昨日(29日)はJA静岡経済連情報誌『スマイル』の取材で、牧之原市と浜松 市のガーベラ農家を訪ねました。ガーベラ。ほんとにカワイイお花ですよね。 平成19年の花き生産出荷統計によると、1位静岡(16億円)、2位福岡(9億)、3位千葉・愛知(5億)、5位茨城(2億)という順位。静岡県は文字通り“ガーベラ王国しずおか”です。
北海道のラベンダー畑や、富山のチューリップ畑のように、花と風景が一体となったような地域なら、イメージが湧きやすいんですが、ガーベラの場合はほとんどがハウス栽培なので、日本一と言われても静岡県のどこで育てているのか一般の人にはまったくわからないというのが残念。
でも、静岡って温暖で日照時間も長いので、ハウスで花を育てるには最適な場所。もともと南アフリカ原産のキク科植物であるガーベラは、15~25℃ぐらいの気温を好みます。冬でも氷点下にはめったにならない静岡では、燃料コストもさほどかからないのが利点。…冬場寒くならないため、冷蔵設備が必要だった酒造りとはエラい違いです。
ガーベラは定植してから3か月ぐらいで収穫できる花なので、ハウスを通年回転させることができます。花としてはバラやチューリップほどの“主役級”じゃないし、“旬”がないから特定の季節にガーッと売れるものでもなく、年間通してコツコツ育てるしかない。大儲けはできないかもしれないけれど、地道に頑張れば安定収入になると腹をくくった花農家が、ガーベラ専業で努力を積み重ね、結果として静岡県がダントツの日本一産地となりました。
主役級じゃないが質のいいものをコツコツ作って安定供給させるって、どことなく静岡県の県民性に合っているじゃないですか。恵まれた環境をちゃんと活かす努力をする人間がいてこその日本一なんですね。
ガーベラは日本に渡来して100年ぐらい。品種改良がしやすくて、日本国内には500種類ぐらい流通しているそうです。今まであんまり意識して見なかったけど、確かにガーベラって、色が豊富だし、カタチもシングル(一重)、セミダブル(半八重)、フルダブル(八重)、スパイダー(糸状花びら)など多種多様で す。基本カラーはピンク、イエロー、オレンジ、レッド、ホワイトで、中でも日本人に一番人気があるのが淡いピンク。日本人にとって、花の色といえばサクラが基準なんだそうです。なるほどね。
でも、ほとんどの品種はオランダがパテントを持っていて、勝手にブレンドして新種を作っても、親がどれかすぐ解ってしまうので、日本でオリジナルの品種を作るのはすごーく難しいらしい。で、日本国内で流通されているのも、ヨーロッパ人好みのヴィヴィットカラーが多いわけです。
昨日訪問した浜松PCガーベラでは、キリンビールのバイオ部門との共同研究でオリジナル品種『プチシリーズ』10種の開発に成功。牧之原市のJAハイナンガーベラ部会でも新種のジャイアントガーベラを作り始め、この秋正式デビューします。
浜松PCガーベラのリーダー鈴木誠さんは、手塩にかけたプチシリーズをは じめ、この地が日本一の産地であるガーベラの価値を多くの人に知らしめようと、異業種との協働イベントを仕掛けたり、地域の子どもたちを招いて花育活動をするなど、ガーベラ広報マンとして東奔西走の毎日。04年の浜名湖花博で、自信を持って展示したガーベラのディスプレイを、お客さんが「これ、何の花?」と指差し、ショックを受けたのがきっかけでした。日本郵便と組んで丸の内にガーベラポストを置いたり、カーディーラーと組んでガーベラでデコレーションしたワーゲン(左写真)で日本中をキャラバンして回ったり、結婚式で使う花の8割以上をガーベラにしてくれたら無料にするなど、大胆なPR戦略が話題を呼んでいます。
花農家とは思えない行動力だと感心したら、元は証券マンとか。これからの農業って、ホント、こういう外側の視点を上手に生かせばオモシロくなる!と実感します。
「花屋さんや経済連がイベントをやっても、そりゃ当り前の営業活動だろうということでメディアは取り上げてくれませんが、我々のような生産者がやると取材に来てくれて、ニュースになるんですよ」と鈴木さん。即座に、蔵元が手作りで企画運営する地酒まつりのことを思い出し、「ガーベラで酒樽、デコレーションしてみませんか?」「東京では毎年数百人規模の地酒まつりをやってますから、ガーベラ王国しずおかもアピールしてみませんか?」と取材そっちのけで提案してしまいました。地酒まつりとのコラボ、花のディスプレイができる人がいれば可能とのこと。今度の酒造組合の運営会議で提案してみようかなぁ…。
JAハイナンガーベラ部会の鈴木秀明会長は、実直な技術者タイプ。「ガーベラを多くの人に知ってもらう活動と、質のいいガーベラを安定供給させるための技術研鑚は、どちらも欠けてはいけない両輪。うちは小人数の生産者集団ですから、イベントや花育のような大がかりなマーケティング活動はできませんが、つねに市場から信頼される花を作り続けることを大切にしたい。コストパフォーマンスの高い質と量を確保できるよう、生産者一人ひとりの生産技術と経営能力を磨いています」と真摯に語ります。
ガーベラ王国しずおかを支える2人のスズキさんは、王国の大事な両輪であり、実に好対照のキャラ。特産品や名産品には、産みの苦しみ・育ての喜び・広がる楽しさを知るこういう人材が不可欠なんですね。
明日はガーベラ流通の実態取材で東京・大田市場や浦安の流通センターまで行ってきます!