上海研修ツアー3日目は、まず午前中、3時間かけて杭州から上海まで来た道を戻り、ニュービジネス協議会会員である三島市の㈱ミロクの現地法人・上海未路駆の訪問です。
ミロクは建築工具メーカーで、上海では射出成型プラスチック品や真空成型品を作っています。大工さんが現場で使う墨つぼやチョークライン。千年以上変わらなかった構造を飛躍的に進化させ、この分野ではトップクラスの技術と性能を誇るミロクさんですが、現在、生産はすべてここ上海でまかない、三島の本社は開発部門に特化しているそうです。
1995年の進出当初、戸惑ったのは中国の役人との付き合い方。最初に工場を建てた土地は、実は高速道路の建設予定地になっていて、入居して1年も経たずに移転を迫られる羽目になったそうです。地元の地主や役人に人脈があれば、道路計画の情報はもらえたはずで、オーナーの古屋憲男会長はいきなり冷や水を浴びせられた心境だったとか。
一方、当該地の区長は、せっかく日本企業が進出して地元の人間を雇用し、製品は日本に輸出して外貨獲得できるのに、出ていかれるのは困る、本社事務所だけでも残してくれと懇願。自ら、移転先の区長に(同じ中国共産党 幹部のよしみで)話をつけてくれたそうです。
役所の幹部クラスにいわば貸しを作った形になった古屋さん、その後も関税の手続きや制度の活用等でなにかと便宜を図ってもらって、最初のつまづきもチャラになったよう。古屋さんご自身、とても豪傑でお酒が好きで明るく楽しいキャラの方なので、たぶん向こうのお役人さんと腹を割って飲んで、意気投合されたんでしょう。
「中国人は人を見る。信頼できるとわかれば、とことんつきあう。金勘定も大事だが、人づきあいが出来なければ何もできない」と中国人社長の韓さん(写真左端)も強調します。
鴇田団長は視察後の昼食会で「中国でのビジネスは、ルールはあっても解釈次第でどうにでも変わる。それを乗り越える手段はヒューマンコネクションであり、コネクションを作るためにはノミニケーションが何より大事。そこに中国ビジネスの大変さも面白さもある」としみじみ語っていました。金勘定が弱くても、人づきあい=飲みづきあいで勝負できるなら、私も中国で商売できるかなぁなんてチラッと思ってしまいました(笑)。
午後は森ビルがおっ立てた世界一の高層ビル・上海寰球金融中心(上海ヒルズ)の見学。地上100階・高さ472メートルの展望廊下から、ミニチュアみたいな上海市街の眺めを味わいました。…といっても天気がイマイチで雲が多くてこんなボヤけた写真しか撮れませんでした。
床には透明ガラスの部分があって、足元に目をやると、思わずクラっときます。お隣の金茂大厦(写真右)は上海ヒルズが出来る前まで420.5メートルで中国一の高さを誇っていたそうです。上海には地震がほとんどないので、高いビルがいくらでも建てられるみたいで すが、人はなぜより高く建てたがり、上へ上へと登りたがるのかなぁと、ふと哲学的な思惟に駆られてしまいました。
夕方、静岡県上海国際事務所を訪問し、外務省上海領事館領事(経済担当)の佐々木明彦さんに上海経済と日系企業の動向について講話をしていただきました。
県上海事務所の若田部所長には、事前に日本酒の消費動向について問い合わせのメールをしておいたのですが、この日は所長が急に北京出張が 入ってお会いできず。副所長の石田さんに静岡県地酒マップと雑誌「Sizo;ka」地酒特集号、それに私が執筆担当するJA静岡経済連情報誌スマイルのバックナンバーをお土産にお渡ししました。
若田部所長には翌日夜の会食時にご挨拶できたので、日本酒動向を含めた上海の経済状況についてはまた次回ご報告します。