今年9月末に、経済産業省傘下の独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と川崎重工業は「川崎重工業が開発した、臨床用の細胞自動培養システムを実際に稼働させて、運用実績データを得る」という再生・細胞医療分野での先行的な布石を意味する発表がありました。
新エネルギー・産業技術総合開発機構と川崎重工業は、タイの商務省との共同国際プロジェクトによって、タイのチュラロンコン大学医学部内に臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」を設置し、10月から稼働させるという専門家向けの発表がありました。
かなり戦略的・戦術的に先行する布石だけに、再生・細胞医療分野の関係者などにしか、その重要性が伝わらなかった様子です。
今年6月にiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用する再生医療が、加齢黄斑変性という目の難病から始まることになったというニュースが大々的に報道され、再生医療が注目されました。
iPS細胞による初の臨床研究計画を審議する厚生労働省の審査委員会は、理化学研究所から申請された加齢黄斑変性のiPS細胞による初の臨床研究での治療にOKを出したとのニュースです。加齢黄斑変性に続き、パーキンソン病や脊髄(せきずい)損傷などのさまざまな病気について臨床応用を目指す研究が進む契機を迎えたと報道されました。
今回の理化学研究所が実施するから加齢黄斑変性のiPS細胞による初の臨床研究に用いられるiPS細胞は、高度な専門家が対象のiPS細胞を手培養によって作成します。始まったばかりのiPS細胞による臨床研究の段階であるために、当然の対応・段階です。
このiPS細胞による臨床研究が成功し、目の難病の加齢黄斑変性の治療に活路が見いだされると、次は多くの対象患者にどうやって治療を実施するかという“普遍化”に進みます。法的な整備やその治療費の負担をどう少なくするかという次の課題を解決する段階に入ります。
再生・細胞医療の臨床応用は、当該患者から採取した対象細胞を培養した後に、当該患者の患部に移植します。現在は、iPS細胞を利用しない研究段階にある場合でも、ほとんど実施例ないために、対象細胞の培養は、専門施設での熟練技術者による“手培養”に留まっています。
“手培養”による操作を行う細胞培養施設(CPC)は「施設・設備の初期投資だけで数億円かかる」との試算です。培養する細胞に、他の細胞や細菌、ウイルスなどが入らないように、高度なクリーンルームにする必要があるからです。さらに、手作業による細胞培養のために、熟練技術者が必要になり、「労務費を含めたランニングコストは1年当たり数1000万円かかる見通し」と、専門家は試算します。
手作業による職人的熟練作業を置き換える“工業化”が当然、次に検討されています。“クリーン”ロボットなどによる細胞培養です。工業化による品質管理が可能になれば、細胞培養のコストも下がり、再生・細胞医療の臨床応用(さらにその将来は治療)が“一般的”になります(まだかなり先の話です)。
今回、「川重が開発した臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」をタイのチュラロンコン大学医学部内に設置し、「10月から実証実験を始める」との発表はその始まりの第一歩のようなものです。再生・細胞医療分野での先行的な布石です。
日本の大手企業数社は、有力大学などと共同で、臨床用の細胞自動培養システムの研究・開発を進めています。その臨床応用には、まだ課題が山積しています。しかし、この難問を一つひとつクリアできれば、将来は臨床用の細胞自動培養システム装置は、日本が得意とする医療機器製品に成長する可能性があります。
今回、川崎重工業が発表した臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」は、装置内部の中央に2台の垂直多関節型“クリーン”ロボットがレール上を動く仕組みです。このロボットが細胞培養の容器を培養室から取り出し、培養容器の古くなった培地(培養液)を交換するなどの操作を担当します。2台のロボットは、培養容器のキャップを開ける操作などに協調動作をします。また、培養された細胞の品質をCCDカメラなどで確認する機能を備えています。
2台の“クリーン”ロボットは「システム内を除染する過酸化水素蒸気(H2O2)によって腐食しないように、アームカバーやシールに高耐食性の材料を採用するなどの工夫を凝らしてある」そうです。
将来、再生・細胞医療の臨床応用の“産業化”が急速に進み始めた時には、欧米などの競合企業との製品化競争が一気に加速します。今回の動きによって日本の医療機器の事業態勢を加速させる布石になれば、朗報になります。
新エネルギー・産業技術総合開発機構と川崎重工業は、タイの商務省との共同国際プロジェクトによって、タイのチュラロンコン大学医学部内に臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」を設置し、10月から稼働させるという専門家向けの発表がありました。
かなり戦略的・戦術的に先行する布石だけに、再生・細胞医療分野の関係者などにしか、その重要性が伝わらなかった様子です。
今年6月にiPS細胞(人工多能性幹細胞)を利用する再生医療が、加齢黄斑変性という目の難病から始まることになったというニュースが大々的に報道され、再生医療が注目されました。
iPS細胞による初の臨床研究計画を審議する厚生労働省の審査委員会は、理化学研究所から申請された加齢黄斑変性のiPS細胞による初の臨床研究での治療にOKを出したとのニュースです。加齢黄斑変性に続き、パーキンソン病や脊髄(せきずい)損傷などのさまざまな病気について臨床応用を目指す研究が進む契機を迎えたと報道されました。
今回の理化学研究所が実施するから加齢黄斑変性のiPS細胞による初の臨床研究に用いられるiPS細胞は、高度な専門家が対象のiPS細胞を手培養によって作成します。始まったばかりのiPS細胞による臨床研究の段階であるために、当然の対応・段階です。
このiPS細胞による臨床研究が成功し、目の難病の加齢黄斑変性の治療に活路が見いだされると、次は多くの対象患者にどうやって治療を実施するかという“普遍化”に進みます。法的な整備やその治療費の負担をどう少なくするかという次の課題を解決する段階に入ります。
再生・細胞医療の臨床応用は、当該患者から採取した対象細胞を培養した後に、当該患者の患部に移植します。現在は、iPS細胞を利用しない研究段階にある場合でも、ほとんど実施例ないために、対象細胞の培養は、専門施設での熟練技術者による“手培養”に留まっています。
“手培養”による操作を行う細胞培養施設(CPC)は「施設・設備の初期投資だけで数億円かかる」との試算です。培養する細胞に、他の細胞や細菌、ウイルスなどが入らないように、高度なクリーンルームにする必要があるからです。さらに、手作業による細胞培養のために、熟練技術者が必要になり、「労務費を含めたランニングコストは1年当たり数1000万円かかる見通し」と、専門家は試算します。
手作業による職人的熟練作業を置き換える“工業化”が当然、次に検討されています。“クリーン”ロボットなどによる細胞培養です。工業化による品質管理が可能になれば、細胞培養のコストも下がり、再生・細胞医療の臨床応用(さらにその将来は治療)が“一般的”になります(まだかなり先の話です)。
今回、「川重が開発した臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」をタイのチュラロンコン大学医学部内に設置し、「10月から実証実験を始める」との発表はその始まりの第一歩のようなものです。再生・細胞医療分野での先行的な布石です。
日本の大手企業数社は、有力大学などと共同で、臨床用の細胞自動培養システムの研究・開発を進めています。その臨床応用には、まだ課題が山積しています。しかし、この難問を一つひとつクリアできれば、将来は臨床用の細胞自動培養システム装置は、日本が得意とする医療機器製品に成長する可能性があります。
今回、川崎重工業が発表した臨床用の細胞自動培養システム「R-CPX」は、装置内部の中央に2台の垂直多関節型“クリーン”ロボットがレール上を動く仕組みです。このロボットが細胞培養の容器を培養室から取り出し、培養容器の古くなった培地(培養液)を交換するなどの操作を担当します。2台のロボットは、培養容器のキャップを開ける操作などに協調動作をします。また、培養された細胞の品質をCCDカメラなどで確認する機能を備えています。
2台の“クリーン”ロボットは「システム内を除染する過酸化水素蒸気(H2O2)によって腐食しないように、アームカバーやシールに高耐食性の材料を採用するなどの工夫を凝らしてある」そうです。
将来、再生・細胞医療の臨床応用の“産業化”が急速に進み始めた時には、欧米などの競合企業との製品化競争が一気に加速します。今回の動きによって日本の医療機器の事業態勢を加速させる布石になれば、朗報になります。