杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

『カミハテ商店』主演の高橋惠子さん来静!

2013-01-03 20:01:56 | 映画

 今年は時間とココロにゆとりがなくて、年賀状を出せませんでした。絵は素人ですが線画のイラスト年賀状を毎年描いています。やっぱりそれなりに気合が入らないと描けないんですよね・・・。私宛ての年賀状に「毎年イラストを楽しみにしています」とメッセージを添えてくださった方には申し訳なく思います。2月の立春の頃までには何か描こうと思っていますので、お待ちください。

 とりあえず過去のイラストですが、今の心境に近いものです。

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 さて、いただいた年賀状の中に、山本起也監督から、5日に静岡で公開初日を迎える『カミハテ商店』の案内がありました。主演の高橋惠子さんの舞台挨拶が急遽決まったみたいです。お時間のある方はぜひ会場へお運びください。私は6日に行く予定です。

 

 

『カミハテ商店』公開記念3日間連続舞台挨拶イベント(詳しくはこちらを)

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◇日時 1月5日(土)・6日(日)・7日(月)

 

◇会場 サールナートホール1階大ホール(サイトはこちら

 

◇5日(土)のゲスト/12時15分の回上映終了後・・・高橋惠子(主演)、山本起也(監督)、小澤吉徳さん(司法書士・山本監督の静高同級生)の講話「自殺というモチーフについて」、

 

16時50分の回上映終了後・・・谷川賢作さん(山本作品の音楽担当)のミニライブ

 

◇6日(日)のゲスト/12時15分の回上映終了後・・・高橋惠子(主演)、あがた森魚(ミュージシャン・出演)、平岡美保(出演)、ぎぃ子(出演)、大西礼芳(出演)、山本起也(監督)

 

◇7日(月)/12時15分の回上映終了後・・・山本起也監督の『ツヒノスミカ』ダイジェスト版特別上映


『ホビット』で最先端映像体験

2012-12-21 11:12:31 | 映画

 私が大好きな『ロード・オブ・ザ・リング(以下LOTR)』シリーズの最新作・『ホビット~思いがけない冒険』の公開が始まりました。

 

 10年前にLOTR(第1部・旅の仲間)が公開されたときは、ちょうどハリーポッターシリーズと時期が重なっていて、英国産ファンタジー便乗作品&「指輪物語」って名前は知ってるけど読んだことないからこの際知っておくのも損はないか…ぐらいの軽い認識で観に行ったんですが、その完成度の高さに驚き、ハリウッドのビッグネームではないニュージーランドの監督&スタッフの制作と知って興味が沸き、それから第2部二つの塔、第3部王の帰還と、ドラマが進むに連れてどんどん作品にのめり込んでいきました。

 

 

 さらに、制作秘話が紹介されたDVD特典映像を見て、映画作りにかける監督&スタッフの熱意と、まるで学生仲間で自主映画を創っているようなノリのよさ、NZクリエイターたちの気負いのない純粋な姿勢に感動しました。このことは、当時、しずおか地酒研究会の会報誌で何度も書いて、モノをつくるひと・支えるひとの信頼関係の大切さを訴えたものです。「真弓さんがそんなに褒めるなら」と観に行ってくれた地酒研会員さんもいたようです。

 

 

 『王の帰還』がファンタジー映画としては前代未聞のアカデミー作品賞&監督賞ふくめ11冠に輝き、ピータージャクソン(PJ)監督もすっかりハリウッドメジャーとなり、LOTRに熱くなった時代も遠くなりにけり・・・と思っていたころ、指輪物語の前章にあたる『ホビット』が、PJのプロデュース、ギルレモ・デル・トロ監督(「ヘルボーイ」「パンズ・ラビリンス」)で映画化されるというニュース。ハリーポッターや007シリーズも監督がそのつど変わったりするから、シリーズものの製作では珍しくないかもしれないけど、PJとその仲間たちが創り出したLOTRシリーズの世界観とは変わるかも、と思ったら少しさびしい気もしました。

 

 オーディションで選ばれたという主役ビルボ役のマーティン・フリーマンも、LOTRシリーズのいかにもファンタジーの主人公たる童顔美青年イライジャ・ウッドとはまったく違うおっさんタイプ(笑)。その後、なんやかんやで製作が遅れ、結局、PJがメジャーになりすぎていろんなしがらみが出来て、純粋な映画づくりが出来なくなっちゃったんだろうと半ば諦めていたところ、PJが自らメガホンを取って2011年からクランクインするというファンにとっては願ってもないニュース! 

 

 マーティン・フリーマンはこの間、英BBC『シャーロック』のワトソン役で英国ドラマアカデミー賞なんか取ったりして、私も『シャーロック』を通して初めて彼の演技を知ることに。彼は、『シャーロック2』の撮影と調整がつかなくなって、泣く泣くビルボ役を降りることになったのですが、その後、PJが『シャーロック』を見て、「彼がワトソンではなくビルボに見えた」そうで、やっぱり彼しかいない、ということで、ホビットの撮影スケジュールを彼に合わせてずらしたんだそうです。

 

 ・・・自分も今ハマっている『シャーロック』を、自分がハマった映画の監督が同じようにハマったなんて、なんだかウキウキしてきますね。ちなみにシャーロック役のベネディクト・カンバーバッチも、『ホビット』に出演しています。声の出演&モーションキャプチャーでの悪役なので顔はわからないけど。

 ちなみにちなみに、『シャーロック』は新年早々NHKで再放送されますので、観てない方はぜひ!(こちらを)。

 

 

 

 そんなこんなで、12月14日、待望の『ホビット』公開初日。妹夫婦を誘って新静岡セノバのシネシティザートで観に行きました。最初にタイトルが出てきたとき、LOTRのタイトルロゴと同じ書体だったのにまず感動し、舞台となった“中つ国”が3Dの世界になったことだけで涙が出そうになり、ストーリー展開が、LOTRの第1部旅の仲間と同じように構成されていて、「ああ、10年ぶりにLOTRの世界に還ってこれたんだ」としみじみ嬉しくなりました。

 

 妹夫婦はLOTRシリーズを観ていないので、単に話題の作品を話のネタに観たって感じでしょうか、エンドロールのクレジットが流れ始めたら早々に退席。私もしぶしぶ一緒に退席しました(もちろん後日改めて一人でゆっくり見直すつもりで)。

 エンドロールのクレジットって、映像を作った経験のある人なら解ってくれると思いますが、本当に、映画というのは機械が造るんじゃなくて、一人ひとりの力が結集して生み出されたものだって実感させられるんですね。

 

 

 3D字幕版は、いつもかける近視用メガネの上に3Dメガネを二重にかける苦痛と、字幕が浮き上がって邪魔になるという難点もあります。見終わった後は、やっぱり疲れるんですね。できたら今度は吹替え版で観ようと思ったところ、ファンサイトをのぞいたら、『ホビット』は世界で初めて、HFR(ハイフレームレート)3Dという最先端映写技術で撮られていて、HFR3Dが上映できる映画館は限られていると知りました。

 

 フレームとは、映写機が1秒に映写できるコマ数のことで、現在の映画館の標準は毎秒24フレームですが、HFRはその2倍の48フレームで撮影・映写できる技術。人間が1秒間に目視できるフレームの上限は55フレームだそうで、人間が生で視たものにより近くなる、というわけです。

 

 

 PJはインタビューで、

「最近ではiPhoneやiPadなどで映画が簡単に見られるので、映画館へ行く理由を作るのが難しいということがある。『ホビット』のような大作を最新のテクノロジーを使って映画館で見てもらいたいという思いから、HFR3Dを採用した」

「観客が前のめりになるようなものを作り、映画の冒険に引き込みたい。きっと今までの映画とはかなり違う感覚で見ることになると思う。映画館が本来提供するべき、どっぷり浸かれるような豪華な体験を実現するべく、フィルムメーカーが最新の技術を使うのは非常に大事なこと。今は映画館が面白い時代だと思う」

と言っています。

 

 こういう記事を読んじゃうと、どうしてもHFR3Dが観たくなっちゃうじゃないですか。でも調べたら、HFRで上映しているのは全国で33館のみ。静岡県ではゼロです。遠出して観に行ける時間は年内は作れないし、かといって限定上映だから気がついたら終わっていたなんて可能性もあるし・・・とジレンマに。

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、20日、沼津での取材が16時ごろ終わったあと、思い立って、貴重なHFR上映館の一つ・藤沢の109シネマズ湘南まで車を飛ばして観に行きました!ここでは、IMAXシアターでのHFR3D上映という、全国でも7館のみの、世界最高峰の映像体験ができるのです。

 

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  IMAXシアターって、よく博覧会の企業パビリオンなんかで、宇宙とか大自然なんかの大迫力映像をちらっと見たことはありますが、映画を丸々1本観るのは初めて。しかもHFRという直接ナマで視た感覚にもっとも近いフレーム。俳優さんの肌の毛穴までクッキリ見えるし、すぐ目の前に居るような錯覚だし、岩と岩の隙間深く落ちていくシーンなんてマジで自分が落ちていくみたい。・・・なんともいえないビックリ体験でした。

 ちょっと不謹慎かもしれないけど、この映像技術で地震や津波等の訓練映像を作ったら、たとえば自衛隊や消防や警察関係者にとってはホントに実践さながらの机上訓練が出来るんじゃないかと思ったくらい。実際、パイロットの訓練ビデオなんかにはあるのかなあ。

 

 

 

 それはともかく、前回と同じように3D字幕版で観たのですが、前回のような疲労感はさほど感じませんでした。フツウの3Dだと、知らず知らずに細かなちらつきやブレを感じるんですね。今回は字幕に多少ブレがあったくらいで、映像は素晴らしいの一語に尽きます。観客に、直接ナマの中つ国に入り込んだような世界観を体験させるということは、創り手のほうも、いいかげんなものは創れないってことですよね。ファンタジー実写作品でそれに挑戦したPJの勇気とクリエイター魂に、惜しみない拍手を送りたいと思います。LOTRから10年経っても少しも変わらない映画作りへの情熱、とても嬉しかったし、大いに刺激をもらいました。

 

 

 

 エンドロールもほとんどのお客さんが最後まで席を立たず観ていました。終了したのは23時前。朝型人間の私はいつもなら布団に入る時間ですが、車で2時間30分かかって静岡まで戻りました。さすがに疲れたけど、心地よい疲労感です。

 

 

 次は、フツウに2D吹替えで、物語をじっくり楽しみましょうか。

 

 

 


祝!『カミハテ商店』静岡公開

2012-11-30 10:27:46 | 映画

 当ブログでも再三ご紹介した山本起也監督の『カミハテ商店』が、12月2日(日)、JR静岡駅前の静岡シネギャラリー・サールナートホールにて特別先行上映されます。年明け1月5日から静岡シネギャラリーにて公開になります。

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『カミハテ商店』特別先行上映会 (くわしくはこちら

◇場所  静岡シネギャラリー(サールナートホール) JR静岡駅前

◇時間  10時・13時・15時30分・18時35分

◇毎回舞台挨拶あり/山本起也(監督・脚本)、高橋伴明(プロデューサー)、水上竜土(脚本・出演) 

 

 

 私はすでに東京で観ており、今週末は京都に行くので2日の上映会は行けませんが、山本監督から送っていただいた資料の中で、惹かれた部分をご紹介します。2日は4回上映されますので、ぜひご都合のいい時間にお運びください! 

 

『カミハテ商店』山本起也監督インタビュー

 

■映画の立ち上がり

 2009年、私が専任を務めている京都造形芸術大学映画学科“北白川派”第3弾(注)をやらないかというお話を、現学科長の高橋伴明監督からいただきました。(中略)伴明監督から、学生が授業の中で書いた映画の企画を何本か渡されました。そこで一番気になったのが、日當遥と山口奈都美という2人の学生が書いたオリジナルストーリー『カミハテ商店』でした。

 隠れ自殺の名所となった断崖の近くで、寂れた商店を営むひとりの老女。訪れた自殺者は何故か商店に立ち寄り、アンパンと牛乳を買い求めます。しかし老女は自殺者を引き止める訳でもなく、ただ見送ります。しかも、翌朝断崖に行き、自殺者が残した靴を回収して来るのです。

 2人の学生が生み出した、千代という名の奇妙な老女に、私は何故か強く魅かれました。また、そこに込められた“人間はちょっとした人と人との心のつながりで変わる”というテーマに共感したのです。

 まず2010年2月に学生参加型のシナリオ合宿をやりました。そこで出た学生のアイディアを取り入れたり、共同脚本の水上竜土さんとも相談しながら脚本を煮詰めていきました。脚本と平行しながら撮影の準備を行い、2011年2月に撮影を開始しました。

 

 

■映画に描かれる自殺について

 脚本を作成している段階でさまざまなリサーチを行いました。中でも福井県・東尋坊で自殺防止活動をされている茂幸雄さんのお話は、映画に登場する人物の心理を描く上でとても参考になりました。

 いっぽうで、自殺者がなぜ自殺をするのか、その心理を追及することを作品の核とするのはやめました。むしろ、生きることについての映画を作りたいと考えました。何かをあきらめたり絶望している人間が、その人にとっての神様に出会い、変わってゆく。そんな話を作りたかったのです。『カミハテ商店』は、この映画をご覧になるひとりひとりの心の中にあるのだと思います。そういう意味では、この映画はファンタジーなのかもしれません。

 

 

■ヒロイン千代について

 千代はトルストイの短編『Where Love is,There is God.(愛あるところに神はまします)』の中に出てくるお話「靴屋のマルティン」の主人公を参考にしました。靴屋のマルティンが、日常生活の中でむしろ蔑んだり見下している人間こそが自分の神様だったと気づくお話です。千代にとっての神様は、牛乳配達の青年だったり、無口なバスの運転手だったと思います。企画のテーマである“ちょっとした心のつながりで人は変わる”ということを、自分なりにそのように解釈した、というわけです。

 

 

 なお、(注)北白川派とは、映画を通して新たな芸術運動の狼煙を上げるため、京都造形芸術大学映画学科から立ち上がったプロジェクト。学科が一丸となり、その全機能を駆使しながらプロと学生が共同で毎年1本の劇場公開作品を完成させ、発表していくものです。第2弾作品からは学生が配給・宣伝にも参加しているそうです。

 

●第1弾 『黄金花 秘すれば花 死すれば蝶』(08年公開) 木村威夫監督、原田芳雄・松坂慶子主演

●第2弾 『MADE IN JAPAN こらッ』(11年公開) 高橋伴明監督、松田美由紀主演

●第3弾 『カミハテ商店』(12年公開) 山本起也監督、高橋惠子・寺島進主演

●第4弾 『弥勒』(13年公開予定) 林海象監督、永瀬正敏・井浦新主演

●第5弾 福岡芳穂監督作品(14年公開予定)企画進行中


『アルゴ』を観て

2012-11-01 08:58:50 | 映画

 

 昨日は渋谷で取材があり、終わった後、話題の映画『アルゴ』を観ました。いやぁ~面白かった!!1979年に起きたイランの米大使館人質事件のとき、大使館から脱出してカナダ大使私邸に潜伏していた6人の大使館員をイランから無事出国させるため、CIAの人質救出プロが、大使館員をハリウッドB級映画「アルゴ」のロケハンクルーに化けさせるという、映画みたいなホントの話。監督はベン・アフレック。『アルマゲドン』とか『パールハーバー』のイメージが強くて、盟友マット・デイモンに比べると俳優業のほうはB級っぽいと思っていた彼が、こんな凄腕を持っていたとは・・・!

 

 

 

 ハリウッドが大喜びしそうなこんな美味しい実話、今まで映画化されなかったのは、この作戦が18年間トップシークレットにされていたためだそうです。

 

 人質救出計画と聞けば、007のような高度な裏工作か、米軍特殊部隊の派手なドンパチなどを想像しますが、このお話には皆無。アメリカ人だとわかれば問答無用に攻撃対象とするイラン革命派のハンターのような目をくぐり、映画のロケハンに来たカナダ人ですよ~とだましとおし、空港から堂々と出国させるという作戦。バレたら最後、即処刑されるし、大使館に残った52人の人質の命運も尽きる。

 「アルゴ」の製作がイラン側にホンモノだと思わせるため、「猿の惑星」でアカデミー賞メイクアップ賞を受賞した特殊メイクアーティストたちの徹底した協力っぷりが面白おかしく、現地イランでは次から次へと難問噴出。土壇場でアメリカ本国からの協力の糸も断たれ、最後の最後、6人が乗った飛行機が無事飛び立ってイラン領空から離れるまで、本当にドキドキハラハラ・・・。

 

 

 

 実際は、イラン側が作戦を知って地団駄を踏んだのは後々の新聞報道だったそうで、ドキドキハラハラの演出はあくまでも映画として。そこがドキュメンタリー作品とは違うんでしょうけど、映画のトーンというのか色合いっていうのかな、79年から80年にかけての空気感を見事に再現していて、マジでドキュメントかと思わせるほど。それは単にセットや役者のファッションやメイクをその当時っぽくするだけでなく、ベン・アフレックはキャスティングでも実在の人物に似た俳優を厳選したとか。エンドロールで実在の大使館員さんと演じた役者さんの写真が並んで出てきたのですが、あまりの激似ぶりに笑ってしまうほどでした!

 

 

 日本でもいますよね、“昭和顔”っぽい役者さん(笑)。・・・でも、これが案外大きいファクターだと思う。邦画でも大学闘争やあさま山荘事件を扱った作品がありますが、違和感を感じることが多いのは、今どきの顔というか、現代の人気役者を使うからなんですよねえ。人気者を使わなければスポンサーがつかない、話題にならない、観客動員にもつながらない・・・のかもしれないけど、『アルゴ』では、監督主演のベン・アフレック以外に日本でもすぐに顔と名前が出てくる有名俳優とかは出てなくて、本当に作品の質だけで勝負!って感じが好ましい。ハリウッド側の協力者コンビを絶妙に演じたジョン・グッドマンとアラン・アーキンの演技が高評価ですが、私はCIAの上司役を演じたブライアン・クランストンがよかったなあ。この作品で初めて知った役者さんだけど。

 

 

 

 

 

 

 題材自体が魅力的だから、監督によっては徹底したドキュメントタッチにもできるし、コメディにもできる。スピルバーグとかスコセッシとかソダーバーグあたりが撮っていたら、もっと話題になっていたかもしれません。でも難しい政治背景があって、当事者も存命・・・という実話を取り上げる上でベン・アフレックが取った手法は、フィルムメーカーとしてとても誠実で、役者やスタッフのスキルを信じて創り上げたと感じられました。彼はひょっとしたらクリント・イーストウッドのように、役者よりも監督として後世に名を残すかもしれませんね。

 

 

 

 こんな面白い作品、静岡の映画館はなぜすぐに買わなかったんだろう。早く公開されるといいんですが・・・。

 

 


私的映画寸評2012夏

2012-09-13 21:52:09 | 映画

 少しヘビーな記事が続いたので、今日は好き勝手に映画の話をします。先取りネタもあるので、ネタバレ注意で読んでください。

 

 

 アメリカ旅行中、サンタフェのシネコンで公開されたばかりの『ボーン・レガシー』を観ました。

 ボーンシリーズ3作はお気に入りのシリーズで、とくに2作目・3作目のポール・グリーングラス監督作品は手持ちカメラのスピーディーかつリアル感たっぷりの映像が魅力。ヨーロッパや北アフリカが舞台なので、風景もお洒落で品がよかったですね。

 4作目のボーン・レガシーは、前3作の脚本家だったトニー・ギルロイがメガホンを取って、主人公がマット・デイモンからジェレミー・レナーに替わりました。字幕ナシで観たのでちょっと判りにくいところもありましたが、字幕ナシでも大筋解るってことは、脚本家出身の監督でプロットを丁寧に組んで構成しているということでしょうね。でもその分、映像の迫力や面白みには欠け、舞台はアメリカだし、なんとなく、他のハリウッド産スパイアクション映画と似たかよったかになった感じ。ヒロイン役、せっかくレイチェル・ワイズが演じるならキャラ造形にもうひとひねりあればなあと思いました。

 

 

 

 ちなみに今年、これまで観たスパイ映画の中では、『裏切りのサーカス』が秀逸でした(こちらで紹介)。字幕付きで観たけど、見逃したところがあったかも・・・と焦らせるほど複雑で奥深い作品(で、しっかりDVD予約しました)。これと『ボーンレガシー』を比べるのは無謀かもしれないけど、「わかりやすいけど忘れやすい映画」と「わかりにくけど心に残る映画」の違いを実感しました。

 

 

 

 

 

 アメリカから帰る飛行機は、エコノミーのど真ん中の席で、両側を白人のごっつい男性にガードされてしまったので、13時間、ほとんど身動きできず。ボーイング777型でエコノミーでも個別スクリーンが使えたので、映画を6本も続けてみるハメに(苦笑)。

 

 

 『アベンジャーズ』は現在日本でも公開中ですね。機内で観たのは字幕ナシだったけど、予定調和の内容なので、あらすじを気にせず、リラックスして観られました。ジェレミー・レナーがこっちではホークアイ役を演じていました。彼はせっかくアカデミー作品賞『ハート・ロッカー』で渋い演技を見せたのに、このままアクションスター街道を突き進むのでしょうか・・・?というか、ロバート・ダウニー・Jrも完全にアクションスター化しちゃったんですねえ・・・。

 

 

 

 日本語吹き替え版で配信されていた『ミラー・ミラー』は、ジュリア・ロバーツが白雪姫のいじわる継母役で出演のコメディ。日本では『白雪姫と鏡の女王』という邦題みたいです。白雪姫と継母が王子をめぐって恋のバトルをし、王子が薬を飲まされておかしくなって、白雪姫がそれを助けるという、原作を逆転アレンジ?した内容。7人の小人を、村人から差別される障害者という設定にしたのは、なかなか深かったですね。

 

 

 日本の作品もいくつかリストにあり、前の席の人は『テルマエ・ロマエ』を観てくすくす笑いしてました。私は見逃していた数年前のチャン・イーモウ監督・高倉健主演の『単騎、千里を走る』という中国映画をセレクト。チャン・イーモウが高倉健のために撮ったプロモーションビデオじゃないかと思うぐらい、健さんらしさ全開でした(苦笑)。

 

 中国の地方の市井の人々の素朴でリアルな描き方(とくに子役の男の子は演技とは思えない!)は、さすがチャン・イーモウ。先日、NHKプロフェショナルの高倉健特集でこの映画のロケシーンが登場し、健さんが撮影終了時、中国スタッフと別れがたくて涙を見せていたのが印象的でした。

 

 

 

 3本ぶっつづけに観終わって、さすがに疲労困憊。仮眠しようと思ったら、隣の白人のおじさんが画面をあれこれいじりながら、“最近の映画は面白くない、何も観るものがない”ってな感じだったところ、『ゴットファーザー3部作』を見つけて嬉しそうに観始めて、イヤホーンから音が漏れてくるのになんとなくつられてしまい、私は私で、字幕ナシでも十分観られる大好きな『ロード・オブ・ザ・リング3部作』を観ることに。自宅にDVDもあるけど、3本続けて観るってなかなかできないし、年末には待望の『ホビット』シリーズが公開されるし、復習のつもりで楽しみました。改めて、これぞ私的に「わかりやすく、心にも残る傑作だ~」です。

 

 

 

 

 帰宅してから留守録してあった作品をチェックして、今、どっぷりハマっているのがNHKBSプレミアムで放送されたBBC制作のドラマ『シャーロック』。1話90分の3回シリーズで、1話1話が映画なみのスケールです。日本のテレビではヒットした刑事ものを、少しカネをかけて映画化したりしますが、まさにそれ以上のクオリティをテレビでちゃんと作ってる。さすがBBCが自国の伝説的ヒーローをドラマ化するとなれば、これだけのものを作ってくるんだなと思いました。

 

 最初、ワトソン役のマーティン・フリーマンが、『ホビット』シリーズの主人公ビルボを演じるからという理由で昨年のシーズン1から観ていたのですが、録画したシーズン2をよくよく観ると、シャーロック役のベネディクト・カンバーバッチが、『裏切りのサーカス』で二重スパイを探るシャープな調査員役で出ていたのに気づき、あまりのキャラの違い&シャーロックのハマリ役っぷりにビックリ。「この人、『裏切りの~』ではたしか低音の渋~い美声だったよなあ」と思い出して原語モードで観たら、よけいに観入ってしまいました。・・・これで英語を勉強しようかなと一瞬思いましたが、シャーロックの台詞のほとんどが機関銃のように早口で、あっけなく挫折(苦笑)。

 

 

 作品はコナン・ドイルが描いた世界をそのまんま現代に持ってきて、スマホやGPSなんかをうまく使いながらも、ホームズシリーズの細かな設定をきちんと踏襲しているそう。製作者コンビがシャーロックオタクで脚本も担当(うち1人はマイクロフト役で出演)しているからで、原作ファンもナットクだそうです。

 

 有名な原作を大胆にアレンジしながら、原作ファンもナットクさせる脚本に仕上げるってやりがいがある仕事だろうなあと、半ば羨望の思いで観ているうちに、どうしても原作を確認したくなって、小学6年生ぐらいのとき読んだっきりで記憶の遥か彼方にあったホームズシリーズを、今、ちょこちょこ読み返しています。今の推理小説やサスペンスドラマの作者が、ほとんど“聖典”にしたんだろうなあと思えるほど色褪せない作品群・・・。19世紀末に書いていたなんて、ホントすごい。

 

 今のところ、読み終わったのはドラマにもなった『緋色の研究』『バスカヴィル家の犬』『シャーロックホームズの思い出』。・・・詳しい方、他におススメがあったら教えてください。