杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

箱根湯本のはしご湯

2009-04-29 16:12:08 | 吟醸王国しずおか

 本格的なGW突入。昨年は京都の禅寺で集中座禅という優雅?な休日を過ごしましたが、今年は休めそうにありません。

 

 

 今日(29日)午前中はSBS静岡放送局内で『しずおか吟醸物語』の仮編集チェック。ディレクター井内雲二彦さんが徹夜で編集してきたVを、SBS編成局の担当プロデューサーと一緒に試写し、修正の指示出しをしました。初めて1時間番組としてつながった映像を観て、とにもかくにも感無量でした。

 

 今(29日午後)は、井内さんの修正作業中。束の間の空き時間、家に戻ってブログを書いています。修正が終わり次第、ナレーション原稿を練り直し、明日(30日)・明後日(1日)とナレーション録音。長年の酒友で、吟醸王国しずおか映像製作委員会の個人会員でもある國本良博さんと水野涼子さんにお願いしたかったのですが、スケジュール的にNGで、別の局アナにご尽力いただくことになりました。6日放送に向け、遅くとも4日までに完成させなければならず、ギリギリの編集作業が続きます。

 …私自身は今回、あれこれ指示を出すだけで、実際の作業にずっと立ち会うわけではありませんが、休みを取ってどこかに遊びに行くなんてわけにはいきません。放送日がGW最終日となったことで、結局これに関わった人たちはGWまるまる潰れるわけです。あ~あ、外は絶好の行楽日和なんですよね~。大雨でも降れば気が晴れるのに!(苦笑)。

 

 

 そんなわけでゆっくり休めないGWを目前に、昨日は県NPO情報誌の取材で御殿場のエコ活動団体を訪問し、その足で、〈東京新聞暮らすめいと〉小田原観光の補足取材で、箱根湯本まで車を走らせました。担当の観光ページでは必ず日帰り温泉施設を一ヶ所取り上げなければならないのです。

 箱根は何度か宿泊していますが、日帰り温泉は未経験。先日の小田原取材では、取材協Dsc_0118 力者のかたに「箱根湯本駅から無料送迎バス3分で便利だから」と、〈箱根ベゴニア園ひめしゃらの湯〉を推薦していただき、ひとっ風呂浴びて帰ったのですが、交通便利という条件を最優先しなければ他にもあるんじゃないかと思い、昨日は夕方、湯本に着いた後、2か所、“はしご湯”をしてきました。

 

 

 1か所は、情報誌やインターネット等でやたら人気があるという天山湯治郷。週末や休日には入場制限をするらしいです。メイン施設の〈ひがな湯治・天山〉は入館料1200円、浴場だけの〈かよい湯治・一休〉は1000円。ネットの口コミ情報を見ると「本当にゆったり温泉を楽しみたい人には一休がおススメ」という意見が多く、200円でも安いなら、と、一休に入館してみると、下足箱も脱衣ロッカーも有料。しかも脱衣ロッカーは大浴場の中!脱いだら目の前が湯船です。

 Imgp0842 シャワーなし、バスシャンプーもなし。なんというのか、本当に昔の湯治場の雰囲気を再現したという感じかな。これはこれで、他にはない魅力だと思いました(脱衣ロッカーの横に下着の自動販売機があったのには笑えましたが)。

 ただし、脱衣ルームがないということは、髪を乾かすスペースもないし(トイレの洗面所で乾かしている人がいました)、もちろん休憩所もない。本当に湯船だけなんですね。

 温泉特集の記事ならいいけど、シニア世代ののんびりゆったりの日帰り鉄道旅行の記事で、旅の終わりに立ち寄る施設ならば、もうちょっとゆったりできるほうがいいかなぁというのが素直な感想。この日も混んでいたメイン施設天山のほうは、入り口まで行って「ゆったりできそうもない」という印象だったのでパスしました。

 

 

Imgp0846  もう1か所は、天山湯治郷の手前にある〈湯の里おかだ〉。ホテルおかだという大型観光旅館が、裏山の一角に造った日帰り温泉施設です。たぶん、もとは他の旅館だったか、おかだの別館だった施設をリニューアルしたんじゃないかなぁという感じ。

 入館料は1600円(ネットクーポンで300円引き)と割高ですが、下足箱、脱衣ロッカー、タオル2枚(バスタオル・フェイスタオル)無料。広々とした無料休憩所やマッサージルームもあり。脱衣ルームが広くてきれいで、ドライヤーや基礎化粧品完備の洗面台がたくさんある。これ、女性はうれしいんですよね~。

 浴場自体は、ふつうの日帰りスパ施設にあるような感じでした。木造で趣のある〈一休〉の浴場のほうが絵になるかな。

 

 

 駅に近くて便利なひめしゃらの湯、湯治場の魅力がある一休、トータル施設として整っているおかだ…どれもに一長一短あり、さてどれを記事で取り上げるか、思案のしどころです。

 

 自腹の取材リサーチながら、はしご湯で束の間のブレイクタイムをとり、仕上げに〈おかだ〉で足つぼ&ヘッドマッサージまで受けて、箱根の夜道をのんびりドライブして帰りました。

 GW中、湯本方面に行かれる方がいましたら、ぜひいずれかにお立ち寄りいただき、ご感想などお聞かせ願えれば幸いです!。


豚インフルエンザのニュース

2009-04-27 11:49:12 | 社会・経済

 私は今年1月末に風邪を引き、こじらせ、そのまま花粉症に突入し、ひのき花粉に特に弱いせいか、4月に入ってもずーっと咳や鼻水や喉のイガイガが治らずにいます。「黄砂の影響じゃない?」とか「咳が長引くなら結核かもよ」等など、周囲から脅されてはいるものの、一度呼吸器内科で診てもらって異常がなかったので、とくに今は薬も飲んでいないのですが…。

 とにかく、外出時のマスクと、帰宅時の手洗いうがいの励行は心がけています。

 

 『豚インフルエンザ』がニュースになっているのを見て、オクラホマで麻酔看護師をしている妹にメールしたところ、今朝(27日)の時点でこういう返事がきましたので、参考になれば。

 

◆swine flu(豚インフルエンザ)は、日本でも簡単に手に入る Tamiflu(タミフル)と Relenza(リレンザ)が有効なので普通のA型インフルエンザと同じように治療できるよう。

 

◆今のところ、こちら(アメリカ国内)では、メキシコへの旅行者に対し、普通のインフルエンザ予防行動をするのと、インフルエンザにかかったら重症になりがちな子供、老人、ぜんそくなどの呼吸器疾患持ちの人、免疫が低下している人は、TamifluかRelenzaを持参するようにCDC(アメリカ疾病対策センター)のサイトで警告している。

 

◆ようは手洗いを心がけて、洗えないのならハンドアルコールジェルを頻繁に使う、咳をしている人のそばに寄らない、などの常識に従う程度で大丈夫だと思う。普通のインフルエンザ予防注射は効かないので注意を。

 

◆中南米方面へ渡航予定の人は、特にパニックする必要はないと思うが、ハンドアルコールジェルは十分に持参するよう(アルコール成分60%以上)に。

 

 

 新型インフルエンザと聞くと、ドラマや映画の影響もあって、必要以上に深刻に考えがちですが(もちろん今後、深刻な状況に陥る可能性がないとはいえませんが)、今はとにかく、手洗いとうがいという風邪予防の基本を改めて叩き込んでおくべきですね。ニュース報道でも、不安をあおるばかりでなく、こういうことをきちんと呼びかけてほしいと思います。


地酒本のロングセラーとは

2009-04-26 14:41:07 | しずおか地酒研究会

 25日(土)からGWに突入という人もいらっしゃるみたいですが、あいにくのお天気でしたね。25日は井川の山間地への取材予定が雨天のためキャンセル。テレビで阪神戦(快勝!)を見ながら本棚の整理をし、静岡県産品愛用活動推進協議会から頼まれていた地酒コラムの原稿書きの資料をかき集めて再読しました。

 

 コラムは3回の連載予定で、1回目は「なんで静岡が吟醸王国?」、2回目は「杜氏の技能王国」。県の予算で運営しているホームページなので、特定の銘柄の宣伝はNG(サミット酒に選ばれたのが「磯自慢」は?、「静岡の酒」と書け)とか、過去に静岡じゃ地酒が売れなかったとか名産地じゃなかった云々の自虐的な表現はNG等など、いろいろ口うるさいことを言われ、一度はキレそうになりました(苦笑)が、自分のちっぽけな沽券にこだわって、せっかくの静岡酒PRの機会をチャラにするのも大人げないと思って指示に従い、現在、3回目を執筆中です。

 最終回は自分の仕事を振り返る意味で「メディアがどう伝えたか」がテーマ。メディアや地域おこし人などが仕掛けてブームになったモノとの違い、地場産品の価値の伝え方などを考察してみたいと考えています。

 

 

 さて、久しぶりの本棚点検で、駆け出しライターの頃よく読んだ本を懐かしく紐解きました。その中から、昔の静岡酒の評価について書かれたものを紹介しましょう。

 

『日本の銘酒地図』 山本祥一郎著 昭和46年刊

 酒評論家の著者がスポーツ紙や旅行雑誌で執筆したコラムの集大成。銘柄紹介というよりも、全国各産地の特徴をざっくりまとめたもの。昭和40年代の静岡県産酒をどう紹介しているかというと…

 

県の醸造試験場の話によれば、県内清酒52銘柄、灘もの10銘柄、伏見8銘柄、東北などその他のもの12銘柄の計82銘柄の県下に行き渡っている酒を集めて分析したら、県産酒の平均は-6,8で、他の地方のものは-5.78だった(酒の甘辛はプラスマイナスで示され、プラスの多いものほど辛く、マイナスの多いものが甘い)。県外から入ってくる酒も、甘い甘いといわれながら、やはり地元のもののほうが甘かった。

 

◆醸造試験場の検査結果ではないが、静岡県の酒は確かにマイルドな甘口が圧倒的に多いようである。一時は雑味やクセのある味を狙ったこともあったらしいが、きれいな型に変えたということである。県酒造組合の宣伝文句も“ソフトで飲みやすい静岡県産酒”と唄っている。

 

◆ご当地は富士山のお膝元にあるが、その富士や周辺の山々の水はあまりにもきれい過ぎて醗酵には弱いといわれる。そこで智恵を絞った挙句、この水を電気分解し、アルカリ性イオン水を造り上げた。“これこそ灘の宮水にも匹敵する成分がある!”というので新聞もいっせいに書きたてたものである。曰く、“宮水の合成に成功、静岡でも灘酒ができる”というものだが、水そのものは確かに醸造に適する諸成分を含有しても、醸造過程において当初含有していた諸成分が妙な風に分解されてしまい、どうも予期した通りにはならない―これ10年も昔の話である。

 

◆富士山といえば県酒造組合も県産酒の愛用促進キャッチフレーズに“山は富士、酒は静岡県産酒”というふうに、当初は看板の富士を前へ大きく出していたようだが、そのうちに灘の「白雪」のほうが全国テレビネットなどで“山は富士、酒は白雪”とやりはじめた。白雪は静岡県下の酒屋が束になってもその販売量にははるか及ばない。そのうちに“白雪のほうが富士山の本家になった感じですなぁ”と酒造組合の当事者まで苦笑する始末である。

 

◆当県は熱海や伊豆など大掛かりな観光地をかかえ、酒の消費面ではゆうに6大都市に次ぐほどの活気を見せ、県民の経済性も豊か。地元の酒も売り方次第では伸びる可能性がなくはないが、“県民性のためですか、県産酒よりも他県のテレビ銘柄などにとびつく傾向が強くってねえ”と組合専務。“他県のものにとびつくならそれでもいい。そんなに県外のものがいいなら、そういう県民の舌の好みに合わせたものを作ったらいいじゃないかということになって”造り始めたのがソフトで飲みやすい酒だという。

 

◆余談ながら今年の3月から4月にかけて伊豆長岡にある伊豆富士見ランドというレジャーセンターで全国銘酒展というのが催され、東京農大の住江・山田両先生、佐々木久子女史、柳家金語楼、水の江ターキーさんなどと一緒に監修者で引っ張り出された。全国各地の代表的な大手(灘や伏見からは9銘柄ずつ)64銘柄がそろった中に、地元静岡の小さな酒蔵が4軒出品していた。“地元だから出品したんでしょうが、それにしてもこんな小さな蔵元がよく並べたものですね”と山田先生も感心していた。何しろ他に並んだ全国の酒屋とは遥かにスケールの違う小メーカーなのである。味のほうはまずは精一杯に主産地の大手に似すべく努力したあとだけはうかがわれた。

 

 

 文中にあった〈県の醸造試験場〉とは、静岡県工業試験場の誤りでしょう。〈組合専務〉というのは栗田覚一郎さんのことだと思います。栗田さん、思いっきり自虐的なコメントしてますよね(苦笑)。巻末に〈全国主要酒造家・問屋一覧〉というリストが載っていて、静岡県では51の醸造元の連絡先が記してありましたが、なぜか〈開運〉〈磯自慢〉という今現在、静岡県を代表するトップ2の名前が載っていないんですよねぇ??

 

 ちなみに、静岡県を紹介するページは5ページで、代表銘柄として〈富士正〉1社だけ載っています。兵庫県のページは16ページで銘柄は19社。各県の紹介ページは平均5~7ページぐらいなので、兵庫だけ突出してます。日本の銘酒地図ではなくて、日本の銘酒勢力地図というタイトルのほうが正確じゃないでしょうか(苦笑)。

 

 時代は進み、平成15年に松崎晴雄さんが、同じように全国各地域の酒の特徴をまとめたガイドブックを出版されました。

 

 『日本酒のテキスト2 産地の特徴と造り手たち』 松崎晴雄著 平成15年刊

 

 1都道府県あたりの紹介ページ数は2~3ページ。静岡県の紹介ページは兵庫県と同じ3ページ。昭和40年代に評論家に上から目線で見下されていた静岡酒が、その後、いかに自助努力して吟醸王国に生まれ変わったかをコンパクトにまとめてくれています。しずおか地酒研究会のことを紹介してくださっているので、会でも再三PRさせていただきました!

 

 私は昭和40年代の地酒の味を知らないので、山本氏の本は歴史書を読むような感覚。ただ歴史書にしては偏重的かなぁ…。栗田さんの自虐的コメント、すごくリアルで面白いんですけどね。

 

 私が静岡酒を呑み始めて20年ちょっと。この間も、静岡の酒質は変化し続けています。さすがに、みりんや梅酒など一部の変化球を除いて、日本酒度がマイナスの高数値になるような酒はありませんが、甘口→辛口→やや辛と変化したり、酸度も低酸一辺倒(=淡麗)だったのがちょこっと濃醇にブレたりしている。静岡吟醸のハイレベルな造りによって、県産酒質がガーッと向上し、吟醸造りがスタンダードになって、次は各蔵ごとの差別化・個性化です。6年前に松崎さんが書かれた内容も、今はある意味、時代遅れになりつつあります。

 

 ライターである以上、私も、自分が書いたものが末長く読まれてほしいと願っていますが、現在進行形の世界を書くことの難しさを、過去の地酒本を紐解いて改めて実感します。酒のロングセラーはあっても、酒の本のロングセラーって難しいですよ、ホント。 

 


しずおか吟醸物語放送日のお知らせ

2009-04-24 10:34:29 | しずおか地酒研究会

 国民的アイドルの酒の失態がトップニュースになっています。ひと頃は、飲酒がらみの事件や事故で「酒」の文字がニュースに出ると、日本酒だけが悪者にされたものですが、最近は「ビール」「焼酎」などアルコールの種類をきちんと報道してくれるのでホッとしています。…逆に、日本酒が呑まれていないことがわかってショックだったりして(苦笑)。

 

 さすがに公然で全裸になったことはありませんが、私も20数年の飲酒歴で、数々の恥ずかしい失態を経験してます。しずおか地酒研究会を主宰してからは、ホストとして自制せざるをえない立場になったので、会がニュース沙汰になるような失態は今のところ起きていませんが、年々、酔いから醒める時間が長くなり、体質的には弱くなっているにもかかわらず、呑み始めるとブレーキが利かなくなる呑み方をするようになり、気をつけなければと思っています。

 

 私が住んでいるアパートの1階には手作りパンの店があり、とても重宝しているんですが、先日、お店の奥さんに「酔っ払わないように呑むにはどうしたらいいですか?」といきなり聞かれて面食らいました。顔を合わせることはあってもほとんど会話をしたことのない奥さんから、初めて掛けられた言葉がこれ。私がお酒にかかわる活動をしていることは、新聞か何かで知っていたそうです。

 いきなりだったので、「酔う酔わないは、そのときの体調や精神的なものと関係するので、一概にこうとは言えないけど、食事をしながら自分のペースでゆっくり呑むのがいいと思いますよ」と応えるのが精いっぱいでした。

 

 私の場合、食事の出ない・あるいは出てもほとんど口をつけない試飲会の出席が多いので、事前に時間のある時は必ず乳製品をお腹に入れて、胃にバリアーを張っておくよう心がけています。もともとはアルコールに弱い体質だけに、酒のプロたちのペースに食らいつくためにいろんな対処法を試し、失敗も繰り返し、40代半ばまでこの方法で胃や肝臓を壊すことなく、なんとかやってきました。

 

 

 そういえば、昔、静岡新聞社から『地酒をもう一杯』を出版し、県内の書店さんたちが集まった記念総会か何かで、著者代表で講演を頼まれた時、同じように「酔わないように呑むにはどうするの?」と書店のおやじさんに質問され、自分は乳製品を胃に入れておくと応えると、「いちいちそんな面倒なことしてられっか」と失笑されたっけ…。答えの内容をバカにされたことよりも、若い女が酒のことをエラそうに話すのが気に入らんという空気が会場にまん延していたのをピリピリ感じ、いたたまれない思いをしました。

 その後の懇親会で、当時、出版部門を統括していた静岡新聞社の山中崇弘常務が「本もお話も素晴らしかった」と声をかけてくださり、さらにしずおか地酒研究会に入会してくださったことで溜飲を下げましたが(苦笑)。

 

 それにしても「酔わないように呑むにはどうすればいい?」という質問に、確かな答えなんてあるんでしょうかね。蔵元や酒屋のみなさん、どう答えていますか?

 

 

 さて、かねてよりお知らせしました『吟醸王国しずおか』テレビ版〈しずおか吟醸物語〉の放送日と放送時間が確定しました。

 以下は、テレビ版のプロデューサーも務めるカメラマン成岡正之さんからのメッセージです。

 

◆ しずおか吟醸物語

 SBS静岡放送・オフィスゾラ静岡共同製作

 2009年5月6日(水・振替休日) 午前9時55分~10時50分

 

 SBS静岡放送が、ゴールデンウィークに「GW・SBSドキュメンタリーウィーク」と称して5/4~5/7までの4日間、同じ時間帯に、4つのテーマで放送するドキュメンタリー作品の一つとして放送されることになりました。

 1発目の5月4日は〈硫黄島で託された写真〉。栗林忠道陸軍中将の通信担当官サカイタイゾウは、硫黄島総攻撃の指令を栗林中将が出した日に米軍の捕虜となったが、ある一枚の写真を託された・・・・・。このような硬派な本格ドキュメンタリーが4本、4日間連続放送されます。わが〈しずおか吟醸物語〉はその中でも異色の作品になると思います。
  
 内容的には、若き蔵元杜氏(青島孝さん)を軸に、静岡の吟醸造りに熱き情熱が注がれているさまを描きます。静岡、とくに志太地域の酒造りの灯りを守り、次世代にどう伝えるか、
職人のものづくりに賭ける生き方をダイレクトに映し出し、最前線で活躍する職人とそれを支える人々の姿を通して、静岡吟醸の魅力と匠の技が伝わる作品を目指します。

 ゴールデンウィーク最終日の午前中という放送時間帯になりましたが、ぜひ多くの皆様にご覧いただき、映画制作へのステップにできればと思っています。よろしくお願いします。(成岡正之)

 

 

 

 この春、番組大改編が話題になったTBS・SBS系列では、とりわけ報道やドキュメンタリー制作に力を入れ始め、私たちの地酒ドキュメンタリー制作は、その流れにピンポイントに合ったようです。いずれにせよ、映像制作の素人だった自分の大それた挑戦が、こうして公共の電波にのっかって、多くの方の眼に触れるようになるとは、想像もしていない展開です。

 

 昨年、資金集めのために手探り状態で作ったパイロット版。応援してくれる人からは温かいエールをいただき、批評者の目で見た人からは手痛い批評ももらい、多くのことを感じ、考えさせられ、まだ自分の中では自信がなくて、映画の完成時期をはっきりとは決めかねている段階でした。

 今回、テレビ版を担当する制作のプロたちから、「パイロット版、改めて何度も見直してみると、よく出来ているなぁと思ったよ」と慰め?られましたが、自分の中では、被写体となった蔵元や杜氏たちの素晴らしさが、ちゃんと表現しきれているのか、その価値が伝わる映像になるのかどうか、まだまだ自信は持てません。

 

 その意味では、今回、プロが編集するテレビ版、自分にとって一つの指針になると思うし、新たな創作意欲を刺激してくれると期待しています。

 

 

Sizo

 

 なお、私の本来のフィールドワークである出版物では、先週、雑誌〈sizo;ka〉最新号が発行されました。

 連載コーナーの〈真弓の酒蔵スケッチブック〉では、新杜氏を迎えた初亀醸造と、2月末に天晴れ門前塾の大学生たちを連れて訪問したときのお話、学生の感想レポートを紹介しました。県内主要書店にて絶賛発売中。ぜひご覧くださいね!

 

 


人物描写の妙

2009-04-22 20:05:50 | 映画

 先週まではアカデミー賞ノミネートの重厚な秀作を立て続けに観て脳を刺激させましたが、今週に入って2本、肩肘張らずに楽しめる娯楽作品を観ました。

 

 1本は『レッドクリフpartⅡ』。三国志は学生時代、吉川英治本で〈官渡の戦い〉あたりまで読んで挫折してしまったきりだったので、昨年の『レッドクリフpartⅠ』の公開は本当に楽しみにしていました。曹操がすっかり悪役になっちゃって、悪役の割には線の細い俳優が演じていて、曹操より年下のはずの劉備を老けた感じの俳優が演じていたのになんとなく違和感を感じましたが、本作は彼ら君主よりも、その部下の周瑜や諸葛孔明ら名士たちが主人公なんですね。最初、ジョン・ウー監督が三国志を映画化するというニュースを知った時、確か周瑜役には私の好きなチョウ・ユンファが配役されると聞いたのですが、トニー・レオンに代わり、なんとなーくこれも線が細いなぁという印象。諸葛孔明役の金城武は、最初、全然イメージじゃない!と思いましたが、観た後は、知的で爽やかで案外適役かも、と思えました。

 

 関羽、張飛、趙雲はイメージどおり。関羽役の俳優さんは、確か、元寇を描いたNHK大河ドラマでフビライ・カーンを演じた人ではないかしら?曹操と関羽のからみをもっと観たかったなぁ。

 partⅠは、今の映像技術や撮影技術の凄さを見せつけられ、黒澤明の七人の侍もどきの戦闘シーンにも興奮しっぱなしで、あっという間でした。

 partⅡは、十万本の矢とか、火攻めの水上戦シーンなど、画になるシーンが圧倒的なデジタル映像の凄さで存分に楽しめました。基本的に、赤壁の戦いという限定した出来事の一部始終を追った作品なので、戦争アクション映画として楽しむ分には申し分ないと思います。

 

 …にしても、人物描写に物足りなさを感じるのは、三国志ファンの高望み?かな。黒澤明が撮っていたら、誰を主人公にどんな切り口で描いたのかなぁと想像します。黒澤作品の時代劇には、魅力的なキャラが必ずいますよね。本作では、周瑜と孔明の橋渡し役を務めた魯粛あたりを道化役としてもっと魅力的に描けばよかったのに…なんて思いました。

 

 2人出てきた女子は、なんだかえらい活躍ぶりでしたが、私的にはあんまり魅力を感じませんでした。この手の作品に女子を出すなら、時間は短く、その代りインパクトのある出し方がいいと思います。

 

 

 

 もう1本は『おっぱいバレー』。NHK朝ドラの〈ちりとてちん〉に出ていた青木崇高が好きなのと、コピーライターとしてこのタイトル名を一般劇場公開用作品に付けた製作者の感性が気になって(笑)、仕事の合間の時間つぶしにちょうどいいタイミングだったので観たのですが、これがなんとも期待以上に面白かった!

 

 1979年の北九州市が舞台で、中学校の男子バレー部顧問に赴任した綾瀬はるか扮する若い女性教師が、やる気のない男子中学生たちを奮起させるため、思わず「大会で1勝したらおっぱいを見せる」という約束をさせられ…というお話。実話がベースだそうです。

 

 BGMにふんだんに使われたフィンガー5、ピンクレディー、ユーミン、浜田省吾、ツイスト、永井龍雲、矢沢永吉、キャンディーズ等など70~80年代のJ-POPは、私がまさに中~高校生時代にリアルタイムで聴いていたものだけに、たぶんぜ~んぶカラオケで唄えます(笑)。映画で描かれた生徒たちとほぼ同世代なんですね。だから部活の合宿で初めて学校に泊った夜のこととか、図書館の本に落書きしたことなんか、ほとんど同時代に経験したことで、それだけで胸がキュ~ンとなるのです。

 

 顎の細いキツネ顔の綾瀬はるかの容貌は、昭和50年代風ではなかったけれど、タイトルに相反して?清潔感たっぷりの自然な演技で好感が持てました。同僚教師役の青木崇高、教頭役の光石研、父兄役の仲村トオル、ライバル校バレー部監督役の田口浩正は昭和顔?ですごーくリアル(笑)。実話ベースだけに、やっぱりキャストも当時の雰囲気を醸し出せる人じゃないとね。

 

 先生のおっぱいが見たいという不純でおちゃらけた動機で、思春期の男の子たちが一致団結して、ホントにバレーが上達して、でも、“改心”するわけでもなく最後の最後までおちゃらけ態度を貫く。この子たちの不純ぶりが、なぜか純粋で愛らしく感じたのは、自分が年をとったからでしょうか…。もし当時のリアル10代女子だったら、作品中にも出てきた女子生徒みたいに「低俗!」「馬鹿」「先生も間違ってます!」な~んてキレちゃうと思います。

 

 シナリオは、女性教師と男子中学生たちの“成長”を軸に、周囲の人物描写は必要最小限にしたのがよかった。とくに不良の先輩と、女性教師の恩師とその奥さんの登場シーンは、すごく短いけどインパクトがあって、心に響きました。ジョン・ウーにもこういうセンスがあればいいのに、な~んてね。

 

 それにしても、『おっぱいバレー』を観た昼間、劇場内にいた15人ぐらいの観客は私を除いて全員男性でした。やっぱりタイトルのせいかなぁ(苦笑)。いつもは女性割引デーを利用することが多い私にとって、男性しかいない映画館なんて初体験でした・・・!