杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

消費者の満足度を考える(つづき)

2010-10-30 14:21:42 | 地酒

 10月25日にUPした『消費者の満足度を考える』の記事を読まれた方から、「地酒まつりに対する書き方は、読んでいて後味が悪い。“悪口”を言っているととらえられたら、スズキさんが長年努力してきたことが無になるのでは」というメールをいただきました。

 

 ブログに書いた記事に対し、こうして直接意見をくださるって本当にありがたいです。記事を書くほうも意見を言うほうも、やっぱり勇気が要ることですものね。読んだ後も何の反応も示さず、スルーするか、陰であれこれ詮索する人のほうが圧倒的に多いでしょう。ご意見ありがとうございました。その方には直接メールで自分の考えをお返事しておきました。

 

 

 私の場合はライターで生計を立てている身なんで、モノを書くときは実名で書くし、酒の業界の発展にプラスになると思えば、『悪口』ととらえられようが、信念を持ってハッキリ書きます。業界に対するクレームの声を聞いても聞き流すとか、自分には直接関係ないからと他人事を決め込むのは、これまで育ててくれた酒の業界への礼儀に反すると思っています。

 

 意見を寄せてくれた方は「ブログで不特定の人に読ませなくても・・・」と懸念されておられました。確かに私自身、投稿保存ボタンを押すときは本当に逡巡します。好きこのんで「後味が悪い」ことを書いているわけじゃありませんから・・・。

 

 これまで地酒まつり実行委員会では反省会をきちんと開いて、私も呼んでいただき、いろいろ意見を言わせてもらっていました。

 しかし、『吟醸王国しずおか』の制作を始めた頃から、特定の蔵元に肩入れしていると思われたのか組合からは距離を置かれ、敬遠されるようになりました。組合員の方から見たら、付き合いにくいと思われているのでしょう。それはそれで仕方ありません。『吟醸王国しずおか』を組合のプロモーションビデオではなく、私自身の20年の取材の集大成にしようと決めたときから、逆風を受けるのは覚悟していました。

 

 そんな中、個人ブログでしか自分の所感や提言を主張できないのであれば、ここを利用するしかないし、書きたいことが自由に書けないのなら、ブログをやる意味がないし、業界に対しておべっかしか書けないなら、ライターの資格はないと考えるようになりました。

 とくに、このところ、日本酒の置かれた環境の厳しさを、他の取材でも知る機会が増えただけに、20年以上、外から静岡酒をウォッチングしてきた自分だからこそ出来る提言があり、ニュートラルな立場だからこそ辛いことも言えるし、自分ぐらいしか言える人間はいないだろうと(不遜な言い方でスミマセン)。

 

 

 言葉というのは難しいもので、キツイと思われるほど力のある言葉でなければ、あるいはオープンな場所で発言しなければ、読者を振り向かせ、考えさせるきっかけにならない、ということもあります。昨年、地酒まつりに対する指摘をした際は、想定以上のオオゴトになってしまいましたが、中には真摯に受け止め、今年につなげる努力をしてくれた蔵元もちゃんといたのです。

 

 

 

 ただ、先の記事は、読者の方からご意見をいただいて、クレームコメントを書きっぱなしの乱暴な記事で、『悪口』ととらえられても仕方ないと反省しました。言葉の表現っていつになっても勉強・修業の繰り返しですよね・・・。

 その上で、少し付け加えておこうと思います。

 

 800~1000人規模の立食パーティーでは、蔵元が自社商品を丁寧に説明したり試飲後の意見を聞くことは不可能だと思われます。だからといって「ただ飲ませればいい」では、初心者のお客さんは雰囲気に煽られ、飲みすぎ、各銘柄の印象などふっとんでしまって、トイレで潰れて、「やっぱ日本酒は体にあわない」なんて思うかもしれません。

 

 

 

 私は、初心者のお客さんほど、丁寧にゆったり試飲できる雰囲気を作ってあげることが肝要だと考えます。少なくとも、試飲と飲食のスペースは分けてレイアウトしたほうがいい。日本酒をさほど飲みなれていない人は、飲食スペースである程度食事をお腹に入れてから試飲したほうがいいと思います。

 

 そして出来れば会場にコンシェルジュというか、困った時の「お客様係」のようなスタッフを各場所に配置してほしい。1000人規模の飲酒イベントなら必要不可欠だと思われます。

 

 当然、酒造組合の組合員だけでは数が足りないでしょうから、小売酒販組合や利き酒師の資格を持った飲食のプロたちの手を借りる。ボランティアで助っ人に行こう!という人は必ずいます。

 私も過去再三、しずおか地酒研究会でお手伝いしますよ、と提言してきましたが、聞き入れられませんでした。ただの愛好会にすぎない地酒研では役不足なら、組合が依頼できるしかるべき団体にお願いしたらどうでしょうか。

 

 彼らには少し早めに来てもらって先に試飲を楽しんでもらうか別の機会に慰労の場を設けるなりして、とにかく10月1日は初心者のお客さんがどう楽しめるかを基準にプログラムすべきでしょう。でなければ、落ち着いて飲食できる着席スタイルに戻し、5000円以上でも行きたい!というお客さんの満足度を上げる方法に戻すほうがベターでは、と思います。

 

 

 

 

 春に、東京でdancyu20周年記念パーティーに参加したときは、試飲会場には簡単なおつまみだけ並べ、名物料理は別会場で給仕する工夫がされていました。私は何も食べず、ずーっと試飲会場でいやしく飲んでいましたが、試飲目的で来ている人には快適な会場でした。

 地酒まつり実行委員会の蔵元さんも、各地のイベントに数多く参加されていると思いますが、ホストの立場では見えないことがたくさんあります。一度は客の立場で参加されることをおすすめします。消費者の満足度を考える、という記事で言いたかったことはそういうことです。

 

 


紅葉前の古都トリップその2

2010-10-29 18:45:56 | アート・文化

 23日夜は京都へ21時頃戻り、宿のある祇園界隈をブラ歩きして、平野さんがかねてから「入りたいけど一人じゃ勇気がない」と目を付けていた縄手通りの路地裏の中華そば店へ。

 カウンター5~6席ぐらいの小さな店で、壁には古い映画のポスターがたくさん貼ってあって、祇園で遊んだ映画関係者なんかが腹ごなしに来るのかしらんと想像しました。ラーメンは私の好きな第一旭よりも麺が太くてコシがあって、スープは和風であっさりしていて、飲んだ後にはちょうどいいかも! 場所は覚えているんだけどお店の名前が最後まで解りませんでした(苦笑)。

 

 

 四条通に出て、来たバスに飛び乗って烏丸方面へ。ガイド本で見た『西村鮮魚店』という昼間は魚屋、夜は居酒屋という店に行きました。マンションらしきビルの1階の一角にあって、六角通りに面した魚屋さんは、もちろんこの時間は電気が消えていて、ショーケースもカラでしたが、奥へまわってみるとカウンターだけのスタイリッシュなバルが。

 

 

 日替わり入荷の魚メニューがずらり並ぶ中、青魚に目のない私は、シマアジ、シメサバをつまみに、地酒メニューに合った2種類(松の司、梅の宿)をいただきました。駿河湾や相模湾のアジに食べ慣れている私にとって、瀬戸内で上がったシマアジは、筋肉質というのかな、プリッとして旨みがのっていて、「アジがあるな~」とおやじギャグをかましてしまいました

 

 

 シメサバは、水っぽさがなく、実がしっかり〆てあって、ほんのり甘い酢がくどくなくって、「これは魚を知り尽くしたプロの仕事だな~」と唸ってしまいました。シメサバが大好物の『喜久醉』青島社長に食べさせた~い

 

 

 サバは関西では、ほんと、静岡人にとってのマグロ並みにメジャーな存在みたいですね。酢で〆ても美味しいし、焼き鯖も本当に美味しい。これが純米のぬる燗によく合うんですよね~。口うるさそうな客だと思ったのか、お燗番役の若いスタッフが、錫製の燗付け機『かんすけ』を使って慎重に燗を付けてくれて、「ちょうどいい温度! お兄さん、上手上手!」とついつい、上から目線のおばさん口調で褒めたら、ご主人が「おい、褒められたぞ」と冷やかしてました

 

 後でガイド本を見直したら、この店では私がウイスキーの中では一番好きな、アイラ島のシングルモルトが飲めるみたいで、魚のうまい北の島の酒だもんな~と、ボウモアの香りを思い浮かべました。

 

 ・・・でも「日本で獲れる魚に合う酒は、やっぱり日本酒だよね・・・」なんてなウンチクを際限もなくダラダラとつぶやきながら、京都ではおそらく初めて、こんなにも味わい深い刺身と酒の組み合わせが体験できたことを、この上なく幸せに感じました。静岡にも出来ないかなあ、魚屋が夜開く酒のバー・・・。

 

 

 

 翌24日は、10時30分から興聖寺の達磨忌へ。久しぶりにナムカラタンノーの『大悲呪』と『観音経』を読誦したら、腹式呼吸ができてないせいか、途中で何度も息切れしてしまいました。寺を訪れるたびに、ダイエットしなきゃ、腹筋を鍛えなきゃと、いっとき決心するんですが、帰りに美味しいものを食べちゃったりすると、ま、いっか、で終わってしまいます。これが俗世に生きる俗人の俗人たるゆえんでしょうね

 

 古田織部創建の寺だけあって、法要のあとは織部流のお抹茶をいただき、興聖寺特製のおろしなめこそばに舌鼓。上品なだしの味が香る、あっさりしたおそばは、二日酔いの腹に最適でした。

 

 

 午後はあいにくの雨だったので、街中を買い物がてらブラ歩きをし、夕食には、ガイド本に頼らず、よさそうな看板を見つけて入ってみようと、先斗町界隈をブラブラし、三条先斗町の小路にある『余志屋』という店に飛び込んでみました。扉を開けたら、カウンターに板前さんがズラリ。・・・なんとなく高そうな割烹料理店で、一瞬ビビったけど、ちょうど2席、キャンセルが出たから19時30分までならOKと言われ、偶然空いたのならこれも運だと思い、京都らしい湯葉の煮もの、だしまき卵、ぐじ(アマダイ)のから揚げ、やっぱりあると頼んでしまうシマアジとシメサバなどを頼みました。

 シメサバは『西村鮮魚店』よりもやわらかかった。・・・自分はご飯でも豆腐でも麺でも、かたいほうが好きなので、西村~のしめ方のほうが好みかな。でも、ぐじのから揚げやだしまきは、ホントに上品で洗練された味わいで、これぞホンモノの京の味でした。

 

 

 ご主人は見るからに貫禄ある板長さんという感じ。1階は7~8人のカウンターと小さな小上がり、2階に10席ほどの座敷がある、そんなに大きなお店じゃないのに、若い板前さんが3人ぐらい忙しく働いていました。

 ちょうど先斗町の踊りの発表会が終わった時間らしく、舞妓さん&お母さん、芸妓さん&だんなさんといったカップルやグループが、あっという間に席を埋め、平野さんはすぐ隣に可愛い舞妓さんが座ってお母さんに「おつかれさんどした」とワインを注ぐ姿に目を爛々とさせ、「こういうお店だったなんて感激~」と悦に入ってました。

 

 

 

 私は菊正宗を冷やで、平野さんはビール大瓶2本を飲み、しめに、じゃことかつおぶしの釜飯をいただき、余った分はおにぎりにしてもらい、20時すぎの新幹線で帰路へ。『余志屋』のことを後で調べたら、なかなか予約の取れない人気店らしくて、ホントにラッキーでした。

 

 

 

 

 『余志屋』といい、『西村鮮魚店』といい、『御多福珈琲』といい、お店巡りを愉しむという今回の旅の目的は120%ぐらい達成できた感じ  旅の醍醐味ってやっぱり飲食店のよしあしがモノを言いますよね~


紅葉前の古都トリップその1

2010-10-28 23:47:43 | アート・文化

 急に寒くなって秋を飛び越えていきなり冬になった陽気・・・。今年は紅葉が楽しめないんでしょうかねぇ  

 

 先週末は京都の興聖寺さんの達磨忌法要に行ってきました。10月第3日曜に行うので、紅葉シーズンにはちょっと早くて、参道のまだ青々とした楓が25℃近い夏を思わせる陽気の中、ちょっぴり所在なさげに風に揺れていました。

 

 

 今回も元静岡新聞の平野斗紀子さんをお誘いしました。日本舞踊や三味線・長唄を嗜む平野さんは京都の花街や歌舞伎などにも造詣が深く、年に何度も一人で通う京都通。今回は、二人して、「気になっているんだけど一人で入る勇気のない店を探索しよう」とお店巡りを楽しみました。

 

 

 

 23日昼は四条大橋のたもとにある北京料理『東華菜館』。かのヴォーリズが建てた唯一の飲食店で、エレベーターは1924年製のOTIS=日本最古のエレベーター!。よく洋画に出てくる、蛇腹式内扉に時計針のようなフロアインジケーターが付いていて、エレベーターマンがちゃんと乗ってます。

 ここ、学生時代から、一度中をのぞいてみたいな~と思いつつ、見るからに値段が高そうで一生縁がないと思ってた店でしたが、ランチならなんとかなるかも、と、思い切って入ったら、意外にもフツウにチャーハンやギョーザが食べられました(ラーメンはなかったけど・・・)。

 5階のテーブルフロアには鴨川に面したバルコニーがあり、一番見晴らしのいい角の席を陣取ったら、直射日光がモロに差し込んできて、日焼け止めなんてもう要らないとタカをくくって、UVケアをまったくしていなかった私は大慌て ・・・でも昼間っから飲む生ビールと日本人の口によく合う上品な味付けに大満足でした

 

 

 

 

 ランチの後は、ガイド本に載っていた寺町四条の『御多福珈琲』へ。地下1階のこじんまりしたレトロチックなカフェで、マスターが1杯ずつ丁寧にドリップで淹れるコーヒーは私好みの香りと丸みのバランスのとれたマイルドな味わい。一見客なのに気さくに声をかけてくれるマスターに、平野さんと「ここなら一人でも入れるね」と顔を見合わせニッコリでした。

 

 カウンターの隣に座っていた若い男性が、その隣の男性客やマスターとの会話の中から静岡市から来たとわかり、あれあれと思い、話をし始めたら、なんと、職業はイラストレーターで、「東京と京都の仕事が多いけど、地元では静岡新聞社の○○さんにお世話になっている」と、平野さんの親しい女性記者の名前が出てきたから、さらにビックリ! 世間が狭いのか、類は類を呼ぶ典型的な現象なのか、人の出会いって面白いですね・・・

 

 

 

 

 午後は平野さんおススメの上賀茂神社社家の西村家庭園へ。社家とは神社の広大な社領を管理する神官達が住んでいた家のことで、西村家の庭園は現存する社家の中では最も古い、養和元年(1181)に上賀茂神社神主・藤木Imgp3129 重保が作庭したものだそうです。

 神社のそばを流れる明神川の水を引き込み、曲水の宴を愉しむ小川を作り、その流れはふたたび元の明神川に返すという工夫がされています。

 

 

 ここも、あと1ヶ月経てば見事な紅葉が拝めたことでしょう。それにしても明神川沿いの苔むした土橋や土塀、妻飾りの棟の低い母屋など、この一帯の社家のたたずまいは、絵にかいたような古都の情景。国の上賀茂伝統的建造物群保存地区に指定されているそうです。この日は工事でシートがかかった土塀が多く、ちょっぴり興ざめでしたが、1ヶ月後の紅葉シーズンにはさぞかし見栄えがすることでしょう。

 

 

 

 

 北の上賀茂神社からグーッと南下し、夕方は奈良国立博物館でこの日から始まった『第62回正倉院展』へ。17時30分以降はオータムレイトタイムで入場料が安くなり、なおかつ日中ほど混雑してないだろうと思ったのですが、今回の目玉である世界唯一の古代五絃琵琶こと『螺鈿紫檀五絃琵琶』は、東京国立博物館の阿修羅展のときのように、行列が展示物の周りで何重にも管を巻いていて、立ち止まってゆっくり観ることも出来ませんでした・・・ 

 でも1300年前のものとは思えない、完璧な美しさをまざまざと見せつけられ、まるで琵琶自身が命を持っているのではないかとさえ思えました。

 

 

 

 正倉院展では古文書のコーナーは地味なせいか、わりと空いていて、閉館時間が迫っていたのでササッと眺めるだけにしようと思っていたら、『駿河国』とか『遠江国』と書かれた正税帳を見つけ、おおーっと足を止めました。

 ご先祖様たちが納めた税の帳簿が、平城京に届けられ、正倉院で大切に保管され、1300年後の子孫の前に現れる・・・税の帳簿って、ホントにその時代に生きた人々の暮らしの証ですものね、五絃琵琶とはまた違う価値があると思います。

 正倉院展は11月11日(木)まで開催中です(期間中無休)。静岡県民は古文書コーナー必見ですよ!

 

 つづきはまた明日。


消費者の満足度を考える

2010-10-25 20:11:27 | 地酒

 先週20日に東京で、静岡県の川勝知事と、かっぱえびせんやポテトチップスでお馴染み、日本を代表するスナック菓子メーカー・カルビー㈱相談役の松尾雅彦さんの対談を取材しました。
 

 最初、なんで県知事が東京の菓子メーカーと?と思いましたが、松尾さんは『日本で最も美しい村連合』というNPO活動の旗振り役をされていて、馬鈴薯産地として縁のあった北海道美瑛町など、全国で過疎化にめげず、自然景観や生活文化を大切に守ろうと頑張っている町や村を「美しい村」に認定し、活動をサポートされているんですね。

 

 

 「美しい村」運動というのはもともと80年代、フランスやイタリアで合併や都市化の波を受けて美しい農村がズタズタに開発されていくのに危機感を覚えた人々が始めた全世界的なムーブメントで、松尾さんは98年のフランスワールドカップに日本サッカー協会オフィシャルスポンサーとして川渕会長らに帯同して現地に行かれた際に、その運動を知り、美瑛町長に話し、日本でもやろうと立ちあがったそうです。

 

 2005年に全国7町村でNPOを立ち上げ、現在は39まで参加自治体が広がったそうです。参加するには、景観を損なう商業看板を立てないとか、地元の生活文化や伝統芸能の保護に努めているとか、いろいろ条件があるようで、審査をパスしないとメンバーに入れてもらえないとか。静岡県の参加自治体は今のところゼロですが、「食と農の6次産業化」に力を入れる川勝知事も身を乗り出し、さかんに合槌を打っていました。

 私もノートを取りながら、いちいちうなずくことばかり。大いに勉強させてもらいました。たとえば―

 

日本の町おこし村おこしのやり方は違うのではないか。日本ではまず農業を活性化させればなんとかなるという発想で、アグリツーリズムのような体験型メニューに力を入れるが、そもそも農業は生産活動で、観光は消費活動。ふだんコツコツ働いて休みがとれたらパーっと楽しむ・・・そういう都会の消費者にコツコツ生産活動をさせるよりも観光が持つ消費の力を伸ばすべき。

 

旅行者は旅先でアメニティのよさを体験しないとリピーターにはならない。そのため食と泊の内容を充実させる必要がある。今、日本の大都会には世界中のありとあらゆる美食が集結し、都会の人は食情報に非常に敏感。そういう流れに農村がついていけていない。フランスやイタリアでもその点を考え、腕のいい一流シェフに田舎で出店させるなど食・泊のクオリティを高める努力している。

 

 

カリフォルニアワインを世界的に有名にしたのはナパバレーのロバート・モンダヴィ。彼は1966年に父から蔵を継承し、美味しいフランス料理店づくりに力を入れた。農村の食生活が豊かでないといいワインは作れないと考えたから。いい店を作ったことが、多くの人をひきつけ、結果的にブドウ栽培やワイン醸造の質を向上させた。

 
 
 
 
 

 

 

 話を聞いていて、ふと地酒イベントの食事のことを思い出しました。昨年沼津で開催した静岡県地酒まつりでは、一昨年までの着席フルコース料理ではなく、立食スタイルで客はワンコインでつまみを買うという方法に変え、料金はリーズナブルになって参加者が増えたものの、ブースで酒をもらってつまみを屋台で買って両手がふさがり、しかも飲み食いするスペースもなく、一昨年までの参加者は戸惑っていました。

 
 私がそのことを含め、イベントとしての問題点をブログで指摘したら、県酒造組合理事会から抗議文が来て、参加者にとってのアメニティを大切にしてこそのイベントではないかという自分の思いが通じず、哀しい思いをしました。

 
 

 今年、静岡で開催した地酒まつりは、ブログ事件以来、組合から排除扱いされている私がノコノコ行っても・・・と思い、参加を遠慮し、後日、常連参加している人に訊いたら「去年と同じだった。飲食スペースが足りなくて、土足で上がるステージに酒器や皿を置かざるを得ないお客さんもいて気の毒だった」「若い人が増えたのはいいけど、自分の酒量がわからずトイレでつぶれて戻している人がかなりいた。あんな風景は今までの地酒まつりでは見たことがなかった」とのこと。

 
 もちろん大多数のお客さんは、“2000円で県の全銘柄が飲み放題こそが最大のアメニティ”と実感されたと思いますが、みなさん全員、ホントに気持ちよく飲んで満足して帰っていただけたのか、なんだか心配になりました。よけいなお世話だと組合からまた文句を言われそうですが・・・

 
 

 

 

 20日の知事対談を翌21日に書き上げて、ホッと一息。22日夜は清水で『駿河路酒メッセ』という静岡市清水区の蔵元によるイベントがありました。

 

 私、例年はありがたいことに招待券を頂戴するのですが、今年はまったく音沙汰なく、料理を担当するという蒲原の料理店「よし川」さんから、メニューの相談をいただいて、日時と場所を知った次第。知り合いの由比の桜エビ加工会社の社長さんからも「招待されてるんだろ、一緒に飲もうな」と声をかけられたのに返事のしようがなく、吟醸王国しずおかノミの市の件で正雪さんにお願いにあがった際、事務所にチラシが貼ってあったので「まだチケットは買えますか?」と訊ねたら売り切れだと言われて、自分から招待券来ないんですけど・・・な~んて言いだせるはずもなく、そのままになってしまいました。22日、締切明けで空いていたのに「やっぱり排除されてるのか」と落涙・・・

 

 

 今日(25日)、別件でお会いしたアナウンサーの國本良博さんが22日に参加したと聞いて、よし川さんの料理のことが気になって訊いたところ、「今まで参加した地酒イベントの中で、料理は一番よかったんじゃないかな」と絶賛していただきました。酒の事では、私につねに本音を話してくれる國本さんだけに、本当に我が事のように嬉しかった。よし川さん、よかったですね、苦労された甲斐がありましたよ

 

 

 食にしろ酒にしろ、一次・二次・三次産業を掛けたり足したりして「六次化」を目指す時、一次や二次が、一番二番に優先されるわけではない。むしろ、三次産業とその先につながっている消費者の声が優先されるべきではないかと、カルビーの松尾さんも指摘しておられました。

 
 

 地域において、作り手に多くの制約や事情があるのは当然です。「理解してくれる人だけに食べてもらえばいい、飲んでもらえばいい」という考えは、一時は通用するかもしれませんが、消費者の理解度・満足度が時を追うごとに少しずつ変わっていくことも意識しなければいけない、と思います。


御前崎総合病院コスモスだより

2010-10-21 09:52:13 | 社会・経済

 以前、STOP温暖化キャンペーンの取材でお世話になった御前崎総合病院花の会の塚本隆男さんから、素敵な季節のおたよりをいただきました。これ、一見、フツウの花畑に見えますが、病院事務棟の屋上に植えたコスモスなんですよ

 塚本さんはいつも夏はヒマワリ、秋はコスモスの写真を送ってくださいます。画面をながめ、一人癒されてましたが、秋雨が続くと、このブログを訪ねてくださった方にも、癒し気分をおすそわけしたくなります。

 

 病院職員の自助努力で屋上に花畑を造り、屋上緑化によるCO2&エネルギーコストの削減に努め、同時に患者さんやご家族に癒し効果をもたらし、定期的なコンサート開催で地域コミュニティの輪を広げる・・・こんな素敵な仕掛けがある病院って、日本でもホントに貴重な存在だと思います。病気になったらこういう病院に入院したいな~

 

 以下、塚本さんからのメールです。明日(22日)には全国花のまちづくり大会で努力賞の表彰を受けられる由、おめでとうございます&いつもいつも本当にありがとうございます

 

 

 

 

 報告が遅くなりましたが、10月16日(土)にコスモス摘み&コンサートを行いました。今年は、夏の暑さでコスモスの成長を随分心配しましたが、当日は8部咲きでコスモスも摘み頃、見頃となりました。2、3日前までは背丈や、蕾の付き具合をとても不安に思っていたのですが、花の方が見て欲しいと言っているように咲き出してくれました。そんなふうに感じたのです。

Photo_2

 

 

 

 コスモスコンサートは、3年前から東京女子医大の看護学生にお願いをしています。彼女達のコーラスは素晴らしいものです。当Photo_3日の参加者は571名と過去最高でした。今週からは、外来患者さんにコスモスのプレゼントを始め、こちらも毎回好評で有りがたい事です。

 

 

 

 全国花のまちづくりで今回努力賞をいただけることになり、22日に東京で表彰式があります。全国の花壇や花畑の作り方を見られるのでとても参考になります。

 11月21日には全国癒しの環境研究会(松江市)で花での癒しと屋上緑化について発表してきます。現在最後のスライド作りです。まだまだ暑い日があるようです。ご自愛下さい。塚本隆男