山本起也監督の劇映画初監督作品『カミハテ商店』が、明日16日、渋谷ユーロスペースで完成披露試写会、11月10日から公開が決まりました。京都シネマでは11月24日から、静岡シネギャラリーでは12月2日に先行特別上映、1月5日から公開となります。
一緒に『朝鮮通信使~駿府発二十一世紀の使行録』を制作していた頃から、コアスタッフが「彼に劇映画を撮らせたい、撮ってもらいたい」と言っていたのをよく覚えています。私は映画監督と仕事をするのが初めてだったので、どういう人種かヒューマンウォッチングするのに手一杯でした(苦笑)が、現場での仕事ぶりはものすごくクレバーで手際がよかったのが印象的でした。映画監督って気難しい芸術家タイプが多いのかと思ってたので、映像現場を初めて体験する身としては救いでした。
一人でコツコツ作るドキュメンタリーと違って、劇映画はスタッフも俳優も関わる人数のケタが違います。監督には映画作りプラス現場の仕切り役としてのスキルも必要でしょう。現在、京都造形芸術大学で教鞭をとっている山本監督、学生からベテランスタッフまでどんなキャリアの人でもきちんと導くオーラがあるんだろうと思います。
ひるがえって、今の私は、『吟醸王国しずおか』の制作でいろんな人との摩擦を経験し、人を導くどころか、若干、人間不信に陥っている状態です。それもこれもすべて自分の準備の至らなさとプロジェクト推進能力の欠如に起因するもの。今頃になってアルバイトで資金稼ぎをせざるを得なくなった我が身を情けなく思う日々を過ごしています。
そんな中、先週の誕生日の日(10月11日)、心強い応援団のお一人・樹木医の塚本こなみ先生にお声掛けをしていただき、ホテルコンコルド浜松で100人近いお客様を前に、『吟醸王国しずおかパイロット版』の上映と地酒解説をする機会を得ました。
こなみ先生がプロデュースする遠州鉄道バンビツアー・こだわり紀行に、県内酒蔵を巡るツアー商品(こちらを参照)があり、バンビツアーファンのお客様にプレゼンする新商品発表会の”余興”に呼ばれたもの。『吟醸王国しずおか』の映像には、ツアー商品で訪問する県西部地区の蔵は登場しないので、私なんかが解説役でいいのか躊躇しましたが、知られざる酒蔵内部の心臓部を観ていただいたことは、日本酒の理解を多少は助けたのではと思っています。
上映後、お客様で来ていた某大学病院のお医者様から「今度、学会の集まりがあるんだが、あの映像を見せたい」と声をかけられました。「とくに若い人に見せたい、力のあるすばらしい映像だった。酒造りでさえあれだけ真摯に取り組むのだから、人の命を扱う者はもっと真摯になれと言いたい」と。日本酒ファンの集まりでもない会場で、こういう感想をいただけるとは、驚きの一言でした。
静岡県の吟醸酒の実力を伝えようと、試飲用に準備した一升瓶の『開運純米吟醸山田錦』と『國香純米吟醸中汲み』、これがまた、両方とも甲乙つけがたい、すばらしい酒でした。終了後に豆腐料理の名店「豆岡」でこなみ先生が誕生祝いをしてくださったとき、いただいた『磯自慢純米大吟醸常田』・・・これもとろけるような味わい。涙が出るほどでした。
静岡の酒を、いつ、何度味わっても感動できる自分を再認識できて、映画作りへの自信と使命をふたたび感じた、そんなところへ、前回の記事でもふれた朗読劇の感動と、山本監督から『カミハテ商店』公開日決定のお知らせメール。・・・とても勇気付けられました。
人を感動させ、行動をうながす力は、何かに向かって真摯に取り組む人の思いに他ならないんですね。情熱を保ち続けるのはとても難しいけれど、情熱を傾けられる対象を持っている・・・それだけでも意味ある人生なんだろうと思います。『カミハテ商店』は、自殺の名所を舞台にした人間ドラマのようですが、山本監督は、どんなメッセージを投げかけてくれるのでしょうか。