9月15日夜にタイトル「事業開発;技術ネタをいかに商売にするか」という講演を拝聴しました。
講演されたのは、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の菅野寛(かんのひろし)教授です。非常に魅力的な講演タイトルなので、100人ぐらいは入る講演会場は満席になりました。講演会場の開場直後から「本講演は予定定員に達し満席なので、前から詰めて着席してください」と、講演主催者の関係者が何回も声をかけます。3人席の真ん中は窮屈なので人気がなく、空席になりがちですが、関係者の方が聴講者をうまく誘導し、次々と埋めていきます。
菅野教授は、前職が大手コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループのパートナーでした。今回の「事業開発;技術ネタをいかに商売にするか」という講演は、その時の実務からつかんだ経験則の私見のエッセンスだと前置きされて、お話を始めました。「学術的な内容ではなく、実務的な内容です」と、前もって説明されました。
冒頭に「斬新な事業ネタのアイデア、特に技術ネタによって、新規事業は成功する」という神話は、実は幻想であり、実務経験からは成功例は滅多にないと伝えます。事業ネタのアイデアがいくら優れていても、事業の組み立てができないとあまり成功しないとの意味です。新規事業起こしの要素を分解すると「WHAT=良いネタ」「HOW=事業の組み立て方」」「LUCK=運」の掛け算が新規事業の成功をもたらすと説明し、今回の講演では「HOW=事業の組み立て方」面を解説すると伝えます。ここが成功のポイントだからです。
新規事業起こしでは、「成功の必要条件を満たす」、すなわち失敗する“落とし穴”を論理的に避けることで、成功確率を努力して高め続けることが重要だと語ります。すなわち「戦略を徹底して練る、繰り返し練ることだ」という。つまり、必ず新規事業が成功する方程式はないのだが、この見方を変えると対偶は「失敗の十分条件」を意味する。すなわち「これをやったら絶対に成功しない」ということは、論理的な思考でチェックできるので、チェックリスト化して落とし穴を避けることを続けるといいます。
菅野教授が自らの体験から編み出した「チャックリストのまとめ 事業を考える枠組み」を公開されます。「バリュープロポーション」「市場規模」「ビジネスモデル」「競争優位性」「事業経済性」「リクワイアメント」「リスク/不確実性マネジメント」「アクションプラン」の各項目で、体験から得たノウハウを具体的に伝えます。実務から編み出したノウハウだけに、説得力があります。
具体的な事例によるノウハウの話が続きます。「大手企業をコンサルティングした際に、信じられないでしょうが、市場規模をつかんでいないケースが予想以上にあったのです」と説明します。予想される市場が100億円以下なのに、単純に市場規模が大きとだけの希望的観測として考えられた投資案件があったり、日本で予想される市場のある部分しか確保できないのに、全体を確保できるというシナリオを描いたりと、チェック内容が精緻でないケースが多いと警告します。「チェック項目は当たり前のことを予想し検討するのに、意外と当たり前のことができない人が多い」そうです。
「競争的優位性」の項目でも、新規事業では「想定ユーザーが他の代替案と比較しながら、当該の新製品/サービスを選択する」というチェックが不足気味と説明されます。新製品/サービスの真の競争相手は何かのチェックが頓珍漢(トンチンカン)なケースが予想以上に多いようです。「事業経済性」でも、最悪の展開のケースでも市場規模がどれだけあるのかのチェックが不足気味だそうです。
「成功の必要条件を満たす」を徹底的に実行する戦略立案を実施しながら、もう一つの要件は「徹底して実行する」オペレーションに、ポイントがあると説明されます。新規事業計画案を集中し、高スピードで、しつこく実行するオペレーションだそうです。その成功例として、宅配便を始めたクロネコヤマトのヤマト運輸とコンビニエンス業のセブン-イレブンを統括するセブン-イレブン・ジャパンが日常的に行ったしつこいオペレーション事例を説明します。ユニチャーム会長の高原慶一郎さんは「アイデアを考えるエネルギーを1とすると、実行するには10のエネルギー、成功するには100のエネルギーが必要」と、オペレーションの大変さを語ったと伝えます。
菅野教授は体験から、新規事業起こしに成功する起業家には二面性が必要といいます。新規事業に必ず成功すると信じる超楽天家の面と、その新事業を起こしを実践している時は、成功するか不安なので、落とし穴がないかをあれもこれもチェックする心配性な超悲観的な面の両方が必要といいます。優れた起業家は超楽天的な面と超悲観的な面が巧みに交互に現れて、成功するまでしつこく実行し続けるのだそうです。
講演後の会場の聴講者からの質問の中で、「日本では、当該企業の中核事業の周辺に伸ばしていった新規事業の方が成功していると感じる」との答えに、あまり明確にお答えにならなかった気がしました。日本では既存事業の部分改良によって、新規事業を成功されるケースが多いようですが、この場合はその新規事業によって、まったく新しい市場をつくりだし、その市場で一気にナンバーワン企業になることは無いと感じました。革新的な新規事業では無いからです。ジャンルを超えた新規事業起こしは日本の既存企業ではやはり難しいのかなと思いました。
講演されたのは、一橋大学大学院国際企業戦略研究科の菅野寛(かんのひろし)教授です。非常に魅力的な講演タイトルなので、100人ぐらいは入る講演会場は満席になりました。講演会場の開場直後から「本講演は予定定員に達し満席なので、前から詰めて着席してください」と、講演主催者の関係者が何回も声をかけます。3人席の真ん中は窮屈なので人気がなく、空席になりがちですが、関係者の方が聴講者をうまく誘導し、次々と埋めていきます。
菅野教授は、前職が大手コンサルティング会社のボストン・コンサルティング・グループのパートナーでした。今回の「事業開発;技術ネタをいかに商売にするか」という講演は、その時の実務からつかんだ経験則の私見のエッセンスだと前置きされて、お話を始めました。「学術的な内容ではなく、実務的な内容です」と、前もって説明されました。
冒頭に「斬新な事業ネタのアイデア、特に技術ネタによって、新規事業は成功する」という神話は、実は幻想であり、実務経験からは成功例は滅多にないと伝えます。事業ネタのアイデアがいくら優れていても、事業の組み立てができないとあまり成功しないとの意味です。新規事業起こしの要素を分解すると「WHAT=良いネタ」「HOW=事業の組み立て方」」「LUCK=運」の掛け算が新規事業の成功をもたらすと説明し、今回の講演では「HOW=事業の組み立て方」面を解説すると伝えます。ここが成功のポイントだからです。
新規事業起こしでは、「成功の必要条件を満たす」、すなわち失敗する“落とし穴”を論理的に避けることで、成功確率を努力して高め続けることが重要だと語ります。すなわち「戦略を徹底して練る、繰り返し練ることだ」という。つまり、必ず新規事業が成功する方程式はないのだが、この見方を変えると対偶は「失敗の十分条件」を意味する。すなわち「これをやったら絶対に成功しない」ということは、論理的な思考でチェックできるので、チェックリスト化して落とし穴を避けることを続けるといいます。
菅野教授が自らの体験から編み出した「チャックリストのまとめ 事業を考える枠組み」を公開されます。「バリュープロポーション」「市場規模」「ビジネスモデル」「競争優位性」「事業経済性」「リクワイアメント」「リスク/不確実性マネジメント」「アクションプラン」の各項目で、体験から得たノウハウを具体的に伝えます。実務から編み出したノウハウだけに、説得力があります。
具体的な事例によるノウハウの話が続きます。「大手企業をコンサルティングした際に、信じられないでしょうが、市場規模をつかんでいないケースが予想以上にあったのです」と説明します。予想される市場が100億円以下なのに、単純に市場規模が大きとだけの希望的観測として考えられた投資案件があったり、日本で予想される市場のある部分しか確保できないのに、全体を確保できるというシナリオを描いたりと、チェック内容が精緻でないケースが多いと警告します。「チェック項目は当たり前のことを予想し検討するのに、意外と当たり前のことができない人が多い」そうです。
「競争的優位性」の項目でも、新規事業では「想定ユーザーが他の代替案と比較しながら、当該の新製品/サービスを選択する」というチェックが不足気味と説明されます。新製品/サービスの真の競争相手は何かのチェックが頓珍漢(トンチンカン)なケースが予想以上に多いようです。「事業経済性」でも、最悪の展開のケースでも市場規模がどれだけあるのかのチェックが不足気味だそうです。
「成功の必要条件を満たす」を徹底的に実行する戦略立案を実施しながら、もう一つの要件は「徹底して実行する」オペレーションに、ポイントがあると説明されます。新規事業計画案を集中し、高スピードで、しつこく実行するオペレーションだそうです。その成功例として、宅配便を始めたクロネコヤマトのヤマト運輸とコンビニエンス業のセブン-イレブンを統括するセブン-イレブン・ジャパンが日常的に行ったしつこいオペレーション事例を説明します。ユニチャーム会長の高原慶一郎さんは「アイデアを考えるエネルギーを1とすると、実行するには10のエネルギー、成功するには100のエネルギーが必要」と、オペレーションの大変さを語ったと伝えます。
菅野教授は体験から、新規事業起こしに成功する起業家には二面性が必要といいます。新規事業に必ず成功すると信じる超楽天家の面と、その新事業を起こしを実践している時は、成功するか不安なので、落とし穴がないかをあれもこれもチェックする心配性な超悲観的な面の両方が必要といいます。優れた起業家は超楽天的な面と超悲観的な面が巧みに交互に現れて、成功するまでしつこく実行し続けるのだそうです。
講演後の会場の聴講者からの質問の中で、「日本では、当該企業の中核事業の周辺に伸ばしていった新規事業の方が成功していると感じる」との答えに、あまり明確にお答えにならなかった気がしました。日本では既存事業の部分改良によって、新規事業を成功されるケースが多いようですが、この場合はその新規事業によって、まったく新しい市場をつくりだし、その市場で一気にナンバーワン企業になることは無いと感じました。革新的な新規事業では無いからです。ジャンルを超えた新規事業起こしは日本の既存企業ではやはり難しいのかなと思いました。