アメリカ先住民最古の民族・ホピ族をご存知でしょうか?。アメリカ中西部のフォーコーナーズ(アリゾナ・ユタ・コロラド・ニューメキシコの4州が交わる地域)で数千年にわたって移住を繰り返し、現在、アリゾナ州ナバホ居留地に囲まれた高原砂漠地帯に定住しています。私は3年前の夏、偶然、旅行でホピ族が暮らす村を訪れて初めてその存在を知り(こちらを)、現在焼津市で開催中の市民ビキニデーにて思わぬ“再会”を果たしました。(自分の意図しない、思いがけない出会いが、2回以上続くと、これは偶然ではなく必然だと思って勉強するようにしています)。
3月7日(土)に開催された映画『ホピの予言』の上映会。これに合わせて、ホピ族の長老たちが1975年から1991年まで発行していたニューズレター【テツカ・イカチ】の日本語版が紹介されました。3年前の旅行で、ホピは写真や記録を一切残さない、口承による伝統文化を守り続けている民族だと聞いたので、映画やニューズレターが存在していること自体、ビックリしました。が、じっくり目を通してみて、彼らがそのような広報手段を取らざるを得なくなった状況が理解でき、心が痛みました。【テツカ・イカチ】を読み始めたここ数日、なぜか頻繁に、めまいや立ち眩みに見舞われています。疲労が重なっているだけだと思いますが、あまり経験のない体調変化ゆえ、これは何かの啓示か・・・なんて思ってしまいます(苦笑)。
『ホピの予言』。映画の詳細は製作元ライフ・アンド・ライフ社の公式サイト(こちら)をご覧いただくとして、私がホピ族について強烈な印象を持ったのも、まさに彼らの“灰のつまったひょうたんが空から落ちてくる”という予言がきっかけでした。“恐怖の大王が降りて来る”で話題になったノストラダムスの大予言よりもはるかに具体的です。
彼らが先祖代々継承してきた予言によると、かつてこの世には3つの世界があり、人類が創造主グレイト・スピリットへの感謝を忘れるたびに創造主の怒りに触れて滅ぼされ、太霊による浄化が行なわれ、今は第3の世界を滅ぼした大洪水を生き残った祖先が中央アメリカ西岸に漂着。太霊マサウより第4の世界を生き抜くための教えと予言を記した「石版」を授かったという。第4の世界にもいずれ滅亡=大いなる浄化の日がやってくるが、その前兆として、
○馬以外のものが引く数珠繋ぎになった馬車を、白人が発明するだろう。
○空に道ができるだろう。
○空中にクモの巣が張り巡らされるだろう。
このような兆候が現れても、長老たちはけっして口外しませんでしたが、
○灰の詰まったひょうたんが空から落ちてくる。このひょうたんはとてつもない破壊力を持ち、川を煮えたぎらせ、不治の奇病を引き起こし、大地を焼き尽くし、長いこと生命を育たなくさせてしまう。
○そのひょうたんは、母なる大地の心臓(=地下鉱石)を掘り出して作られる。
この予言が、1945年の広島長崎への原爆投下というカタチで現実のものとなったとき、長老たちは「大いなる浄化の日が確実に近づいている」と悟ります。広島長崎へ投下された原爆の原料ウランがホピの居留地から掘出されたからです。彼らは国連へ特使を派遣し、予言を公表しようとし、3度訪ねて門前払いをされ、4度目にようやく受け入れてもらえたのでした。そのことも予言に記されていたそうです。
○私たちの大地の東の端に、世界の指導者たちが集まってさまざまな問題を話し合う場となる大理石の家が建つ。その門を4回叩くだろう。
「大いなる浄化の日」の最後の前兆は、白人が「空の家」を天に置く時だという。また「大いなる浄化の日」には不可思議な霧の中に、カギ十字の集団、太陽の集団、赤い色で評される第3の集団が出現し、すべてが生まれ変わるか、あるいはすべてが破滅する。この3つの集団の働きいかんで、太霊は西から「非常に多くの冷酷な民」を興し、大地を破壊するという。
「白人が作った空の家」とは国際宇宙ステーションじゃないかと思いますが、「カギ十字集団」「太陽の集団」「レッドカラーの集団」「西から興る冷酷な民」って今の国際情勢に照らし合わせると、いろんな解釈ができそうですね。日本が含まれているような気もするし・・・。
・・・こういう話から入ったほうが面白いだろうと、ついついキーを打つ手が走っちゃいましたが、そもそも彼らは終末思想で世間を洗脳する宗教者や預言者ではありません。【テツカ・イカチ】を読み込んでいくと、ホピ族の生き方や価値観そのものにやはり感銘を受けます。このニューズレター集は、一方的な先住民政策を押し付けようとするアメリカ政府の傀儡となったホピ部族政府と対立する伝統派の長老たちが、ホピ本来の生き方や価値観を次世代の子どもたちに残そうと、歴史証言資料として16年間にわたり発行したもの。立場の違い、世代間のギャップ等に翻弄される長老たちが、予言に込められた差し迫る危機に際し、伝統を守り続けてきた矜持、あるいは今伝えておかねばならない覚悟というものが伝わってきます。
彼らは太霊マサウに、自然と宇宙のサイクルを守る約束をし、大地と交わって農作物を育て、世界のバランスを保つため、祈りを捧げる暮らしを続けてきました。彼らが暮らすアリゾナの砂漠地帯は、グランドキャニオンに代表されるように、人間が生きるにはあまりにも過酷で困難な地です。ここでトウモロコシや豆類を育てながら、自給自足と非暴力を貫いてきました。
政治的なメッセージが多い【テツカ・イカチ】の中で、私自身は農作業の様子をつづった部分に惹かれました。
トウモロコシは気候と土さえ合えば、たいての場所で育ちます。ホピの地は乾ききっていますが、私たちは水をやったり肥料をやったりしません。ホピは長い経験から、それぞれの作物に最適な、肥沃な土地を見つけることができるのです。(中略)長老たちは、ものを育てるということが、大切な神聖なことだと言うでしょう。そこには多くの重要な意味があります。食べ物なくしては生命はありえないからです。誰かが食べ物を作るから、すべての生命が健康で、幸福に生き続けられるのです。だから作る者は喜んで心を込めて作らなければなりません。そうして畑と少しずつ交わっていき、調和の中で働くことができるようになるのです。
植え付けの時は、心がすこやかでなければなりません。憎しみや悲しみを持っていてはだめです。種に向かって歌い、語りかけ、喜びと共に芽吹くよう力づけねばならないからです。芽が出たら彼らに感謝し、力強く伸びるよう勇気付けるのです。育ったなら彼らに感謝するとともに、収穫させてくれて食物の準備を助けてくれた目に見えないスピリットにも感謝します。これらが、作物を育てるための知恵のほんの一部です。
伝統的な農法はとてもユニークです。環境と自然の法則を考慮しなくてはなりません。種はきれいに列に並べ、少なくとも4、5歩分の間隔をあけて植え付けます。トウモロコシとメロンは同じくらいの間隔で離し、豆やほかの作物は2歩分離せばよいのです。灌漑用の水がないのですが、この方法で植えると、雨が降るまでそれぞれの苗が根を深く下ろし、育つために必要な土壌中の水分が均等に行き渡るのです。
どんなものにも誕生して生命を謳歌するときと場所があり、それぞれに最適な時があることをホピは知っています。それは注目すべき知恵で、自然のバランスが壊れたときに、どんな兆候が見られるかを知っているのです。
春が近づくと、時を告げるもの、目印になるものをよく見ておかなければなりません。太陽が夏の家(夏至)に向かい始めると、地平線のある特定の目印となる場所から昇り、春が来たことを告げます。それを見てホピは植え付けを始めるのです。
ホピはまた、開花時期がそれぞれ決まっている、特定の砂漠の花にも注意して観察しています。それらの自然の事象に注意を向けることで、ホピは地球が安定し、バランスが保たれていることを知るのです。自然な季節の巡りに合わせて必ず起きる事柄が、いったいどこで起こり、始まっているかを、各地で開かれる「農産物直売市」が教えてくれるだろうと、と私たちの教えは伝えています。私たちの儀式のサイクルもまた、ほかの違う役割を持っているのですが、悲しいかな、すたれてきています。これも何かも兆しかもしれません。
なぜ儀式という不可思議なものが、私たちのトウモロコシを育てるのでしょうか。私たちの理論はほとんどの人にとって、さほど意味のないものかもしれません。しかしホピはそれらを導いてくれる、霊的な導きに誇りを持っています。(テツカ・イカチ第29号/1985年発行より・永峰秀司訳)
これを読むと、自然農法の教科書のようだし、禅宗の典座(台所役)の心得のようだし、以前紹介した二宮金次郎の伝記(こちら)のようでもあります。植物の種に語りかけながら蒔くなんて、なんだかとても日本的だし、いかに厳しい土地であっても、大地と調和しようとする謙虚な心が、命の糧を導くのだと分かる。農作物直売市に並ぶ作物で季節の移り変わりを見定める・・・思わず、「あるある」って言いたくなりますね。
日本の江戸時代以前にも、こういう暮らしがあったはずだ、と思います。グレイト・スピリットへの信仰は日本の神道に近しいような気がするし、灰色のひょうたんが日本の大地で炸裂したのも、不可思議な縁を感じます。「今さら電気や水道のない自給自足の暮らしに戻れるはずがない」と思う一方で、3・11以降、いろいろな局面で立ち止まって振り返る人も増えたはず。中には“自給自足できる暮らしが一番強い”と感じている人も少なくないでしょう。
【テツカ・イカチ】とは【大地と生命】という意味だそうです。今の時代に生かされている意味を、落ち着いて考える時間を我々も持ちたいもの。なお【テツカ・イカチ】はこちらで入手できますので、興味のある方はぜひ!