暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

五山送り火 「大文字」

2012年08月17日 | 京暮らし 年中行事
夏バテでしょうか?
15日に開催された「京都七口を歩く(?)」へ張り切って出かけたのですが、
午前10時、三条大橋のたもと(つまり出発点)で体調急変。
目の前が真っ暗になり、気持ちが悪く、ここであえなく離脱しました。
帰宅後は水分を採ってひたすら安静に過ごしました。

16日は、京都四大行事の一つ、五山送り火です。
前日と違い夜間だし、見る場所も吉田山の山頂広場と決めていたので、
19時に家を出ました。
吉田山のおどろおどろの道を懐中電灯をたよりに進みましたが、
昼間と違って道が今一つわかりません。
犬を連れて散歩している男の方に道を教えてもらい、
やっと山頂広場へ着くと、既にたくさんの人が溢れていました。

ここは正面に如意ヶ嶽の大文字を見ることができる絶好のスポットなのです。

三脚を構えている写真愛好家も多かったのですが、
敷物を敷いて缶ビールを楽しんでいるカップルや家族連れ、
異国の言葉が飛び交っている外国人のグループなど、
目が暗さに慣れてくると、いろいろな人が狭い空間に譲り合って、
火入れの瞬間を思い思いに待っているのが見てとれました。

「火入れの瞬間には拍手が起こるのでしょうか?」
と誰かから質問が・・・。
「京の人は手を合わせて見守ります・・・
 お精霊(しょらい)さんをあの世へ送り届ける盆の送り火ですから・・・」
と誰かが静かに答えます。

20時になり、「大文字」が点火されました。
煙が立ち上り、炎が紫や青に変わって、それから紅蓮の炎となって行きました。
10分ほど「大文字」送り火のクライマックスが続きました。
写真のシャッターを適当に切って、あとで見ると、火の鳥のようでした。
あの火の鳥に先導されて、お精霊さんは迷わずあの世へ帰って行けたでしょうか。
 
移りゆく「大文字」の写真をご覧ください。

              
                  点火後まもなく
              
              
                  だんだん火の鳥に見えてきて・・・
              
                  迷わず帰って行けたかしら・・・                  
              
                  思わず手を合わせて見送りました・・・
        

帰りに吉田山の稜線で、
「舟形万灯籠」
「左大文字」
「鳥居形松明」
を木間隠れに見ることができ、満ち足りて山を下りました。

              
                  こちらは夢のような「舟形万灯籠」

                                   



能を楽しむ夕べ 「東北」 その2

2012年08月15日 | 歌舞伎・能など
いよいよ「東北」が始まりました。
今宵は、見どころらしい、中入後の後半の15分間が演じられました。

全あらすじは、
   東国から春の都へやってきた僧が東北院に着き、
   美しい梅を眺めていると、若い女が現れ、
   「梅の名は好文木(こうぶんぼく)または鶯宿梅、
    この梅は和泉式部の植え置いた軒端梅(のきばのうめ)」
   と教えてくれます。
   僧は納得し、また方丈は和泉式部の寝所であると教えてもらう。
   女は、この花に住む「梅の主」と言い残し、夕暮の木陰に消えます。
   (中入)
   僧が法華経を読経していると、
   僧の夢の中に和泉式部が現われ、僧の読経に感謝します。
   法華経を聞き、生前のことを思い出し、僧に語ります。
   女はなお、和歌の徳を述べ、都の東北の鬼門を守るこの寺の風物が
   仏法の教義に通じていることを物語り、舞を舞う。

        春の夜の 闇はあやなし 梅の花
            色こそ見えね 春やは隠るる

   昔を思うと恋しい涙が・・・、これは恥ずかしい
   もはやおいとましよう、式部は「今はこれまで」と言い、
   方丈へ入ったと見るうちに僧の夢は覚めます。

            

能舞台・豊響殿は、豊臣秀吉没後300年記念祭(1898年)が
東山阿弥陀ヶ峰の豊国廟で行われた際に建てられた由緒あるもので、
正面に野外席が設えられ、薪能のようにかがり火が焚かれています。
日暮れには早いようでしたが、
ひぐらしの声がBGMのように時折響きます・・「カナカナカナ・・・」

            

   昔を思うと恋しい涙が・・・、これは恥ずかしい
   もはやおいとましよう

袖を翻し、和泉式部が橋がかりを静かに帰っていきます。
揚幕の向こうはあの世・・・。
そう思うと、去っていく和泉式部に亡き母の姿が重なりました。
「行かないで・・・お母さん!」と心の中で式部を引き留めていました。

一瞬のことですが、初めての経験です。
お盆で、六道珍皇寺へ行き、「迎え鐘」を撞いたせいでしょうか。
お能はあの世とこの世を行き交う舞台劇で、自己暗示の世界と思えば
いつでもどこでも不思議な能の世界へ瞬間移動できるのかもしれませんね。

            
                 山門暮色
            
                 茶室・清心庵にて一服

お能の会が終わってから、観世流・林宗一郎氏を囲む懇親会が、
修学院きらら山荘内の茶室・清心庵に設けられたので、
そちらへ移動しました。
総勢十名、風雅な茶室でお菓子と薄茶を頂きながら、
京観世五軒家と林家の歴史、能に関する素朴な質問など
お話が聞けて、こちらも有意義な時間でした。

これからも「能を楽しむ夕べ」へ通いたいと思っています。

次回は、9月14日(金)17:30~ 演目は能「小鍛冶」です。
詳しくはHPをご覧ください。


           能を楽しむ夕べ「東北」 その1へ 


  能のお知らせ
  〇 観世青年研究能
    平成24年8月19日(日) 午後1時開演(12時半開場)
    於 京都観世会館 (TEL075-771-6114)
    演目: 能「賀茂」  狂言「柑子」  仕舞  能「東北」
    チケット: 前売券2000円  当日券2500円

  〇 平成24年 林 定期能 第五回
    平成24年9月29日(土) 正午開演(11時20分開場)
    於 京都観世会館 (TEL075-771-6114)
    演目: 能「通小町」 「楊貴妃」 「小鍛冶」
    チケット: 前売券4000円  当日券4500円 (全席自由)

            

能を楽しむ夕べ 「東北」 その1

2012年08月14日 | 歌舞伎・能など
8月11日(土)に修学院きらら山荘で開催された
「能を楽しむ夕べ」へ出掛けました。

能の魅力や見どころを解説し、能の楽しさを広く伝えたいと、
観世流・林宗一郎氏が毎月一回、山荘内の能舞台・豊響殿で
意欲的に取り組んでいます。

             

その日が第一回目で、演目の解説は「東北(とうぼく)」でした。
作者は世阿弥(または金春禅竹とも)、季節は春、所は都の東北院です。
テーマは、和泉式部が現れ、梅を愛で、和歌の徳を讃え、
歌舞をなすという演目です(あらすじはその2で記します)。

忘れもしません・・・今年3月に東国から京都へ引っ越してきて、
最初に探し歩いたのが、能「東北」に出てくる東北院というお寺でした。
真如堂近くにある東北院を訪ね、
ひっそり咲いている「軒端の梅」に出会ったときの喜びを・・・。
でも、肝心のお能の方はまだ見る機会がなかったのです。

            
               東北院と軒端の梅(2012年3月) 

今回の講座では能装束の着付けを拝見しました。
白装束(下着)から始まり、高貴な女性の正装である大口(おおぐち、袴)に
長絹(ちょうけん、上着)までの着付けや、かづらを付け、
髪を左右に分けて結いあげ、元結でしばるなど、初めて見る舞台裏の光景です。

            
                緋の大口(おおぐち、袴)の着付け
            
                長絹(ちょうけん、上着)を着たところ

興味深かったのは、着物でいえば長襦袢を着て、胴締で締めるとき、
「おしまり?}と介添え役から声が掛かります。
締まり具合を判断して、良ければ「はい」と応えます。
胴締に限らず、かづらの紐を締める時にも「おしまり?」「はい」

締まり具合がきついと、失神したり気持ちが悪くなるなど、
大変な事態になることもあるとか。
能は、江戸幕府の式楽となり、武家で盛んに行われたので、
責任の所在をはっきりさせる必要があったそうです。
「おしまり?」と聞いてみたい政治家の顔がつい、ちらちら。

大口(袴)は緋色、長絹(ちょうけん)は紫地に業平菱と丸紋に梅の模様です。
能装束は役者の好みで選ぶことができるそうです。
最後に面をかけました。
能面はご神体のようなものなので、面に対して一礼してかけます。

面は、林家に伝わる若女(わかおんな)でした。

            
                    「若女」の面


             能を楽しむ夕べ「東北」 その2へ



左京区カフェ探検隊

2012年08月11日 | 京暮らし 日常編
私の住む左京区には散歩の途中でふらっと寄ると、
とても居心地の良いカフェや通いたくなる個性的なカフェに出会うことがあります。
そんな時、京大の生協で「京都 左京区さんぽ」(リベラル社)という
ステキな本に出合いました。
最初の部分をちょこっと紹介しますね。

         はじめに

     大文字山や糺の森の深い緑と
     鴨川や琵琶湖疏水の流れに囲まれた左京区は
     京都のほかのどこよりも、自由な時間が流れるエリア
     その空気に惹かれて集まった個性豊かな人たちが
     自分の「好きなもの」を大切に暮らしています

     全国から訪れる人が絶えない個性的な本屋さん
     体にも地球にも優しい品がそろうカフェやショップ
     一つひとつ手作りの可愛い雑貨が並ぶ市
     時が止まったようなクラシックな喫茶にバー・・・

     こんなあるじの「好きなもの」を集めた空間と
     出合ったときのワクワクが、左京区さんぽの楽しみです
     ・・・・中略・・・・

     みんなに教えたいもの、自分だけの秘密にしたいもの
     この本を片手に歩くさんぽ道が
     あなたの「好き」との出合いに続きますように  
                                アリカ

本との出合いもあって、左京区カフェ探検隊を編成しました。
・・・といっても隊員は
「ぜひご一緒に探検を・・・」と名乗り出てくださった
左京区在住のPさんと私の二名です。
月1~2回のペースで、気になっているカフェを探訪しようと張り切っています。

                

第一回左京区カフェ探検は「茶寮 宝泉」です。
下鴨神社に添って細い道を北へ向って、自転車を走らせました。
途中で芙蓉の花がたくさん咲いていて、もう秋ですねぇ~。

                

我が家から自転車で15分くらいでしょうか?
住宅街の中で目印がないので地図を片手に探して、14時頃になって到着。
「いつもは待合の席がいっぱいですが、今日は空いているみたいです」
と先に来て待っていてくださったPさん。

名物の「わらび餅」は、受注してから作るので15分かかるとか。
宝泉堂の「わらび餅」にあこがれていたので、迷うことなく注文しました。
注文後しばらくしてから、庭に面した和室へ案内されました。
座卓がゆったりと配置され、どの席からも美しい庭を眺めることができます。

                
                

「最初に何もつけずにご賞味ください。 
 お好みでこちらの黒蜜をどうぞ・・・」
ギヤマンの器に笹葉が敷かれ、黒餡の「わらび餅」5個が乗っています。
勧められた通りに、そのまま一つを口へ運ぶと、
冷たくツルッリとした食感のあとに、黒餡が程よい歯ごたえと甘さです。
黒蜜をかけると、葛切りとあんみつを同時に思い出すような美味しさでした。

                                   
                       わらび餅

Pさんが注文した「京しぐれ」も涼しげでおいしそう!
他にも上生菓子と各種お茶のセット、冷やしぜんざい・・・。
何度も通いたくなるお店・・・と思いました。

               
                       京しぐれ

平日のせいか、混んでいなかったので、冷茶をお代わりし、
尽きぬ茶談義を愉しく交えながら午後の一刻を過ごしました。

参考までに、わらび餅・・950円、京しぐれ・・840円です。

           左京区カフェ探検 次へ


     茶寮 宝泉
     〒606-0861 京都市左京区下鴨西高木町25
     TEL:075-712-1270  FAX:075-712-1270
     営業時間:午前10時~午後5時(LO:午後4時45分)
     定休日:水曜日(祝日の場合、翌平日休み)


京の七夕

2012年08月09日 | 京暮らし 年中行事
立秋が過ぎ、ロマンチックな七夕のシーズンがやってきました。
一昨年昨年に続き、七夕の歌を紹介します。

    天の河 もみぢを橋に渡せばや
       たなばたつめの 秋をしも待つ
                         読人しらず(古今和歌集)

歌の意は、水面に散り敷いた紅葉を橋にして、牽牛が織姫に逢いに
天の河を渡ってくる、紅葉の錦の秋が待たれることよ・・・でしょうか。
七夕の季節は紅葉の季節とずれがありますが、「秋」をそのまま紅葉の季節として
表現した歌です。

七夕のお話で
「牽牛と織女が天の河を渡るとき、カササギの橋はよく知られているけれど、
 七夕は秋の行事なので紅葉の橋もあります」
と伺ったことをこの歌が思い出させてくれました。

               
                  (「京の七夕」・・・堀川会場にて)

今、京都では「京の七夕」というイベントが8月4日~13日まで
鴨川と堀川の二つの会場を中心に行われています。
祇園祭と大文字送り火の間の観光イベントとして新たに始まったようですが、
「七夕の楽しみが増えて嬉しい・・・」と、4日に鴨川会場へ、
5日に友人のK夫妻と誘いあって堀川会場へ出掛けました。

               

4日夕方、鴨川遊歩道を歩くと川風が涼しく吹き渡り、
水遊びをする子供や外人さん、横笛を練習する青年、ジョギングする人など、
思い思いに夕暮の川辺を愉しんでいます。
河原に張り出された川床には、ジョッキ片手に料理と七夕を楽しむ人たちで
溢れていました。

鴨川で昔行われていたという友禅流しが再現されていました。
色鮮やかな京友禅の反物を川水で洗い、糊や染料を流し取るそうですが、
職人さんたちが反物をたぐり寄せては一気に遠くへ放り投げる光景は
始めて見る、鴨川の風物詩です。

日が暮れると、風鈴灯や光の笹飾りがライトアップされて浮かび上がり、
風鈴の音とお香の香りが楽しめます。
なぜか?郡上踊りやら、全国物産展で七夕祭りは大いに盛り上がっていました。
愛媛県人会を探し出して、アツアツのじゃこ天を食べながらぶらぶら・・・。

              
              
              

翌5日の堀川会場へはがんばって着物でお出掛けしました。
K夫妻と京都国際ホテルで待ち合わせ、京料理ほり川にて会食後、
無料公開されている二条城のライトアップを見物しました。
ハイテクを駆使したライトアップのスケールにびっくりし、
刻々と変わる光のファンタジーに魅せられました。

              
              

一方通行の堀川遊歩道を光のオブジェに目を奪われながら北へ進みました。
青い光を放つボールが次々と流れてきて、幻想的な雰囲気を盛り上げ、
小さなせせらぎのアクセントになっていました。

              
              

上を見上げると燦然と輝く天の河。
琴座のベガ(織姫星)、わし座のアルタイル(牽牛星)、白鳥座、
そして流れ星も時折・・・。
刻々と変わる光のショーを写真でお楽しみください。