ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

伊坂幸太郎さんの奇妙な味のミステリー小説「死神の浮力」を読み終えました

2013年09月03日 | 
 お気に入りのミステリー作家の一人である伊坂幸太郎さんの奇妙な味のミステリー小説「死神の浮力」を読み終えました。

 伊坂さんは人気あるミステリー作家なので、この「死神の浮力」は8月下旬で3版になっています。要は、予想以上に売れているようです。発行元は文藝春秋です。2013年7月30日発行です。



 読み終わった感想は、こんなに複雑な話で、どう展開するか先の読めないミステリー小説を、伊坂ファンは心棒強く読むことに感心しました。

 この小説の主人公というか話の進行役は、千葉と名乗る死神です。伊坂さんは、2004年に書いた短編小説集「死神の精度」に、この千葉という死神を主人公とした世界をつくり上げました。死神は、対象者の人間を1週間にわたって調査し、死ぬのが正しいのか調査し、その結論に従って生死が判定されます。死神の社会もある種のサラリーマン社会のようです。

 今回、「死神の浮力」を読んで、ミステリー小説としては前作の「死神の精度」の方が面白いと感じました。

 「死神の浮力」は、前半の話がどう展開するか分からないため、前半部はひたすら話を追うだけです。既に多くの伊坂ファンが購入済みということは、「伊坂さんだったらきっと面白い結末を楽しませてくれると信じて読み続けるに違うない」と感じました。

 ミステリー小説なので、ネタばらしは避けます。話の骨子は、山野辺という小説家夫婦の愛娘が、本城という男に無残にも殺され、その復讐を山野辺夫妻が果たすという筋書きです。これに、山野辺の調査担当になった、死に神の千葉が1週間、密着調査するという展開です。

 とにかく、前半部は話がどう展開するか読めません。一見、荒唐無稽な展開になります。少しネタばらしになりますが、一見くだらないエピソードや“小道具”が次第につながっていき、後半は重要な役目を果たします。

 この「死神の浮力」は書き下ろしです。最後のオチの話を考えてから、前半部の荒唐無稽な展開の読めない話を書いたとしか考えられません。つまらないエピソードが話の重要な役割を果たす布石になっています。伊坂さんは、ものすごい構想力の持ち主です。しかも、前半の荒唐無稽な話を読ませ続ける筆力の持ち主です。感心しました。

 題名の「死神の浮力」の“浮力”は重要なキーワードです。でも、荒唐無稽なこじつけです。

 最近読んだ小説の中で、今回も伊坂幸太郎さんの作品を取り上げてしまいました(前回の2013年7月8日編も伊坂さんの「ガソリン生活」でした)。次回は、別の方を取り上げるように努力します。