杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

國本さんお疲れ様でした!

2009-12-30 11:01:12 | しずおか地酒研究会

 昨夜(29日)は『吟醸王国しずおか』映像製作委員会の有志5人で忘年会。急な召集にもかからわず、時間を割いて清水の河良さんまで足を運んでくれました。当日予約で無理をお願いした河良のご主人河本さんも、市場が休みに入ってネタが少ないので申し訳ないと言いつつ、手持ちの食材で最高の料理を出しますよ、と腕によりをかけてくれました。

 

 

 昨夜の主役はSBSアナウンサーの國本良博さん。國本さんには10月の地酒まつり(沼津)の件でいろいろとご迷惑をおかけしたこともあり、そのお詫びと報告、そして、明日12月31日を以てSBSを定年退職されるということで、永年の慰労と感謝をお伝えいたしたく、お忙しい中、無理をお願いして来ていただきました。

 年明け以降、フリーになられるということで、以前から『吟醸王国しずおか』の制作にもぜひお力添えをいただきたいと考えており、昨夜はそのお願いをする目的もありました。

 

 

Imgp1804  共に労をねぎらおうと駆けつけてくれた篠田和雄さん(真ん中)はご存知・篠田酒店店主。金融機関にお勤めの小楠享司さん(左から2人目)は、地酒研草創期からのメンバーで家族4人1人ずつ(20歳になったばかりで日本酒を飲んだことのない娘さんまで)会員になってくれたほど熱い支持者。

 久留聡さん(左端)は木工手作り家具やおもちゃを作る埼玉出身の若き職人さんで、焼津の造船技術を学ぼうと地縁血縁のない静岡へやってきて岡部に住まいを構え、結婚式を挙げた神(みわ)神社でたまたま飲んだ初亀の美味しさにビックリ。その後藤枝に引っ越して、たまたま縁あって訪問した喜久醉の蔵元の人柄にカンゲキ。これからの杜氏蔵人が望む酒造道具を作ってみたい!と熱い思いを抱く人。仲間に入ったのは最近ですが、人一倍真剣に映画制作のことを考え、素晴らしいアイディアを次々に出してくれています。

 

 

 國本さんも、お会いする前は、「日本酒には悪い思い出しかない、敬遠していた」派。たまたま担当の朝のラジオ番組で静岡酵母の河村先生を取材され、地酒談議で盛り上がっていた放送を聴いた私は、企画を任されていた静岡市立南部図書館の地酒講座のプログラムにエッセイを寄せていただこうと知人を通してお願いをし、講座へも半ば強制的?に来ていただいたのがきっかけでした。

 

 「あのとき、4種類の酒を試飲させられたでしょ、同じ日本酒なのに全然違っていた。素人判断で素直にこれが一番ウマイ!と思ったのが静岡の吟醸酒だった。それからですよ」と國本さん。

 

 

 フツウに考えれば、たまたま関わっただけにすぎない静岡の酒の世界だったはずなのに、その後の國本さんは“新しい世界を見つけた喜び”を実践されるかのように、しずおか地酒研究会の発足や運営をサポートし、縁を結んだ蔵元衆を純粋に応援したいから、と、無償で酒造組合のイベントに協力してくれるようになりました。

 SBSのアナウンサー仲間や名パートナーの樹根さんを酒の世界に引き入れてくれて、最近では好きな蔵元へご家族全員で訪問し、生まれたばかりのお孫さんに吟醸酒の香りを嗅がせた?ほど(笑)。

 

 

 今まで敬遠していたもの→実は一部しか知らなかった、本当は大変価値ある世界だったことに気づいた→知らないことを無性に知りたくなった→自分に新たな価値観と楽しみを与えてくれたことに感謝→そのことを周囲に伝えたくなった→ビジネスではなく自分自身の役割として。

 

 

 こういう行動原理は、私がそうだったし、久留さんも同じのようで、國本さんの話に「まったく自分もその通り」と頷きっぱなし。熱く語り合う國本さんと久留さんに、ニコニコしながら耳を傾ける小楠さん、ちょっと不思議な空気感を持つ篠田さん、こちらのペースにはお構いなしで、この料理にはこの酒!と、磯自慢、國香、正雪、初亀、萩錦、小夜衣(…ほとんどが河本さんが篠田さんに特別オーダーした大吟の斗瓶生原酒の熟成モノ)を有無も言わさず出してくる河本さん。

 ・・・酒でしかつながっていない6人ですが、それぞれのキャラが見えてきて、楽しい会話、おいしい料理、素晴らしい酒の三つ巴であっという間に時間は過ぎてしまいました。

 結構な酒量だったのに気分爽快で、今朝もまったく爽やかな目ざめです。う~ん、こんないい飲み方なら、日本酒嫌いになるはずないのになぁとしみじみ実感です。

 

 

 改めてうかがった國本さんの酒への思いと、新たに縁を持った久留さんの志に、「資金力や組織の大きさ云々ではない、気持ちが人を動かすんだ」との思いを熱くしました。

 國本さん、本当にありがとうございました&お疲れ様でした。

 

 

 来年は、映画制作に一定の区切りをつける節目の年になると思います。どうか無事フィニッシュできるよう、ご支援をよろしくお願いいたします。

 

 

 最後に番組PRを。

 國本良博さんがSBSアナウンサーとして出演する最後の番組―12月31日22時から翌1月1日1時までの越年特別プログラムがSBSラジオでオンエアされるそうです。

 「2009年12月31日24時で退職なはずなんだけどね」と苦笑いする國本さんですが、この番組は、後輩アナや制作担当者が、國本さんのために特別に企画したそうで、「定年退職最後の日の、日付けが変わるその瞬間までマイクの前に僕の席を作ってくれた後輩たちには感謝の気持ちで一杯。こんな幸せな退職者はいないよね」と感無量の表情でした。

 大みそかの年越しは、ぜひSBSラジオをお聴きくださいね!!


歳末駆け込みブックレビュー

2009-12-27 12:59:13 | 本と雑誌

 年賀状の印刷をやっと発注し終わり、年末年始のこの1週間は年始開け締切の原稿執筆と、仕事場の掃除や整理であっという間に終わってしまう予感・・・。とりあえずデスク周りから片付けようとボチボチ始めたら、書類の下から未読の本が6冊も出てきました。ここ半年ぐらい、仕事に必要な本を除けば、まともに1冊読破した本がなかったな~と反省しきりです。今まで読書に充てていた時間をブログ書きに費やしているせいです(苦笑)。

 

 書類の山から発掘した未読本とは、司馬遼太郎の『空海の風景(上・下)』、山折哲雄の『空海の企て』、外山滋比古の『思考の整理学』、奥田頼春さんの『農の塾』、長井満喜広さんの『沈黙のピアノ』の6冊。

 空海モノに凝ったのは京都の東寺を久しぶりに訪ねて密教思想のイロハをちゃんと勉強しようと思ったからでしたが、急ぐ話でもないので越年決定。『思考の~』は、本屋の店員さんが考えたというキャッチコピー〈もっと若い時に読んでいれば…そう思わずにはいられませんでした〉が秀逸だったから。コピーライターとして、巧いな~と唸った本(の帯)でした。これも急いで読まなきゃならんというジャンルではないので、仕事カバンに入れて携帯しとこうと思います。

 

 

 急いで読まなきゃならないのは2冊。いずれも著者から直接送っていただいた本です。

 

 

 2009120219370000 『農の塾』の著者奥田頼春さんは元県庁職員で、農政部在籍時代の1993年から県庁職員有志で『農の風景』という機関誌を自費発行されていました。同誌の歴代編集長は奥田さんはじめ、川島安一さん、堀川知廣さん、石戸安伸さんら県農政のプロパーが務め、私はそれぞれの皆さんに取材等でお世話になった経験から、定期購読させてもらってます。

 寄稿者は県職員の方が多いようですが、業務とは別に「語りたい」「伝えたい」思いをお持ちの皆さんだけに、血が通った、熱のある記事になっているんですね。仕事でいただく行政資料文書とはエライ違いです(笑)。

 

 

 『農の塾』は、そんなイキのいい記事の中から、奥田さんがご自身の原稿をまとめられた一冊。93年から09年までの記事なので、この間の農を取り巻く環境の変化が読み取れて、まとめて読むと非常に興味深い。

 

 

 印象的だったのは最後のページの「静岡県農業の現状をみると、お茶に特化しすぎたことによって、産業の競争力が低下してしまった」という一文。現役時代には発言できなかった勇気ある言葉だろうと思います。

 

 

 私自身、今月手掛けたばかりの県広報誌の仕事で、静岡県の農産物は品目数が日本一だと知りました。野菜は日本で作られる品目92のうち79(85.9%)で全国2位、果樹は全国130品目のうち58(44.6%)で全国3位。花とその他作物(茶や米など)は全国12位で、トータルでみれば、全国生産品目263のうち、167品目(63.5%)で堂々1位なんですね。

 でも「静岡県の農産物は?」と聞かれると、お茶かみかんぐらいしかイメージされない。お茶とみかんしか作れない県なら仕方ないけど、日本一豊富な品種が作れるのに、あまりにも特定の品目に偏り過ぎていたんだなぁ~って、こういう数字をみるとよくわかります。

 

Dsc_0001  

 

 もう1冊、『沈黙のピアノ』は、これも仕事でお世話になった中日新聞東海本社編集委員の長井満喜広さんからいただいた本。先日、「感想が返ってこないけど、どうなの」とお叱り?のお電話をいただいてしまいました。焦ったぁ~。

 

 改めて端から端までじっくり読んでみて、ジャーナリストが業務を離れ、一人のライターとして書き手魂を揺さぶられた軌跡が、手に取るように伝わってきました。主人公は聴覚障害を持つ浜松市出身のピアニスト宮本まどかさんとその母・山下尚子さん。長井さんが現役(中日新聞報道部長)時代に尚子さんに出合い、手弁当で取材をし、中日を定年退職後に出版した一冊です。

 

 

 障害を持つ音楽家といえば、最近では盲目の天才ピアニスト辻井伸行さんが有名ですが、まどかさんは聴覚障害。子どもの頃、医師から「機械でいえばポンコツ、磨いて油をさして乗る中古自転車だ」と言われ、聴覚障害から来る平衡感覚の未発達で動作が鈍いことに“精神障害”のレッテルを張られ、幼稚園の父兄からは「どうして遊戯もできない、歌も歌えない耳の不自由な子が通園しているのか、恥ずかしいから来させないでくれ」と罵倒されながらも、母尚子さんは我が子を全力で守り支えます。

 

 幼稚園のお友達が歌う『チューリップ』をボーっと眺めていたまどかさんに、「この歌だけはなんとか覚えさせたい」と念じた尚子さんは、オルガンを買い、鍵盤とまどかさんの指の爪に色を塗り、画用紙に描いた花の絵の音階を見せながら色を順番に押せば『チューリップ』になるという秘策を思いつきます。

 まどかさんは次第に“音感”を感じ取れるようになり、同級生の前で『チューリップ』を完璧に弾くまでに。担任の先生が浜松ろう学校で教えた経験もあるピアノ講師を紹介し、10年間、レッスンを受け、ろう学校2年生(小学2年)のとき、学芸会で見事にピアノ演奏をし、新聞記事にもなりました。

 

 

 まどかさんはその後、浜松の船越小学校、八幡中学、海の星高校、東京の清泉女子大に進みました。普通校での生活は健常者には想像もつかない苦労があったと思いますが、長井さんの文章は新聞記者らしい、センテンスの短い淡々としたもので、それが却って読み手を“行間”に誘い、自分だったら、自分の家族だったらと想像させずにいられません。結婚し、子どもをもうけ、ピアニストとしてプロデビューもし、大学講師として活躍中のまどかさん。直接演奏を聴いたことはありませんが、私もお名前だけは知っています。

 

 尚子さんのもとには相談や教えを乞う障害者やその家族が次々とやってきて、尚子さんはボランティアで『山下教室』を開いて未就学児を預かるように。この活動はテレビや新聞などでも多く取り上げられたようですが、私は本書で初めて知りました。まどかさんも立派ですが、普通の主婦だった尚子さんが周囲の逆風に立ち向かっていく姿、そして自身の体験を社会に還元しようとする志の高さは本当に素晴らしい。

 親が子を守るのは当然、と言ってしまえばそれまでですが、人間というのは「意思」の力で、聴覚障害者に音楽を与え、奏でさせ、健常者を感動させることさえできるという事実に感銘を受けます。このように、マスコミで注目されるケース以外にも、私たちの身近な市井に、「意思」を力に障害を乗り越えようとする多くの人々がいるだと思わせます。

 

 

 私は私で、大新聞の報道部長さんの視界には入ってこないかもしれない市井の価値ある「意思」を見つけていきたい、と熱くなった一冊でした。

 『農の塾』については、農林業もの好き研究会へお問い合わせを。

 『沈黙のピアノ』は星雲社(TEL 03-3947-1021)までどうぞ。


Xマスのシンクロニシティ

2009-12-25 20:27:54 | アート・文化

 巷はクリスマスですね。昼間、街を歩いていたら、通りがかりのカップルが「なんでクリスマスの飾り、今日(25日)まで付けてんのかね?昨日(24日)で終わったんじゃねぇの?」なんて会話をしてました。イブとクリスマスの違いがわからない人もいるんだな~と目がテンになりました(苦笑)。

 

 

 年内の取材・打ち合わせ等は今日でひと段落。昼間はホテルアソシア静岡で開かれた日本平ロータリークラブの12月例会に招かれ、40人ほどのロータリー会員のお歴々に『吟醸王国しずおか』パイロット版を観ていただきました。

 先週の静岡経済研究所のときと同様、日本酒に対する偏見?がある年配男性諸氏に、吟醸王国しずおかの世界観を瞬時に理解してもらうのはとても無理だと思いましたが、とにもかくにも、映画制作のことを一人でも多くの人に知ってもらって、いつの日か実になるご縁につながれば、と期待しています。

 

 念を持ち続ければ、縁は向こうからやってくる、と・・・これは、昔よく読んだ心理学の『シンクロニシティ』の世界観ですね。

 

 

 

 このところの忙しさにかまけて年賀状の準備を後回しにしていました。ロータリークラブ例会の後、今日まで静岡伊勢丹8階催事場で開催の全国うまいもの展を覗き、福井・小浜の大入号さんのレンコンと生姜の粉末&オリゴ糖漬を見つけて、風邪予防にちょうどいいと買い求め、帰宅して、やっと頭がリセット。

 

 昨日、打ち合わせのあった広報物の表紙デザイン&コピーの参考に広げていた伊藤若冲の図録をめくりながら、年賀状のデザインは若冲の虎の絵をモチーフにしようかとぼんやり考えていた矢先、静岡新聞夕刊を広げたら、農林水産面に京都高麗美術館の片山真理子さんの連載記事『朝鮮の歴史と文化』が! そう、過去ブログでもご紹介したとおり、片山さんの連載が先月から始まったんですね。毎月最終週の金曜の静岡新聞夕刊に掲載なので、ついウッカリ見過ごすところでした。

 

 

 本日掲載の記事は、朝鮮の茶文化についての考察。日本同様、朝鮮半島もお茶は中国の仏教文化とともに入ってきて、仏教が厚く信仰されていた高麗時代まで(918~1392)茶葉を使った飲茶の風習は貴族階級でも重宝されてきたそうですが、仏教が廃れた朝鮮時代(1392~1901)は、生姜とか朝鮮人参などを粉にして煎じて飲む健康ドリンク的なもの全般を「茶」と言ったそうです。私がさっき伊勢丹で買ってきたようなものが、朝鮮王朝で言うところの「茶」だったんだ・・・!とビックリ。

 

 偶然は不思議と重なるもので、今日は京都高麗美術館から2010年の催事案内が届いていました。1月9日(土)から2月14日(日)までの新春特別展は『朝鮮虎展』。なんと、パンフレットのキャッチコピーに“若冲も手本にした朝鮮の虎の絵”とあるじゃないですか!

 朝鮮半島には昔、たくさんの野生の虎がいて、畏怖の対象だったんですね。多くの美術工芸品に描かれています。ホンモノの虎を写生する機会がない若冲にとって、朝鮮画家が描いた虎の絵は、さぞかし想像力を刺激させられたことでしょう。

 

 

 今夜これから描く年賀状のイラストも、朝鮮画家や若冲の虎をゴチャマゼにしたような変な図柄になるかもしれませんが、今日のちょっぴり不思議なシンクロニシティにあやかって、楽しい絵にしたいと思います。なんてったって(ウン回目の)自分の干支ですから!

 

 なお、NHK教育で毎月最終日曜日22時から放送の企画番組『日本と朝鮮半島2000年』は、12月27日放送分で朝鮮通信使を取り上げるそうですから、視聴できる方はぜひご覧くださいまし!

 


浜名湖地産地消検定会 第1回講習会

2009-12-22 00:49:42 | 社会・経済

 年もおし迫っていますが、連日日替わりテーマで取材や打ち合わせに出掛け、脳がパニクりかけています・・・。ここでのご報告も数日遅れ気味。でも、忙しいときほど、ここで少しでも文字化しておかないと翌日真っ白になりそうで、眠い目をこすりながら書いてます。

 

 

 19日(土)は、先日の告知どおり、浜名湖地産地消検定会の第1回講習会が浜松市舞阪文化センターで開かれました。10月の中日新聞全国新聞大会Imgp1786 特集面で取材させていただいたNPO法人はまなこ里海の会が、静岡県と共同で開催するもの。地元に根をはるライターを自認しているくせに、県内のご当地検定の勉強をするのは初めてです。いやぁ、知らないことアリ過ぎで、ホント、恥ずかしかった。

 

 

 まず、「シラス」って、当たり前のようにイワシの稚魚のことだと思っていましたが、本来は「魚の赤ちゃん」という意味なんですね。ウナギの稚魚なら「シラスウナギ」、アユの稚魚なら「シラスアユ」って言うんです。

 ちなみに、シラス(イワシの稚魚)にも、カタクチイワシ、ウルメ、マイワシに分かれていて、静岡県でよく獲れるのはカタクチイワシ。顔が丸っこいのが特徴です。マイワシは顔がやや尖がっているそうですね。

 

Imgp1797  舞阪漁港に水揚げされるシラスは、2艘船曳網漁法といって、船2艘ペアになって網でガーッと曳いて獲ります。水揚額は、過去10年で見ると毎年10~16億円ぐらいあり、平成16年だけ海流の影響か6億円台にガタ落ちしました。漁師さんにとっては死活問題になるところですが、浜名湖が恵まれているのは、シラスが不漁でもアサリでカバーできること。ほとんどの漁師さんが、アサリとシラス両方の操業免許を持っていて、平成16年のシラス大不漁の時は、アサリがなんと大豊漁。こういう恵まれた漁場は、全国でも例がないそうです。

 

 

 恵まれた漁場は、恩恵を受ける者同士が共有財産として大切に守っていく義務があります。アサリ漁は日の出から正午まで、シラス漁は冬は朝7時30分から正午まで、春は6時30分から、夏は6時から、秋は7時からと、操業時間を厳しく決めています。

 

 

 “遠州とらふぐ”で地域ブランド化しつつあるとらふぐは、操業する船をくじ引きで決め、時間は日の出から午後1時まで。700g未満の小サイズは放流します。5年おきぐらいに豊漁になるそうで、直近では平成19年度がピーク。あと数年後に次の豊漁期が来るみたいです。

 

 

 浜名湖といえばウナギ。日本の養殖ウナギ発祥の地です。なぜこの地が養殖に成Img_2817功したかといえば、シラスウナギが浜名湖や天竜川河口付近でよく獲れ、養鰻に適した豊富な地下水が出て、餌となる小魚もたっぷり。この3要素がバッチリそろっていたからです。

 といっても今現在、静岡県の養鰻量は鹿児島、愛知、宮崎に次いで全国4位。天然ウナギにお目にかかれるのは7~9月で、土用の丑の頃よりも、夏を過ぎ、涼しくなってからのほうが脂が乗って美味しくなるそうです。・・・う~、真夜中だというのに、書きながら無性に食いたくなってきたぁ(笑)。

 

 

Imgp1793  

 以上のようなお話を、はまなこ里海の会会員の漁師さんや浜名漁協の担当者が、懇切丁寧に教えてくれて、お昼は漁協婦人部のお母さんたちが風味満点のアサリの味噌汁、アオノリの酢の物、タチウオのフライをふるまってくれました。

 タチウオは6~9月が漁期で、3枚におろして冷凍保存しておいたそうですが、冷凍モノとは思えない美味しさでした!

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 お昼をはさんで約3時間、実に有意義な講座。一般参加者は私のほかに親子連れ1組だけで、アサリもフライもお代りし放題。しかもすべて無料。なんともぜいたくな1日でした。

 

 

 次回は1月16日(土)10時から、舘山寺ホテル山喜を会場に、浜名湖周辺の農産物をテーマに地元農家のお母さんたちがお話&地元料理をふるまってくれます(くわしくはこちらを)。

 

 

 

 講座終了後、次回の予習にと、この日の講座を受講していた農家のお母さんたちと、講師役の漁師のお父さんたちが、「せっかく同じ地域に住んでいるんだから、これからも一緒に何かやろうよ」と意気投合していた姿が微笑ましかった!。

 

 

 そう、静岡県って海の幸も山の幸もホントに豊かだけど、漁師と農家が直接コラボする機会ってあんまりないんですよね。浜名湖は一つの食のエリアとしてまとまりがあるし、何より個々の食材のレベルが高いんですから、生産者同士がなんとかうまく融合してほしいな。

 

 はまなこ里海の会事務局長の窪田さんは自然保護活動家だし、今回の検定会企画では地元ホテルの料理人さんも関わるようなので、彼らのような立場の人々が積極的につなぎ役になれば、と期待しています。

 私は私で、地域食の担い手や応援団のみなさんとのご縁を広げながら、ライターとしての情報ストックを厚くして、ついでに地酒応援にもつなげていければな、と思っています。


静岡経済研究所SERIサロン例会

2009-12-21 00:01:29 | 吟醸王国しずおか

 18日(金)は静岡経済研究所のSERI12月例会に、花の舞酒造の高田和夫社長とともにお招きいただき、企業経営者の方々を前に静岡の酒についてご紹介しました。

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 静岡経済研究所は過去ブログでもご報告したとおり、月刊誌SERI10月号で研究員の高橋晴美さんが『価値を伝え、市場を切り開く“静岡地酒”』と題した研究論文を書かれ、好評を集めています。

 SERI例会では毎回、研究員が論文で書いたテーマについて研究発表するそうで、12月は年末で日本酒シーズンということもあって高橋さんが担当することになり、静岡経済研究所の会員である高田社長と、高橋さんの論文に取材協力した私が、ゲストにお誘いいただいた、という次第です。

 

 最初に高橋さんが研究発表をし、続いて高田社長が花の舞酒造の社歴や経営課題について興味深いお話をされました。

 

 

 Imgp1769 高田社長とは長いおつきあいですが、改まって講演を聞くという機会は初めてです。

 経営者としての課題について、①商品力、②販売力、③業務改革を3本柱に挙げ、「商品力、すなわちブランド力とは、お客様に“このブランドだったら間違いがない”と思っていただく信頼感に相違ない。そのため、級別制度の廃止を契機に思い切った設備投資をし、商品構成は特定名称酒に特化し、原料はすべて静岡県産米にすると決めた」と力強く語ります。

 

 ②の販売力については、「業務用には酒販店、一般家庭用にはスーパー量販店、という住み分けを行い、県内を第一の基盤にしているが、県外市場は東京、名古屋、海外の順に可能性を探っている。市場が大きいだけにやりがいはあるが、なかなか難しい」と率直に述べられました。

 

 ③の業務改革に関しては、「製造や瓶詰作業は、設備の改良である程度改善できるが、とにかく商品アイテムが多いので、梱包出荷作業に人手がかかり過ぎている。効率のよい仕組み作りが課題だ」とのこと。

 

 お話を聞いているうちに、私が普段つきあっている中小の酒蔵とは、やはり別次元の経営者なんだと実感しましたが、伝統的な酒造業が、現代の経営手法と融合してどこまで発展していくのか、静岡県内では他に例がないだけに、大いに注目されます。

 

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 休憩をはさんで後半は『吟醸王国しずおか』パイロット版の試写と、私の酒蔵体験談。会場には経済研究所の会員企業の方以外に、研究所側の招きで静岡リビングの杉本編集長、フリーアナウンサー神田えり子さん、静岡市駅南銀座の鉄板焼ダイニング湧登(ゆうと)のご主人山口さんが来ていたので、地酒応援団の同志のつもりで紹介させていただきました。

 静岡リビングさんは、11月末に地酒特集号を組んでくれて、映画制作についても温かい応援記事を作ってくれました。リビングさんで映画制作を紹介していただいたのは2回目です。本当に感謝の思いで一杯です。

 

Imgp1776  リビングの記事の中で、私が湧登の企画で始まった『はしご酒』について発言したことが紹介されていて、山口さんから丁寧なお礼メールをいただいていました。また神田えり子さんは、はしご酒では地酒コンシェルジュになって、お客さんをもてなす側としてボランティア参加されています。

 その“はしごつながり”の3人が、偶然顔をそろえて来てくれたことに感激したと同時に、地酒というのはいろんな人をはしごでつないでいく力がある、と再確認しました。

 「真弓さんと花の舞さんの組み合わせは珍しいですね」と、えり子さんから冷やかされましたが、花の舞という酒は、段差の少ない、誰でも気軽に登れるはしごみたいな酒かもしれません。

 

 私が愛飲する「花の舞・つう」は、この時期、燗酒にはもってこいで、他県の普通酒や本醸造と比べたら、吟醸と見紛うほどの品質だと思っています。こういう酒がふだんづかいで飲める幸せを忘れちゃいかんですね。

 

 

 ・・・そうはいっても、サロン終了後の懇親会で高田社長から提供された花の舞限定大吟醸には舌を巻き、高橋さんに「花の舞さんとは対極的な、県内の蔵元自醸酒がImgp1782あっても面白いよ」とアドバイスしてそろえてもらった白隠正宗山廃純米山田錦65%、杉錦特別本醸造、喜久醉純米吟醸、H森本(小夜衣)入力手搾り炸裂辛口純米+9、國香特別純米中汲み無ろ過生原酒は、全部抱えてお持ち帰りしたくなるほど、ハズレなしの美味しさ!

 

 

 会員の経営者からの「醸造アルコール添加の酒って邪道でしょう?」「なんで米をそんなに小さく磨くの?」「米を小さく磨いて使うなら値段が安くなってもいいんじゃないの?」の質問に、ありゃ~社長さんクラスの人でも知らないんだなぁと思いつつ、丁寧に説明したら、「今夜はそれを覚えただけで儲かった」と喜んでいただけました。

 とくに日本酒にある種の先入観を持っている世代に対するとき、酒の伝道に早道・近道がないなぁ…と、これも再確認できた夜でした。