とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

劇評『お蘭、登場』(7月16日 シアタートラム)

2018-07-25 15:02:03 | 演劇
作  北村想
演出 寺十吾
出演 堤真一
   小泉今日子
   高橋克実

 北村想は私が30年以上前、一番好きだった劇作家である。とてもいい加減で力が抜けるような脚本に、アドリブだらけのどうでもいい場面が潜り込み、客席からものが飛んできそうなのだが、何かが後に残っている。不思議な作品を数多くつくっていた。今回の作品は往年のそんな作品がよみがえってきた。堤真一と高橋克実のからみは、伊澤勉と小林正和のからみを思い出させた。おもしろかった。

 この作品の中で、こんな内容のセリフが出てくる。
「自殺者数について、ここ10年、連続3万人超とマスコミでも報じられているが、日本には年間15万人ほどの変死者がいる。WHO基準ではその半分を自殺者としてカウントするので、世界基準でいう自殺者数は、3万人+15万の半数で本当は11万人ということになる。」

 「死」は江戸川乱歩のすぐ近くをぐるぐると回っている。乱歩の小説の魅力は見世物小屋に漂う「死」のにおいだ。うさん臭さと「死」がそこには漂っているのだ。

 いい加減でありながら、実はいい加減ではない。そんな不思議な作品だった。

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