の味付け、柿傳さんと競ったという懐石で
おもてなしを受け、感激しました。
特に一文字と黄身しんじょうの煮物碗は絶品でした。

丁寧に練り上げてくださった濃茶が美味しかったこと。
ご縁があって集まってきた道具のこと、茶事の師匠のこと、
建築家から託された峯風庵のことなど、
いろいろお話を伺えて、とても親しみを感じると共に
峯風庵で積重ねられてきた茶事や維持のご苦労に
想いを馳せました。
淡々と亭主役に徹する森さんの精神力に感服し、そして
本当に茶事がお好きなのだ・・・と。

峯風庵、最終月の茶事にお招きいただいた幸せと
ご縁を感謝しながらのひと時でした。
きっと連客の皆様も同じ思いだったことでしょう。

新しい旅立ちへエールを・・と思い、歌を詠みました。

    峯渡る春のそよ風心あらば
       北指す雁に「まつ」と伝えよ   暁庵

返歌を頂戴しました。

    海わたる風のささやき胸熱く
        時満ちる日の帰雁誓いて   森 由紀子(峯風庵)

「帰雁」が早まって、
今、森さんは大阪の万博公園にある汎庵で茶事講座
開催するなど、前にも増してご活躍中で、嬉しいです。
いつの日かまた茶事でお会いしたいと願っています。

         (前へ)
                               

    写真は、何か言いたげな三人官女。