杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

年賀状の見極め

2008-12-30 10:34:15 | 吟醸王国しずおか

 穏やかな年の瀬を迎えています。28日(日)夜に、同級生と今年最後の忘年会を開いて久々にカラオケを楽しんだ後、29日からはいつもどおりの仕事。ギリギリ刷り上がった年賀状を印刷所へ取りに行き、デザイナーさんから届いた吟醸王国しずおか映像製作委員会会報誌『杯が満ちるまでvol.4』をカメラマン成岡さんの会社へ届け、ふたたびお仕事。

 

 ちょうど県のSTOP温暖化アクションキャンペーン報告書の編集作業をしていたので、夜はNHKの環境番組を観ながら、自然エネルギー100%を実現しちゃうような国は、政治が、どこに集中的に資本投資すればいいのかしっかり見極め、思いきった決断ができたからなんだなぁと感心しました。

 

 

 今年は映画制作などでお世話になった人が多かったため、年賀状はいつもより若干多めに用意したのですが、誰に出す・出さないって見極めが難しいですよね。今年もらった年賀状を整理してみても、ホント、いろ~んな人がいます。

 

 たぶん1回名刺交換しただけなのに、先方の名刺交換リストか何かに私の名前と住所が保存されて自動的に年賀状のラベル印刷に回った…なんて人、こっちが先に出したから返してきたというような人、こっちが出していないのになぜか消印1月8日過ぎにくれた人、「来年からは年賀状を出しません」宣言した人も数人いました。

 出さない宣言をした人に出すのは迷惑かと思いつつも、本当にお世話になった人ならどうするか? メール賀状にした人に出すべきか?う~ん…。

 

 いろいろ考え出すと、だんだん出すのが面倒になって、や~めた、と言いたくなるんでしょう。年賀状交換というのは、無駄も多い、地球にあんまり優しくない風習かも。

 

 

 そうは言っても、元日の昼前ぐらいになると、自宅ポストに年賀状が入っているかどうか気になります。今年は何通来たかなぁとか、最近親しくなったばかりのあの人からは来ているかなぁとか、年に1度、年賀状でしか近況がわからないけど、20年30年とつながっている人もいます。

 自分にそんなワクワク感があるうちは、自分からもちゃんと出そうと思います。

 

 嬉しいことに、時々、「まゆみちゃんの手描きイラストの年賀状が毎年楽しみ」と言ってくれる人もいます。

 刷り上がったばかりの丑年の年賀状は、いつもの細かいペン画に比べたらちょっと手抜き感がありますが(…反省!)、私自身の今の心境を正直に描いたものです。

 

 いつも大みそかの夜、実家で紅白を観ながら充名書きをするので、元日には届きませんが(…反省×2)、お待ちくださいまし。

 

 吟醸王国しずおか映像製作委員会会員のみなさまには、年明けにお届けする第4号、読み手の苦労も考えず(苦笑)、桁外れの文字量でこの1年を振り返った渾身の報告レポートになっていますので、ぜひぜひお楽しみに!


酒粕で温まろう!

2008-12-27 15:57:03 | 地酒

 ゆうべ(26日)夜は浜松で、静岡県ニュービジネス協議会西部部会の望年会(忘年会)に参加し、本年度の静岡県ニュービジネス大賞を受賞したやまと興業㈱の小杉昌弘社長、花の舞酒造㈱の高田和夫社長はじめ、女性経営者、若手社員など元気な浜松の企業人たちと楽しいひとときを過ごしました。

 

Imgp0290  輸送用機械メーカーのやまと興業で受賞対象となったのは、同社のアイビーエックス事業部で手がけた新規事業。持ち前の超硬合金技術を、食品加工に応用し、超微粉末茶を開発したのです。抹茶のような粉末茶は、お茶の栄養をまるごと摂取できるとあって、さかんに作られていますが、機械メーカーさんが手がけるというのは画期的ですよね。しかもハンパな細かさじゃない。

 

 同社では、飲用だけでなく、花粉アレルギーに効くといわれる「べにふうき」を超微粉末にして立体型マスクに織り込み、今までにない防花粉効果を上げるなど、さまざまな製品に応用させています。

 花粉アレルギーの人は、正月明けぐらいから「べにふうき」を飲んで体質改善を図るほうがいいと聞きます。べにふうきはあくまでもお茶であって、飲めばすぐ効く薬じゃないんで、漢方のようにじっくり時間をかけて抗アレルギー体質に変えていくわけですね。

 粉末べにふうき&べにふうきマスク、花粉予防策を考えている人には、ぜひおススメ。静岡らしい焼酎を呑みたい左党の人には、花の舞の焼酎を微粉末茶で割ったお茶割りをおススメします!

 

 

 年末の忘年会がひと段落し、今日からは正月明け締め切りの原稿や編集作業のため、ほとんど自宅に缶詰めになります。合間を見て、「吟醸王国しずおか」のVチェックもしなければなりません。

 家にいて楽しめることといえば料理ぐらいでしょうか。といっても独り身の台所では作れる材料も調理器具も知れています。

 

 1年前にブログを書き始めて間もなく、集中したアクセスキーワードが「酒粕料理」で、最近になってまた増えてきました。やっぱり季節的に関心が高まるのでしょうか。

  急に寒くなったので、仕事の合間に飲むのもコーヒーではなく甘酒。今年の2~3月ぐらいに蔵元でいただいた吟醸酒粕を使っていますが、静岡の、ていねいに洗米され・長期低温熟成した醗酵もろみって、酒粕も本当に美味しい! 粕歩合(もろみを搾った後、粕にする割合)が6~7割近いのですから、静岡吟醸の酒粕は、酒並みに高付加価値なんです。

 約1年経って、香りは落ち着きましたが、味はほどよくまろやかになり、甘酒にすると、ビターチョコレートのような大人の甘さ&フレーバーになります。年明けにいい吟醸粕が入手できたら、少し熟成させてみるのも面白いですよ。

 

 時々参考にしている日本酒造組合中央会の冊子「日本酒読本」(平成8年発行)に、料理研究家鈴木博子さん監修による料理レシピが載っています。実際作ってみたことがあるレシピを紹介しておきます。オーソドックスでシンプルなメニューですから、作ったことがある人も多いと思います。

 酒と同様、酒粕もたくさん消費してくださいね!

 

 

 

◆酒粕酢味噌(材料は2人分)

①ボールに酒粕20g、西京味噌25g、辛子小さじ2分の1を混ぜ合わせ、酢大さじ2で伸ばす。

②塩、うまみ調味料で味を調える。

③サクラエビやシラスの釜上げ、ゆでたこ、あさりの酒蒸しなど、好みの魚貝類(火が通ったもの)を②であえる。

 

◆豚肉の酒粕煮(材料は2人分)

①鍋で水150ccを沸騰させ、豚ロース薄切り150gと生姜10gを入れ、アクをとる。

②酒粕60gに①の煮汁を少し加え、なめらかにのばしてから①の鍋に入れる。

③弱火で20分ぐらいコトコト煮て、しょうゆ大さじ1、砂糖大さじ1で味付けする。

④塩洗いしたわかめ15~20gを加えてサッと煮る。

⑤火を止め、わけぎをふり入れ、器に盛って練り辛子をのせて出来上がり。


ニッポンのモノづくりに勝機あり

2008-12-25 23:18:15 | 本と雑誌

 25日は県広報誌MYしずおかの知事対談取材。ホテルセンチュリー静岡で、石川知事、㈱木村鋳造所の木村博彦社長、協立電機㈱の西雅寛社長、國本工業㈱の國本幸孝社長が、不況の中でのモノづくりの未来について、興味深いお話をしました。経済音痴の私にも楽しめて、1万字近い原稿も数時間で書き上げることができ、こうしてブログで振り返る余裕も持てました。

 

 ホントはすぐにでも全文を紹介したいところですが、未発表の原稿を先方の許可なく勝手にアップするわけにはいかないので、発言者名は伏せ、印象に残ったコメントを私流にアレンジして紹介しますね。

 

 

 

 まず、今、マスコミがさかんに取り上げる派遣切りの問題。年末のこの時期、住まいも追われて気の毒な人にマスコミが同情的になり、それを受けて自治体もさまざまな支援策を取っています。

 でも、この時期、派遣切りに遭った人だけ優遇するというのはどうなんでしょう? 社長さんたち曰く、派遣労働者の中には、一流大学出で、いい職場を探そうと、あえて派遣という形態を選んだ人もいて、派遣先企業を“一時利用”している。中小零細企業では、こういう景気の中で、残業規制の厳しい正社員を何人も抱えることは不可能で、第一、正社員を雇いたくても来てくれない。足りない部分はどうしたって一時的に派遣を使わざるをえないのです。

 

 派遣というシステムが崩壊したら、日本の中小企業は成り立たなくなる。そういう実情をスルーして、政治家はマスコミ受けするような派遣切り対策を声高に言い、マスコミも派遣切りはけしからんと企業側を責める。もちろん理不尽な扱いを受けた人を救済する対策は必要ですが、どうも今のマスコミ報道は一方的な見方のような気がする…というのが、社長さんたちのホンネのようです。

 

 

 

 日本の産業界の大きな課題は、93年から02年までの“失われた10年”の後、03年以降の回復で、“考える”ことを鈍化させてしまったということです。

 

 モノづくりの技術は、20世紀初頭の未熟な時代に誰もが必死にもがき、20世紀前半でベーシックなものをほぼ創り上げた。後は生産性を上げれば豊かになるとわかって、途中から“考えなくなってしまった”んですね。

 

 量的拡大を良しとする社会は国境をなくし、グローバリゼーションの波を引き起こし、激しい競争を生み出し、日本は“失われた10年”に陥った。そのとき、技術者はリストラの嵐に見舞われた。

 今、従来の取引先からの受注が減ってしまったとしたら、スペックが異なる客でも、とにかく新規に開拓するしかありません。しかしこれはとても大変なことで、新しいお客さん個々にきめ細かく対応し、他社との差別化を図るには、高い技術と対応能力がどうしたって必要になる。これが、“考える”能力を鍛えるという。

 モノづくりというのは、技術者を育て、開発し、生産し、管理し、売っていく面倒な作業です。人材教育にまで手をかけようとすると必然的に重くなる。今のような情報化社会でスピード感が求められる中、身軽になれないというのは苦しいのですが、モノづくりにはそういった堅実さが求められます。

 

 21世紀は、成長の限界を意識せざるを得ない時代です。経済のパイに枠があるとしたら、差別化するしか生き残れません。差別化するには、技術力を担う技術者がリバイバルするしかない。スペックの異なるさまざまな企業と取引すると、必然的に技術者と技術管理者が求められます。技術者を大切にする時代に、確実にリバイバルすると、社長さんたちは言います。

 

 

 

 これは、私自身、酒造業の現場を通して実感していることですが、手作業のものは、量産できないので、生産管理が難しい。そこで、タイムカードを1分単位でチェックしてみたら、どこに無駄があるかが分かり、個人の能力にどうしたって差があるということに突き当たった。ベテランや名人と言われる職人ならまだしも、並の人間を、じゃあ、どうやって伸ばすか。

 

 

 ある会社では、作業ごとに標準時間を設定し、時間オーバーしたら再教育するようにした。自己流でやっている人には、合理的手法として評価されているやり方を試してもらった。しかも個人別のスキル度を、すべて貼り出した。「そんなことをして、社員のモチベーションが下がらないか」と周囲から心配されたが、なにも賃金評価のためではなく、チームプレーを円滑にするための取組みであり、彼のスキル度がどれくらいか、あらかじめ分かっていれば、前後の工程の人もやりやすくなるだろうし、「次はここまでスキル度を上げてみよう」と努力目標を立てやすくなる。

 結果として、その会社では130人がかりでやっていた仕事が60人でこなせるようになったそうです。

 

 

 

 日本のモノづくりは、生産技術と同様、生産管理技術にも高いものがあります。金融危機で足腰が弱まった海外企業に比べ、こういった強みを持つ日本企業には必ず復活できる力がある・・・原稿を書きながら、そんな、明るい気持ちになりました。

 

 

 ちなみに、3人の社長さんたちの紹介をカンタンにしておくと、木村さんは、鋳物という2千年の伝統と3K職種といわれるオールドビジネスの分野で、発泡スチロールで成型するという画期的な手法を取り入れ、この分野の世界的企業に。でも「木村鋳造所」というクラシックな社名は頑固に変えず、工場も海外には一切持たない主義。

 西さんはFAやIT技術で製造業の生産管理を飛躍的に向上させた静岡を代表するベンチャーの雄。会社そのものは創業50年経ちますが、古い体質から脱却し、経営革新を次々と実践して見せた人です。

 國本さんは自動車やオートバイに使われる金属パイプメーカーで、独自のプレス加工で軽量・低コスト化を実現し、トヨタの目にとまり、部品サプライヤーを通さず、直接取引が始まり、最高級車レクサスLSに搭載されたシンデレラカンパニー。

 

 

 

 モノづくりでしっかりとしたポジションを持ち、技術者を大切にする中小企業の社長さんたちの元気さは、景気の悪さなんてカンケイなく、「小さなメーカーにとって今はむしろ、いい人材発掘や投資ができる絶好のチャンス」と意欲満々でした!


記憶に残る忘年会

2008-12-24 11:09:23 | アート・文化

 21日夜の天晴れ門前塾第2回ゼミ&吟醸王国しずおか映像製作委員会忘年会で、地酒のおかげで人生が豊かになった記憶をまた一つ増やしたところで、翌22~23日と京都・奈良へ。このところ、毎年のように年末は、やっぱり日本の記憶の魂みたいな場所で、日本人たる我が身を自覚して一年を終える作業をしています。紅葉シーズンやお正月は人が多くてたまりませんが、この時期は穴場なんですよね。

 

 22日昼は、奈良に嫁いだ高校の同級生&愛娘母子と、祇園おくむらでランチ忘年会。産まれた頃から知っている愛娘(14歳)は、モデルばりの美少女に成長し、しかも小学校からイギリスの全寮制校へ単身留学中。「向こうの学校って、ハリー・ポッターの魔法学校みたいなところ?」とおばさんトーン(苦笑)で訊くと、ホントにあのまんまらしくて、寮の競争意識もすごいらしい! ちなみに、その学校にはハリー・ポッターの代わりにミスター・ビーンがいるそうです(ミスター・ビーンを演じる俳優ローワン・アトキンソンの娘と同級生で、保護者会によく来るそうな)。

 

 イギリス話や故郷静岡の話で盛り上がったところで帰り支度をしていたら、若い料理人が「静岡からお越しですか?僕、沼津出身です」と声をかけてきました。聞けば東京農大出身で、サラリーマンから転身して料理の世界へ飛び込み、京都で修業し、いずれは故郷で独立したいとか。名前を聞くのを忘れてしまいましたが、農大OBなら静岡の蔵元もたくさんいるので、独立の暁にはぜひ静岡の酒を扱ってほしいなぁ!

  

 ちなみに、おくむらの料理はセンスの良いフレンチ懐石で、量もほどよく、白ワインも料理によく合い、疲れた胃や肝臓にはありがたかったです。

 

 

 夜は、奈良町の割烹恵方で、雑誌「あかい奈良」の忘年会。今年は映画づくりに注力したので、あかい奈良の制作に関わることができず、申し訳なかったのですが、なぜか忘年会にはしっかり参加(笑)。

 

Imgp0278  しかも、中央公論社刊『東大寺』や講談社刊『やまとのかたち』『やまとのこころ』で知られる名写真家・井上博道さんのお隣に座らせていただき、師・入江泰吉氏の思い出話や、黒沢映画の解説などを間近にうかがうことができ、大感激!

 また、東映太秦村で数多くの名優のスチールを撮り続けてきた朝倉善彦さんと帰路をご一緒し、「最近は、画になる女優が少なくなった」なんてお話を聞けて、まさに記憶に残る忘年会となりました。

 

 「ヨーロッパの美術館や博物館で撮る石像彫刻と、日本の仏像とは、やっぱり違うし、相手を“仏像”ではなく、“ほとけさん”なんやと思えるときの写真も違う。奈良で生まれ育ったモンとしては、やっぱり“ほとけさん”と話しかけるような撮り方をせんならんし、観た人に“ほとけさんや”と感じてもらわんと」。

 

 井上さんのグラビア写真は、「あかい奈良」の目玉コーナーでもあります。このコーナーをパッと眼にして、一度でファンになり、定期購読者となり、ライターとしてボランティア参加するようになったぐらい。そのご本人と直接お会いでき、杯を交わせただけで、本当に幸せでした。

 

 奈良に嫁いだ同級生の夫(自営業)のもとには、銀行の高額預金者やゴルフ会員向けのセレブ御用達雑誌の取材が相次いで来るそうで、「インタビュアーに有名タレントが来るんだよ、それで掲載費をウン十万も要求される。同業者会の役員をしているから、仕方なく応じると、一度載ったら最後、似たような雑誌や広告メディアから次から次へと取材依頼が来て、断るのがタイヘン」と彼女。

 

 そんな雑誌がある一方で、あかい奈良のように、一流のカメラマンや新聞記者が、無償で記事や写真を提供し、心ある印刷会社がスポンサーなしで発行するような文化情報誌もあります。雑誌の作り方として、どちらに未来があるのか、わかりませんが、少なくともライターや写真家が「自分が関わった」と誇りに出来る雑誌に生き残ってほしいと切に願います。

 

 

 この夜もかなり酒量は進んだのに、翌23日朝、京都のビジネスホテルで目覚めたときは、気分爽快! 午前中は適当に飛び乗ったバスで、大原三千院まで小一時間、のんびり路線バスの旅を楽しみました。

 

 外の気温は3℃。冬の京都らしい底冷えがする中、バスの車窓からは三千院の修行僧が托鉢に歩いている姿が見えました。

 

Imgp0265  藤枝の石彫家・杉村孝さんのわらべ地蔵が、苔に包まれて静かに合掌する庭園・有清園は、人も少なく、往生極楽院の阿弥陀三尊を見上げるうちに、目がしらが熱くなってきました。とくに左右の観世音菩薩、勢至菩薩の慈悲深いお顔には、一年たまった心の垢がぬぐわれる思い…。絵葉書やパンフレットに載っている写真は、井上さんが言われるところの「仏像」ですが、眼の前の菩薩さまは、まさに、「ほとけさん」でした。

 

 

 つかのまの休日は、あっという間に終わり、年末年始、ほとんど休みなくお仕事モードに再突入です。今の時期、仕事があるだけでありがたいと思わないといけませんね。


クリスマス前夜の記憶

2008-12-23 23:57:58 | 吟醸王国しずおか

 クリスマス前夜、いかがお過ごしですか?

 

 私は、個人的には仏教や仏像が好きなんですが、ミッションスクールに通っていたのでクリスマスは真面目?に聖書読んだり讃美歌歌ったりしてました。高校時代は(優勝すると栄えあるクリスマス礼拝の合唱の舞台に立てる)クラス対抗讃美歌コンクールに燃え、うちのD組が優勝間違いなし!の下馬評だったのに、ライバルC組に負けてしまい、ピアノ伴奏者だった私は責任を感じ、指揮者&クラスメートと肩抱きあってワンワン泣いたり、なんて、スポ根青春ドラマみたいな思い出が甦ってきます。

 

 

 そんな初々しいクリスマスの思い出から、30年近い年月が経ち、今のこの時期といえば、飲み会飲み会また飲み会。今年はとくに多くて、酒の消費拡大に貢献できているとはいえ、胃と肝臓がヘロヘロで、昼に食べた大好きな京都のラーメン屋「第一旭」のスープの味がわからなくなっていてがく然…!マッサージ屋のお姉さんには「肝臓がコリコリでやばいですよ」とダメ出しをくらいました。気をつけてはいるんですが、この2日間、スルーできない美酒や楽しい仲間たちとの集いが続き、体調そっちのけで盛り上がってしまいました。

 

 

 一昨日(21日)は、昼間、中島屋ガーデンズ(静岡市駿河区)で、NPO法人活き生きネットワークのクリスマス&忘年会。100人以上集まっての歌ありクイズあり大道芸パフォーマンスありの楽しく健全なパーティーでした。小さな子どもや外国人留学生が主役で、酒をがぶ飲みするような参加者はいないので、私はビール2杯程度でおとなしくしてました。

 

 夜は、大学生が主役の天晴れ門前塾第2回課外ゼミ。前回、「吟醸王国しずおか」パイロット版を観たあと、「早くいろんな地酒の味見がしたいです」という学生たちの希望を汲み、今回は実習(試飲)です。といっても、ただ呑ませるだけじゃ芸がないので、呑み方・呑ませ方を口で説明するのではなく実践して見せる。それも、地酒を愛する大人たちがちゃんと見本を見せたいと思いました。

 

 Imgp0236 地酒に対して真っ白な状態の若者たちに、最初に伝えたいのは、カルチャースクールや資格取得のための講座などでよくやる、きき酒の解説や味の表現方法ではなく、地酒を体で感じるということ。そして、いい呑み方・幸せそうな呑み方をする大人を見て、酒っていいなって感じること。とにかく酒との出会いを愉しむ会にすることが、今回のテーマでした。

 

 そんなこんなで、急きょ、吟醸王国しずおか映像製作委員会のメンバーに声をかけ、忘年会を兼ねることにしたんですが、日にちが固まったのが1週間前だったので、集まったのは大人8人、学生4人。まぁ、考えようによっては連休はざまで、大人がよく8人も集まったと思うし、会場の地酒Barイーハトーヴォ(岡部町)の規模からして適正な人数でした。

 

 というのも、松下明弘さんが、喜久醉純米吟醸松下米50デビューの1999年ビンテージ、翌2000年ビンテージ、純米大吟醸松下米40の2000年ビンテージを持参してくれたから! 私も自宅冷蔵庫に何本かビンテージをストックしてますが、いつ開けるか、なかなか判断がつかないところ、さすがは変人・松下明弘! 地酒をまともに呑むのが初めてという学生に、惜しげもなく呑まImgp0242せてくれました。そのおこぼれにありつけた我ら酒呑みの喜びようといったら…。参加者が少なくてよかった~(笑)。

 99年モノは少し老香が来ていたものの、2000年モノはまったくブレのない輪郭がしっかりした酒。松下さん曰く「コメの出来の差」だそうで、99年(98酒造年度)は異常気象の影響で全般にコメが悪く、どの蔵元も苦労していたのを思い出します。10年経ってもなお、こうして酒にその影響が記憶されるんですね。2000年(99酒造年度)の完璧さと比較すると、いっそう解ります。これを最初に試すことができた学生は、なんて幸せなんでしょう!!しかも、松下さん本人の解説つき。

 

 

Imgp0245  思えば、私が最初に静岡吟醸に出会ったのは25歳のとき。最初に呑んだのが、今は磯自慢杜氏の多田信男さんが志太泉の杜氏だったときの、静岡酵母HD-1絶頂期の味でした。

 日本酒嫌いの人の多くが、最初に飲んだ酒がまずかった、飲まされた、いい思い出がないという話をするのに比べ、自分は幸せだなぁ、静岡酒ファンの中で自分が一番幸せなんじゃないかなぁと思っていたのに、松下米の99年・00年・08年をいっぺんに飲み比べできた学生たちは、私の幸せ度を超えたな、と思わず嫉妬しちゃいました。

 

Imgp0244  急な召集にもかかわらず快く応じてくださった日本銀行静岡支店長の武藤さんも、「実は喜久醉が一番好き、今日ほど幸せな夜はないねぇ」と終始、表情を崩しっぱなし。武藤さんは昨年、天晴れ門前塾の講師を務めた経緯もあり、今年度の担当学生たちが地酒ゼミを企画をしたことを頼もしく感じているようでした。

 他の吟醸王国しずおか映像製作委員会メンバーも「地酒に興味がある若者がいるってうれしいねぇ」「うちの子と同年だけど、みんな価値観がしっかりしていて頼もしい、うちの職場にスカウトしたいぐらい」「まさか今夜、松下さんと呑めるとは思わなかった、ラッキー」と喜んでくれました。

 

 Imgp0252 イーハトーヴォの店主後藤さんなんて、最後にバラの花束まで用意してくれちゃって、「こうして地酒応援団が増えていくのが幸せ」とご満悦。

 後藤さんには、6月の静岡伊勢丹吟醸bar出展を依頼し、こちらがさんざんお世話になったのに、今回も酒持ち込みをずうずうしくお願いし、申し訳ないぐらいです。

 

 

 オトナたちが、あまりにも今夜の酒に興奮し、幸せそうに呑むを見て、学生たちも、味がどうこういうよりも、「いい酒は、人を楽しくするものだ」「みんな、あんなにありがたがって呑むんだから、今夜の酒は並みの酒じゃないらしい」と感じてくれたと思います。「とりあえず参加してみて損はなかったかも」とね。講座みたいに知識を植え付けるよりも、こういう空気を体感してくれるほうが、大きいと思うんです、たぶん。

 

 少なくとも、彼らの中は、2008年のクリスマス前夜に、日本酒ばかりだけど楽しくていい出会いがあったという記憶が、確かに残ったはずだ、と思います。この夜呑んだ酒の本当の価値、松下さんはじめ出会った人たちのスゴさがわかるまで、まだまだ時間がかかるかもしれないけど。