1日はJA静岡経済連情報誌『スマイル』の取材で、静岡県産のガーベラを取り扱う仲卸会社、小売店、フラワーアレンジャーの先生を訪問しました。午前中は千葉の浦安、午後は調布、夕方から大田市場事務棟への移動。電車好きの私でも、もう乗り換えはカンベンしてくれ~と悲鳴を上げそうでした(苦笑)。でも、ひとつの県産品が、大消費地の市場の裏側で、どんな過程で育っていくのかが見えた貴重な一日でした。
浦安の仲卸業者というのは、日比谷花壇のグループ会社・フレネットHIBIYA。国内外の取引先があるので、浦安にある信濃運輸流通センター内に事務所を置いています。ディズニーランドを横目にタクシーで10分。海に面した倉庫街の一角・巨大流通センターのワンフロアに、フロア全体が低温に保たれた花の集荷場があります。
ちょうど、静岡からJAハイナンと浜松PCガーベラの荷物が届いて、スタッフが仕分け作業をしていました。静岡のガーベラは生産地で一輪一輪花のキャップをきちんと掛けてから出荷するので、仕分けしやすいと好評でした。
キャップをするのは、もちろん、花の保護が第一の目的だと思いますが、こうして「静岡のガーベラは扱いやすい」という声を直接聞くと、生産者は流通業者の手間を考え、流通業者は小売業者の手間を考え、小売業者は消費者の手間を考え、工夫して届けるということが、あたりまえだけど大事なことだなぁと実感します。
いろいろな話を聞いた中で印象に残ったのは、花といえども、食べ物と一緒で、国産または有機栽培にこだわる消費者が増えてきたということ。食事をする場所に飾る場合、間接的に手や口と接触する可能性があるからです。
その一方で、人気の高い〇〇〇〇〇〇〇などは、高値で価格変動しやすい国産よりも、低価格で通年価格安定している南米コロンビア産が主流とか。食品みたいに原産地表示をしなくちゃならないわけじゃないから、長距離輸送に耐える品種なら、世界中どこからでも入ってくるわけです。
その点、ガーベラは、長距離輸送に向かない体質が幸いし、100 %国産です。しかも、他の花に比べて元値がリーズナブル。浜松PCガーベラのように、生産者組織自ら、花のキャップ掛け装置を開発し、丁寧に出荷する地域というのは、市場にとって、とても重宝しているようです。
「うちで扱うすべての品目の中でも、静岡のガーベラは、生産者との連携がとりわけ強くて、信頼関係が出来ていると思います」と担当者。多少のリップサービスがあるとしても、静岡県民としては嬉しい限りです!
午後は、京王線仙川駅の近くにある、青山フラワーマーケット仙川店を訪ねました。
青山フラワーマーケットというのは、首都圏の駅ビル、駅ナカ、百貨店等に出店している人気のお花屋さんチェーンです。
最近のお洒落なお花屋さんって、花市場(マルシェ)みたいに自分で自由にチョイスできたり、リーズナブルなミニブーケやアレンジメントがたくさん揃っていますよね。日本では、お花って特別な時のお祝いやギフトとして買う習慣が根強かったけど、こんなふうに誰でも気軽に買いやすい売り方を最初に仕掛けたのが、このお店。“living with flowers everyday”を合言葉に、暮らしの中に花を活かすスタイル提案をしています。
…仕事と住まいが一緒になっていて、部屋には本や資料や酒瓶が散乱している我が家では、花を飾る習慣は一向に根付きませんが(苦笑)、自分に同居する家族や恋人がいたら、部屋に置きたくなりそうな愛らしいブーケやアレ ンジメントがたくさん並んでいました。
ガーベラの取材で来た私に気を遣ってくれたのか、店頭の一番目立つところにガーベラを置いて、浜松PCガーベラが作 ったシャガール版(写真)をディスプレイしてありました。
「浜松PCガーベラさんは、自前でこういうシャガール版を作ったり、ポスターやキャラクターを作り、うちのような小売店にも熱心に訪ねてきてくれます。私が知っている限り、日本で一番情熱のある産地です!」と袴田店長。「(浜松PCガーベラ代表の)鈴木さんの顔を見ると、こっちも頑張って売らなきゃって気持ちになるんです」。・・・地酒と一緒で、“思い”は伝染するんだなぁと思いました。
カラフルな色が揃うガーベラの中でも、淡いピンクが一番人気だと産地では聞きましたが、この仙川店では濃い色が売れるとか。「路面店なので色彩が飛んで見えるのかもしれません」とのこと。ちなみに、花を買うとき、特別にお目当ての花がない限り、お客さんの多くは品種や形ではなく色で選ぶそうです。
夕方、大田市場事務棟にあるJA静岡経済連東京事務所に、フラワーソムリエの金藤公夫さんをお迎えし、ガーベラを使ったフラワーアレンジメントを教えていただきました。
フラワーソムリエという肩書、金藤さんが月1回、フラワーアレンジを実演する新宿のなだ万新宿高野店のマネージャーが命名したとか。お客様のテーブルサイドで、来ている服や食べている料理のイメージに合わせ、ブーケを作ってプレゼントする粋なパフォーマンスを披露されるそうです。
「花屋へ花を買いに来る人の6割は目的買いですが、それ以外に、とりたて て目的がなくても立ち寄りたくなる花屋さんや、多くの人に、やっぱり花っていいな・もらって嬉しいなって思ってもらえる工夫を心がけています」という金藤さん。
「花を説明する時は、品種のことをクドクド解説するよりも、この花がどういう産地で、どんな人に育てられているかを説明するほうが理解されやすい。それには、産地に行って生産者の皆さんに花を育てる苦労や喜びを伺わなきゃ」と思い立ち、各産地を回って種取りや草むしりを体験し、作り手の思いを汲み取る努力を重ねたそうです。
「ハウスの中は“宝箱”だった」「花を単なるアレンジのパーツではなく、生きているものなんだという意識を強く持った。産地周りをするようになってから、仕事で花を扱うときも、ちょっとした所作に気持ちが入り、丁寧に愛情込めて扱うようになりました」と真摯に語ります。
2時間ほどの取材で、金藤さんのキャリアや、ガーベラのアレンジテクニックやアイディアもたくさんお話いただきましたが、生産者へのリスペクトを語る言葉が一番心に響きます。
「生産者の皆さんを前にデモンストレーションをしたときは、本当に緊張した。現場の作業に関しては、生産者の方が、一番手際よく効率的な仕事をしているから。その人たちの前でバタバタしているとホントに恥ずかしくなる。手際の悪さに目をつむってもらって、切り落とした茎や葉っぱも捨てずに使ったら、“いい仕事をしてるな”って認めてくれました。…ホッとしましたね」。
こういう心根のソムリエからは、きっと、テクニックだけじゃなくて、花に愛情を注ぐ大切さも自然に伝わってくると思います。生きものだからこそ、愛情を注げば応えてくれる。…花がそういう存在であることも。
金藤さんに教えていただいたユニークでカンタンなガーベラアレンジは、9月発行予定のスマイルでたっぷり紹介しますので、乞うご期待を!
今度は・・・日本酒ですね! 楽しみに待っています!!
今後ともよろしくお願い致します。
お疲れの事でしたでしょう
今度はお酒とガーベラのコラボ
益々静岡の『鈴木』には目が離せませんね