じめじめした天気が続きます。先週末は自宅へこもって原稿執筆に専念し、週明けから行政関連の取材や打ち合わせに駆け回っていますが、この時期の行政機関への訪問ってツラいんです・・・。公共施設のオフィスってクールビズが徹底しているのか、蒸し暑くじめじめした外から入って来ても、ちっとも涼しくない(苦笑)。オフィス内にずっといる職員の人はみんな涼しい顔で仕事しているのに、私ひとり、暑い暑いとゆでダコみたいな顔で汗をぬぐっています。だからってクーラーの温度を下げてくれないのが、さすが行政(笑)。「そのうち慣れますよ」ってな顔です。
私も、自宅で仕事する時は扇風機しか回さず、我慢できない時は扇風機+クーラーを28℃のドライ設定でかける程度なので、たぶん外から来た人はイラっとするかもしれませんね。ほとんど独りで過ごす部屋ですから、これでも贅沢なぐらいですが、大勢の人が過ごすオフィスの28℃設定って業務に支障はないのかなぁ・・・。
それはさておき、昨日は静岡県NPO情報誌『ぱれっとコミュニケーション』の取材で、富士市のNPO法人東海道・吉原宿の代表佐野荘一さんにお会いしました。
多くの地方都市の商店街と同様、シャッター通り化が進展しつつある吉原商店街で、店主たちが中心となって立ち上がった地域活性化組織。空き店舗に吉原商業の高校生たちのチャレンジショップ「吉商本舗」や、就労支援施設やフェアトレード関連のショップを出店させたり、富士市市民活動センターコミュニティfの指定管理者として、センターを情報交流発信基地として機能させるなど、地元商店主による地に足のついた活動が注目され、このほど、経済産業省「新がんばる商店街77選」大臣表彰を受賞。高校生のチャレンジショップは5年も続いていて、一過性の話題で終わりがちなこの手のショップとしては異例の人気だそうです。
佐野さん(写真中央)は吉商本舗の成功を、「あくまでも高校のクラブ活動なので、卒業生と在校生、上級生と下級生の意識の差があるのは仕方ありませんが、5年も続くのはある意味ミラクル。この前の開店5周年は、大売り出しではなく、生徒たちが企画してゴミ拾い大会をやった。大人の商売人の感覚とは違っていて、とても斬新だった」と振り返ります。「大学4年になった吉商本舗1期生が、卒論に地域商店街を取り上げたと聞いて嬉しかった。こういうユニークな店や、地域コミュニティの場が出来たことで、今まで吉原を出店先に考えていなかった外部の商業者が、新規出店エリアとして選んでくれるようになったんですよ」。
商店街の地域活性化と聞くと、ひところは、イベントや夜店市等が主流で、いっとき、ワーッと盛り上がっても、そのパワーが定着せず、下火になっていったという例をよく聞きます。吉原商店街も、以前、ナイトバザールという夜店市を開催し、かなり話題になって、私も取材したことがあるんですが、やっぱりいっときのお祭りで終わってしまった。失礼な言い方かもしれませんが、商店街をダメにした張本人たちが、何かやろうとしたって、いいアイディアは出てこないでしょう(苦笑)。新しい血を入れ、循環させるしくみを作って、若者やヨソ者の発想やパワーを活用する・・・そんなしなやかさとしたたかさが必要だと気づいたのが、佐野さんたち一部の“はみだし店主”たちだった、というわけです。
コミュニティfには、コアなフリーペーパー・情報誌・パンフレット類が宝の山のように集まっていて、市民じゃなくても十分“目の保養”になります。富士には、遊び教育のスペシャリスト渡部達也さん、グラパ賞4冠のデザイナー鈴木雄一郎さん、起業お助けマンの小出宗昭さん、福祉有償運送サービスの先駆け・勝亦武司さんなど、子育てから働き世代~高齢者福祉までその道・その世代のトップランナーがそろっていることだし、人の活かし方によっては、人材が「人財」化する豊かな地域になるのでは、と期待しています。
次いで、静岡市清水区のNPO法人清水ネットを訪問しました。ここも東海道・吉原塾同様、市で運営する市民活動センターの指定管理者団体として、地域コミュニティの要づくりに尽力する組織です。
地域コミュニティの場というと身近なところでは公民館を思い浮かべますね。でも公民館を利用できるのは当該地区の自治会メンバーや公民館主催の講座受講生というのが原則。既存の枠に入らない新しい市民団体やグループ、町境を越える活動団体などは、なかなか利用できませんでした。やがて、誰でも自由に利用できるオープンスペースを求める運動が始まり、有志が集まって旧清水市役所別館オフィスを借りて自主運営をスタート。利用者同士が「スペースを借りるだけじゃもったいない、みんなでネットワークを組んで協働事業を始めよう」ということになり、平成18年、NPO法人化をはたし、晴れて市民活動センターの指定管理者となったわけです。
代表理事の鍋倉伸子さん(写真右端)には、この日初めてお会いしましたが、聞けば、戸田書店のオーナー夫人であり、現在、静岡県教育長を務めておられる、文字通り静岡県を代表する文化人。鍋倉さんが編集発行する『季刊清水』は、静岡県では数少ない地域文化情報誌で、昨年10月発行の41号には、朝鮮通信使研究家の北村欣哉先生が地元清水の廻船問屋の歴史について寄稿されています。先生からいただいて隅から隅まで目を通し、「静岡にもこんな良識的な情報誌があるんだなぁ、こういう雑誌に記名執筆できるようになりたいな~」などと憧れたものでした。
清水ネットの活動報告書は、鍋倉さんが指揮を執られるだけに、しっかり編集されていて、県内NPO法人の中でも私が知る限りトップレベルの報告書ではないかと思えるほど。毎年1回行う市民フォーラム、毎月定例で行うランチトーク、交流会、懇話会、出前講座や職人まつりといった企画事業について、きめ細かく報告されています。
この報告書があれば、取材は不要とばかり、同行の杉本彰子さん(NPO法人活き生きネットワーク理事長・ぱれっとコミュニケーション制作責任者)とともに、鍋倉さんや事務局の方々と雑談に終始してしまいました。調子に乗ってついつい、本取材とはまったく関係のない、朝鮮通信使が縁で北村先生にお世話になっていることや、地酒関連の活動の話をしてしまいました。
ライターが取材者たる本分を忘れて自己アピールするなんてマナー違反にも程がありますね(苦笑)。鍋倉さんが終始笑顔で関心を持ってくださったのに救われました。
鍋倉さんも、富士の佐野さんも、市民活動センターというハコものの舵取りを任されながらも、地域の価値はハコではなくて、個人のスキルや、人と人がつながることで生まれるパワーを通して高めようと努力しています。お2人とも、写真を撮る時、自分一人ではなく、スタッフみんなで写してくださいと、周囲を立てていました。・・・他者を活かす生き方って素敵だなって改めて思います。