国語教師でありながら、基本的なことがわかっていなかったと反省させられることばかりです。
そのひとつ「鈍色(にびいろ)」。この言葉を今日までしりませんでした。これは平安時代に使われていた色の表現です。今でいえば灰色のことで、今の灰色も黒ではなく、白でもない色の広い範囲で用いられるますが、この鈍色も同じようです。「黒でも白でもない鈍い色」ということなのでしょう。喪服で用いられたようです。
日本国語大辞典での説明は次の通りです。
にびいろ
〘名〙
① 薄黒い色。灰色。にびいろ。にぶいろ。どんしょく。
※醍醐寺新要録(1620)「僧正香也。法印以下有職至悉白色也。鈍色にふいろ訓。凡黒色事歟。雖レ然、黒色未二見及一。又旧記無レ之」
② 法衣(ほうえ)の一種。袍服と同じく上衣(袍(ほう))とはかま(裙(くん))と帯の三つから成るが、袍服が袷(あわせ)であるのに対して、単衣(ひとえ)である。無紋の絹の良質なもので仕立て、僧綱領(そうごうえり)を立てる。鈍色の衣。〔左経記‐長元八年(1035)三月二七日〕
この「鈍色」を源氏物語の「葵」の帖で見つけました。葵の上が亡くなり、喪中の源氏が鈍色の服をきています。そこへ六条の御息所が手紙をよこします。その中の和歌。
限りあれば薄墨衣浅けれど涙ぞ袖をふちとなしける
(薄墨色の喪服を着ているが、悲しみの涙で袖が染まり、深い淵の濃い墨色になってしまいますよ。)
鈍色も色の範囲が黒から白までの広い範囲であったころがわかります。
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