JA静岡経済連情報誌スマイルの静岡茶特集つづきです。
フロンティアスピリットを持った農業生産者を紹介する『農力開拓人』というコーナーでは、2人の茶農家を紹介しました。
まず牧之原市の農事組合法人「茶夢茶夢ランド菅原園」の代表・増田浩二さん。「茶夢茶夢(ちゃむちゃむ)ランド菅原園」というのは、牧之原市菅ヶ谷地区の茶農家6人で結成した“会社”で、6人が個人で経営していた茶園を統合し、共同で摘採管理・荒茶製造する組織です。
企業が農業に参入する例は珍しくないと思いますが、個人農家が集まって企業を作って成功させる例はなかなか少ない。それまで先祖代々、個人の○○園という名前でやってきた看板を捨てて、法人組織の一組合員になるんですから、当人が腹をくくる以上に、身内の理解も必要でしょう。
その難しいハードルを超えるのに、増田さんは、「10年後、20年後の茶園を想像したとき、後継者がいなくてもお茶を作り続けるには、雇用型経営にしていくしかないと思った」と明快に語ってくれました。そう、今の農業生産者に欠けていて、一番必要な、近未来へのビジョン。これを具体的に行動に起こしたというわけです。
取材中は照れくさいのか、仲間とゲラゲラ雑談を交えるなど巧妙な語り口だった増田さんですが、最後に「10年後には家族を月給で養っていけるようになりたい」とビシッと締めてくれました。
取材後、県下有数の茶産地である牧之原の茶品評会でトップを獲得。昨年も関東ブロック茶共進会で最高賞(農林水産大臣賞)、経営の部で内閣総理大臣賞を受賞されています。品質と効率を見事に両立させるその手腕にも唸りました。
もう一人は天竜茶の太田昌孝さん(写真右)。昨年11月に掛川市で開かれた第66回全国茶品評会で最高賞(農林水産大臣賞)を受賞し、これまでも数々の受賞歴を誇る名人です(ホームページはこちら)。
私は個人的に天竜や川根など山間地の渋味のあるすっきり爽快なお茶が好きで、取材で天竜方面に行くときは自宅用の値ごろ茶を大量に買い込みます。天竜区西藤平・阿多古街道沿いにある太田さんの自園直営店にも寄った事がありますが、ご本人にお会いするのは初めて。
北遠なまりの迫力ある語り口で、「ええからまず茶畑を見ろ」と有無も言わさず、車で数分の山間に広がる茶園に連れていかれ、人の背丈ほどに伸びた自然仕立ての茶畑を案内されました。
足元がふかふか気持ちいいなあと思ったら、稲藁を敷き詰め、土には種がす、魚粉など自家製の完熟堆肥を混ぜているとか。「このほうが気持ちよかんべ?」と大田さん。「扇風機に当てっと風邪引っから」と防霜ファンはおかず、手作りの風除けネットで囲います。「この子ら、手をかけりゃぁちゃ~んと応えてくれっと。おら、自分の子より可愛ええもん」と。・・・なんだかこの一言で、太田さんのお茶がなぜ評価されているのか、理解できた気がしました。
ご存知の方も多いと思いますが、太田さんのお茶を水出し煎茶にしてワインボトルに詰めた『King of Green MASA Premium』は、東京の百貨店では1本3万円ぐらいの高級ギフトとして人気があります。ミャンマーのアウンサン・スーチーさんが来日されたときは、お酒が飲めないスーチーさんのためにこのお茶が用意されたとニュースになっていましたね。
2008年の北海道洞爺湖サミットでも世界の首脳に振舞われた静岡・天竜茶。今回の取材で、太田さんのお茶が使われたとうかがいました。「静岡は酒(磯自慢)も茶も日本代表だぁ~!」と思わず心の中でガッツポーズしてしまいました。
そんな太田さんご自身は、お茶の樹をわが子以上に慈しむ、根っからの作り手さん。4月下旬の出品茶手摘みの写真を撮りにうかがったとき、てんてこまいだった奥様に対し、「お前が倒れたらお茶をやめてもいい」とつぶやいたとか。
植物のいのちと向き合う農業という仕事は、人間の都合に一方的に合わせていては成り立たないし、自然に都合に合わせていたら人間の体や暮らしがもたない・・・その帳尻をどのへんで合わせるかの判断力や価値観を共有できる家族や仲間が必要なんだ・・・と、殊更実感させられました。
『農力開拓人』というのは私が適当につけたコーナータイトルですが、農の力とは、家族や仲間を同志にできる人間力に他ならないようです。
太田さんの出品茶摘みについては、こちらの記事でも紹介してますのでご覧ください。
スマイル静岡茶特集、あと2ヵ所、産地紹介があります。つづきはまた。
昨日と一昨日、とある研修会に参加いたしました。
そこで茶夢茶夢ランドの方とご一緒させて頂いたため、そちらの事を検索していた所
こちらにたどり着きました。
私のブログに、こちらの記事をリンクさせて頂いてしまったので(事後報告でごめんなさい)
ご連絡のコメントを入れさせて頂きました。
よろしくお願いします。
ありがとうございました。