杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

無事掲載!

2008-08-30 08:26:21 | 吟醸王国しずおか

 昨日、ボツになりそうと書いた静岡新聞の告知記事が、今朝(30日)の朝刊総合面に無事、掲載されました。当日掲載でどれだけの反応があるのかわかりませんが、とにかくボツにならなくてよかった…(涙)。記事を書いてくださった政治部の大須賀さん、ありがとうございました!


静岡が吟醸王国になった理由

2008-08-29 18:33:05 | 吟醸王国しずおか

 いよいよ明日、『吟醸王国しずおか』パイロット版のお披露目会です。静岡新聞夕刊に告知記事を出してもらえる予定が、アフガン事件や豪雨などのニュースでボツにされたようで、ちょっぴり拍子ぬけ…。ですが、鑑賞者の判断を仰ぐ前に大々的に報道されて、冷やかし半分の人が来たりして後々批判されるより、きちんと趣旨を理解して参加申し込みをしてくれた鑑賞者が、落ち着いた雰囲気の中で観て、きちんと批評してくれる環境を大事にしようと思い直しました。

 よくよく考えてみると、明日の試写会に事前申し込みをしてくださった人は、自分にとって一生忘れられない宝物のような人たちです。

 いくら地酒取材の実績があるとはいえ、映像制作は素人同然の私が作った未完成の映像を、8月の週末夜、時間を作って観に来てくださる。もう、これだけでスゴイことです。本当に心から感謝します。

 

 31日に東京で開催する松崎さん企画の試写会は、パーティー料理と静岡吟醸10銘柄(うち7銘は蔵元持参)呑み放題の豪華版ですから、映像があってもなくてもそれなりに楽しめると思います。一方、明日30日の試写会は上映のみ。にもかかわらず来てくれるというのは、このプロジェクトを直球で受け止めてくれる人たちなんですね。

 

 

 

 本や雑誌づくりだったらどうでしょう。執筆途中の原稿や、印刷前のゲラを見せます、と言って、何人集まるでしょうか。映画を作るということが、それだけ多くの人を巻き込み、そのエネルギーを肥やしにできるプロジェクトなんだって実感します。

 

 

 

 私はこれまで一匹狼的な立場で、取材に苦労してもしなくても、書いたものだけで判断されるドライな世界で生きてきました。下請け業務が多いので、読者の反応を直接キャッチできる機会は少なく、クライアントが「次もよろしく」と言えば問題なかったのかなと推し量る程度。20数年、そんな世界に浸かって、どこか、書くことへの情熱や緊張感が薄れていたのは事実です。

 

 

 

 静岡の酒はライフワークとして、それなりに信念を持って追いかけてきたわけですが、この20年、静岡を飛び出して日本のトップブランドになる銘柄が続出し、地方のライターが地方で細々書くより、東京で活躍するジャーナリストや酒通ライターが全国区の出版社から出す本や雑誌で次々と紹介される。情報発信力ではどう転んでもかないません。

 

 

 今、改めて振り返ると、映画づくりのきっかけは、『朝鮮通信使』の制作経験だったのは確かですが、その裏には、東京で出来ないことをやろうという対抗意識があったのかもしれません。

 自分が下請け慣れし、地方でそれなりに食べていければいいと思っていたら、いくら映像の仕事を経験したからといって、そう単純に映画を作ろうなんて思わなかったでしょう。映画づくりは、自分自身への“喝!”だったんだ…と今更ながら思います。

  

 

 

 明日は、酒の映画に関心があるというよりも、「真弓さんの頑張りに刺激を受けたから」という理由で来てくれる人もいます。本当にうれしいことです。

 私が誰かに刺激を与えているとしたら、私自身が、静岡の蔵元の頑張りに刺激を受け、同様に刺激を受けた東京のジャーナリストやライターからも、大いに刺激をもらえたから。

 モノを生み出すエネルギー、競争相手に挑むパワーというのは、万人に刺激を与えてくれるんですね。もらった刺激は、ちゃんとカタチにして、他の誰かに伝えないと。

 静岡が吟醸王国になったのは、それを実践したからだ、と実感を込めて思います。

 

 

 

 

 明日の試写会、2回目(18時30分)、3回目(19時30分)はまだお席が十分ありますので、この夏の最後の思い出に、ぜひ刺激を受けにいらしてください。

  

 

 

 

 

◆『吟醸王国しずおか』予告パイロット版試写会のお知らせ

20081月から6月まで撮影した一部を仮編集した予告パイロット版をいち早くご覧いただき、制作過程のご報告と、会員増強を目指す試写会を開催いたします。<入場無料、要予約>

○日時 830日(土) 1回目上映1730分 2回目1830分 3回目1930

○会場 静岡市クリエーター支援センター 3階プレゼンテーションルーム(静岡市葵区追手町416 TEL 054-205-4759  *静岡県庁南隣、旧青葉小学校)

○申込み しずおか地酒研究会(鈴木真弓) msj@quartz.ocn.ne.jp

 

 


信頼される信念

2008-08-27 21:27:36 | 吟醸王国しずおか

 ムチウチみたいに硬直した首と偏頭痛にムチ打って、26日(火)は中伊豆へ、27日(水)は湖西へ、取材で東奔西走しました。カメラや取材バッグが、痛みで肩に掛けられないので、電車は使わず車で移動。ガソリン高騰の折、少しでも低燃費の運転をしようと制限速度厳守で走るつもりが、伊豆も浜名湖も道はガラガラです。もう夏休み渋滞が終わったのか、それとも車両の数がガソリン高の影響でほんとに減っているのかよくわかりませんが、ついついスピードが出てしまって、週明けに満タンにしておいたガソリンタンクは、2日間ですっかり底をついてしまいました・・・。

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中伊豆は、赤ちゃん連れでも泊まれるファミリー向けのペンション『ピノキオ』の取材です。シダックス中伊豆ワイナリーの近くにあり、天城連山の素晴らしい眺望が楽しめます。

 

  

 

 オーナーの高橋軍記さんは東北出身のエネルギッシュなアウトドア人で、子どもたちにいい空気と自然の恵みと生き物の大切さを教えようと、釣りや昆虫採集などさまざまなレクリエーションメニューを提供しています。20年前、湯ヶ島で1号館をオープンしたときは、バブリーな時代で伊豆高原あたりの高級リゾート風ペンションが流行っていた頃。高橋さんは当時では珍しい子連れ歓迎のペンションを開き、10年前に中伊豆へ移転し、2000坪の敷地をフルに生かして自分でバンガローや露天風呂や体験農園を作って、都会からやってくるファミリー層から厚い信頼を得ています。

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  消費低迷の昨今、子連れファミリー層を毛嫌いしていた旅館や居酒屋などが、手のひらを返したように子連れウエルカムになっていますよね。以前、テレビでキッズルーム付きの居酒屋を観て、これが居酒屋かと目を疑ってしまったことがありました。

 ピノキオの高橋さんのように、子どもの健やかな成長と家族の和づくりのために、信念を持って活動する人に比べると、なんと志の薄いことか・・・。客を増やすためには酒の席に平気で子どもを連れ込めるような場を作ってしまうなんて、親も親ですが、店側もよくないなぁと率直に思いました。もっとも、そんな店には、本当の酒好き・酒呑みは足が遠のいてしまうでしょうね。

 

   

 

 

 

 昼食に立ち寄った修善寺駅前のごはん屋「也万波(やまんば)」は、10年近く前、修善寺町役場の杉山健太郎さんに紹介された手作り料理の店。オーナー遠藤温子さんに聞けば、地元の人しか知らない伊豆のマル秘情報をゲットできます。

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 息子さんが修善寺駅前の商店主と協働で作った「えきまえマップ」は、行政が作った観光パンフとは一味違い、各店のオーナーのキャラやお勧めポイントがイラスト付きでコンパクトに紹介された必見マップ。当初は商工会の補助金を使うことも考えたそうですが、使用目的や条件がうるさく、地元の真の声が反映できないとわかって、自主制作で作ったとか。“ナガイものにマカれろ”的な業者や行政マンからはイチャモンをつけられても、このマップは利用客には大好評。自分の映画づくりに重なる話だったので、ついつい私も「ようは、行動するかしないかなんですよ」と力説してしまいました。

 

 

 

 マップに紹介されていた三田鮎店にさっそく立ち寄って、能登の波瀬正吉さんに、鮎の甘露煮を送りました。

  この時期の落ち鮎の味はぴか一。釣具店でもあるこの店では、プロの鮎釣り御用達の絶品鮎を、炭火焼きにし甘露煮にしています。先刻、さっそく波瀬さんから「いやぁ、うまいっけよ~、昼飯にペロッと食っちまった」と電話をいただき、味覚鋭いプロの杜氏のお墨付きなら間違いなし、と安堵しました。

 

 

 

 

 

 まだ8月なのに道がずいぶん空いていました、と遠藤さんに話したら、「お盆連休の頃は渋滞したけど、伊豆は道路がよくなって、便利になりすぎて、首都圏から日帰りドライブできる場所になってしまった。家族連れなんかは、サーって車で来て、コンビニで弁当を買って済ませる。ゆっくり移動し泊って遊ぶという人が減ってしまった。落とすのは、お金ではなく、ゴミと排気ガスだけ」と浮かない顔。道路がよくなって却って景気が悪くなるなんて、観光経済の予測ってホントに難しいんだなぁと実感しました。

 いずれにしても、利用者に支持され、信頼され、顔の見える商売をしなければ、地域資源は活かされないでしょう。

  

 

 『吟醸王国しずおか』で、私は当初、静岡県の富士山・南アルプスの景観や水の良さなど、観光ビデオにありがちな映像を入れるプロットを書きました。しかし、酒蔵なら水がいいのは当たり前で、王国の証明にはならないと気づき、吟醸の意味をトコトン突き詰めて、やっぱり行きつくのは人の技であり、人の志だと腹をきめ、人物中心でカメラを据えました。・・・観る人に信頼され、支持される映像になっているかどうか、結論が出るのはまだ遠い話ですが、とりあえず今週末のパイロット版試写会、これが最初の試金石になりそうです。ぜひ皆さん、観にきてくださいね!


エンドロールは愛の証し

2008-08-25 17:23:47 | 吟醸王国しずおか

 能登の撮影から戻り、31日に試写を行う有楽町の外国特派員協会で機材チェックを済ませ、帰宅してから、締切りオーバーで催促が来た原稿をバタバタと書き上げたら、なんと、首が回らなくなりました。

 能登では「開運」杜氏・波瀬正吉さんのお宅で調子に乗って呑み過ぎ、夜、民宿で仰向けにひっくり返って後頭部を打ったので、打ちどころが悪かったかなぁと不安になりましたが、いつも行くマッサージ屋さんで見てもらったら、小さなタンコブと、岩盤のように硬直した肩こりと首こりのせいとわかり、ひと安心・・・。とりあえず昨日(24日)は一日、家でストレッチなどをして安静に過ごしました。樹木医の塚本こなみさんにいただいた肩こり鎮静剤(以前、こなみさんがコマーシャル出演されていた湧永製薬の塗り薬)を2晩続けて塗ったら、ずいぶん楽になりました。すっごいヒリヒリするけど、効く~って感じ!

 

 家でパイロット版の最終チェックをしていたら、エンドロールで企画協力者と撮影協力者の名前がゴッソリ抜け落ちていたのに気づき、大慌て。映像製作委員会のみなさんのお名前は、間違いや記載漏れがあってはいけないと、さんざん繰り返しチェックしたんですが、肝心の制作協力者の名前がすっかり頭から抜けていました…(反省)。

 思えば、昨年5月の『朝鮮通信使』完成披露上映会の前も、エンドロールの校正にさんざん悩まされました。膨大な撮影協力施設名、史料提供者、企画協力者の名前に漢字のミステイクがあったのを、上映会前日まで気づかなかったりして、現場を混乱させてしまいました。

 撮影にあたって外部との折衝はほとんど私一人でやっていたので、エンドロールの表記ミスのあるなしが判るのも、私しかいません。チームで仕事をするとき、こういう状況ってよくないですね。大きな反省点にしたつもりでしたが、今回も同じ轍を踏みそう・・・。

 

 

 それにしても、ひとりで思いついた映画づくりが、エンドロールに何人もの方の名前を載せるまでになったなんて感慨ひとしおです。

 お一人お一人の名前は、静岡の酒に対する愛情の証しです。この作品に協力の意思がない蔵元や酒販業者さんも、地酒を愛する人がこれだけいるってことを感じて、日々のお仕事の励みにしてほしいな。

 

 

 

 

◆『吟醸王国しずおか』予告パイロット版試写会のお知らせ

20081月から6月まで撮影した一部を仮編集した予告パイロット版をいち早くご覧いただき、制作過程のご報告と、会員増強を目指す試写会を開催いたします。<入場無料、要予約>

○日時 830日(土) 1回目上映1730分 2回目1830分 3回目1930

○会場 静岡市クリエーター支援センター 3階プレゼンテーションルーム(静岡市葵区追手町416 TEL 054-205-4759  *静岡県庁南隣、旧青葉小学校)

○申込み しずおか地酒研究会(鈴木真弓) msj@quartz.ocn.ne.jp

*席数に限りのある試写ルームですので、必ず事前にご希望の回のご予約をお願いいたします。

 

 

◆『吟醸王国しずおかの軌跡~静岡酒のドキュメンタリー映画、間もなく完成、予告編を東京初上映』開催!

静岡県清酒鑑評会審査員としておなじみ・日本酒ジャーナリストで日本酒輸出協会理事長の松崎晴雄さんと、名著「日本の大吟醸」「杜氏という仕事」でおなじみ・エッセイスト藤田千恵子さんが、静岡吟醸への熱いエールを込め、予告パイロット版試写を兼ねたセミナー&パーティーを企画してくださいました。静岡酒だけをテーマにした松崎&藤田両氏の貴重な講話と、吟醸王国しずおか映像製作委員会会員の蔵元8社の銘酒&日本外国特派員協会パーティーホール自慢の多国籍料理が楽しめるスペシャル企画。首都圏在住の静岡酒ファンにぜひお声かけをくださいませ!

○日時 8月31日(日) 16時開場 16時30分開演 第1部セミナー&試写会、第2部パーティー(20時終了予定)

○会場 日本外国特派員協会(東京都千代田区有楽町1-7-1 有楽町電気ビル北館20階 TEL 03-3211-3161 *JR有楽町日比谷口前)

○会費 8000円

○申込み 日本酒市民講座(松崎晴雄)TEL 03-3260-5959  FAX 03-3260-5981 kikisake@dream.com

 


能登杜氏を支える手

2008-08-22 21:02:50 | 吟醸王国しずおか

 20日(水)~21日(木)は石川県珠洲市で行われた能登杜氏組合夏期講習会の撮影に行ってきました。見どころは、「開運」の杜氏・波瀬正吉さん、石川県の地酒「ほまれ」の杜氏・横道俊昭さん、種麹メーカー秋田今野商店の今野宏さんが講師を務める吟醸造り体験発表・討論会。能登杜氏が勤める酒蔵の従業員や杜氏見習いが対象の講習会だけに、ハッキリ言って基礎知識がなければ、いや基礎だけ知っていても現場の体験がなければ付いていけない高度で専門的な内容です。本で読んだ基礎知識プラス、現場で多少見聞きした話ぐらいしか理解していない私にとっては、改めて酒造の世界の深さ・厳しさを実感させられるものでした。

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 強カプロン酸系の明利M-310で立てた酒母を、9号酵母の酒母とブレンドするという「ほまれ」の吟醸造りは、たぶん、静岡吟醸とはまったく違う酒なんだろうなぁと聞きながら、論理的に説明する横道さんや講演慣れしてるかのように饒舌に語る今野さんに、若い聴衆者がさかんに質問するのを見て、複雑な思いを抱きました。

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 波瀬さんが「なんといっても麹造りが大事。酵母や麹につねに話しかけている。それが私の酒造り」と、杜氏として一番大切な姿勢を、言葉をかみしめるように語る声は、マイクの位置が悪かったせいか、聞き取りにくく、会場内では「爺さんが何しゃべってるんだかわからないから寝ちゃったよ」なんて雑言を吐く者も。この若造たちは、波瀬正吉の偉大さを知らないのかと思わずムカついてしまいました。確かに波瀬さんの声はカメラのマイクでも拾いづらいほど小さく、壇上の司会者や横に座っていた横道さんが一言マイクの位置を直してあげればいいものを・・・と気にはなっていましたが。

 

 

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 積極的に質問するのが若い女性の杜氏・蔵人だったことも印象的でした。横に座っていた「開運」の若き蔵人3人衆―榛葉農さん、山下邦教さん、野口剛さんに、「撮影しているんだから、手をあげて質問してよ」って声をかけたんですが、残念ながら不発。代わりに、3列後ろに 座っていた「初亀」の西原光志さんが果敢に挙手してくれました。

 西原さんは、この春引退した滝上秀三さんの後継者として初亀の次期杜氏に抜擢された人。若い彼の、偉大な杜氏の後を継ぐプレッシャーやチャレンジ精神は、『吟醸王国しずおか』のドラマの一つになりそうで、杜氏1年目の姿をじっくり追いかけてみるつもりです。

 

 

 

 夜は、波瀬さんのご自宅にお邪魔して、波瀬さんと蔵人3人衆で行う開運全タンクの呑み切り(夏場に熟成具合をチェックする作業)の様子をカメラに収めました。呑み切りは8月初旬に、河村先生や名古屋局鑑定官や工業技術センター指導員ら専門家によって行われましたが、その講評を参考にしながらのテイスティング。「先生によって評価が違うな」「この先生の表現は細かいなぁ」「こっちは大雑把だなぁ」と蔵人たちも楽しそうにきき酒します。「これはいDsc_0023 いなぁ」と波瀬さんが唸った酒を、私も思わず呑ませてくれぇと心の中で叫んでしまいましたが、自分がフレーム内に映り込んでしまったら元も子もありません。数が数だけに、あれこれ角度を変えて撮っているうちに、波瀬さんイチオシの酒がどれかわからなくなってしまい、撮影がひと段落した後は、オールチャンポン状態で呑み呆けてしまいました…(反省)。

 

 

 

 黙々と撮影をする成岡さんと私に、さかんに気を遣って、「うちの畑で獲れたから」とスイカを切ってくれたり、この時期に食べられるなんて夢のような本ズワイガニのボイルを1匹ドンとふるまってくれた奥様の波瀬豊子さん。50年を超える波瀬さんの酒造り人生を陰で支え、50年間、一度も正月を一緒に過ごしたことがないという家庭生活に愚痴一つこぼさず、3人の子を立派に育て上げ、今も1年のうち8か月を静岡で過ごす波瀬さんの留守をひとりで守って、畑仕事に従事するその姿に、ニッポン女性の母性の強さと逞しさを、まぶしいほどに感じました。

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 翌朝は、波瀬さんをさしおいて、豊子さんの畑仕事の撮影を敢行。農業後継者が減り、放置された畑が多い中、豊子さんが手をかけた畑には、イモやネギやスイカがみずみずしく育っています。

 「スイカは近所の老人ホームに届けて喜ばれてるんだよ」「売り物にならないネギは父ちゃんのところ(土井酒造場)へ送ってやるんだ。刻んで醤油かけてご飯に乗せて食べると美味いんだよ」・・・。75歳の波瀬さんを支える72歳の豊子さんの泥だらけの手が、化粧品のテレビコマーシャルで「杜氏の手が白いのは・・・」なんて女優が宣伝するよりも美しく気高く見えました。