杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

介護学習直前詰め込み

2016-01-30 15:14:06 | 社会・経済

 介護ヘルパー初任者研修の試験が明日に迫り、教科書を必死に読み返しているものの、ちっとも頭に入ってきません 前回に引き続き、書き起こしインプット作戦です。

 

高齢者の性格分類/ライチャードの類型論

 私は大家族の初孫として生まれたので、幼い頃から大人の顔色を見るのに慣れていて、年上の人とのコミュニケーションは比較的自然に出来ると自負してきました。取材やインタビューの仕事は自分に向いているとも思ってきましたが、振り返ってみると、年配の取材対象者で気難しく、近寄りがたく、うまく対話ができずに終ってしまったという経験も多々あります。こういう心理学を学んでおけば少しはよかったかなと思えたのが、アメリカの心理学者スザンヌ・ライチャード(Suzanne Reichard)による高齢者の性格分類。高齢期の性格を以下の5つに分けています。

 「成熟型」・・・過去を悔やむことなく、未来を悲観的に考えない未来志向型の高齢者。他者を非難することもなく柔軟で積極的で、毎日が充実して生きられる適応型タイプ。

 「安楽椅子型」・・・成熟型よりは消極的。自分から社会に関わるというよりも誰かに何かをやってもらいたいタイプ。家で穏やかに暮らすことを望む適応型タイプ。

 「装甲型」・・・老いに抵抗する自己防衛型の高齢者。「若いもんには負けんぞ」とムキになるタイプ。仕事し続けることによって老いへの不安を解消しようとするが、現実と自分の思いにギャップが大きくなると不適応を起こす。

 「憤慨型」・・・外罰型とも呼ばれ、さまざまな挫折や失敗を他人のせいにし、自分を守ろうとする。欲求不満に対する耐性も低い不適応型タイプ。

 「自責型」・・・内罰型とも呼ばれ、自分の卑下し、挫折や失敗を自分のせいにする。抑うつ的になる不適応型タイプ。

 取材しづらかった人のことを振り返ってみると、確かに「装甲型」「憤慨型」に当てはまるかな・・・なんて思いますが、高齢者全てがこの5つにきっかり分けられる、というものではなく、複数のタイプを併せ持ったり、状況によって変化することもあります。もともとの性格から来ているものもあるでしょう。自分は時折「自責型」のようにウジウジ落ち込むことがあるので、気をつけようと思います。

 高齢者の性格の特徴としては、若い頃よりも社交性は減少するが、協調性と誠実性は上昇する。一方で、「疑い深い」人のほうが長生きするそうです。適度の疑い深さは、人の言いなりになったり他人の意見にひきづられたり、騙される、特殊詐欺に合う等の防止につながるから。・・・なるほどなるほど、面白い指摘ですね。

 

 

インテグレーションからインクルージョンへ

 “統合”を意味するインテグレーション(integration)の考え方は、ノーマライゼーションの観点から保育や教育現場にも浸透し、障害者が健常者と一緒に学んだり、生活をともにする機会が増えました。でもカタチだけ一緒に平等に、でOKというわけにはいかない。障害があるなしにかかわらず、すべての人々を包み込む環境の中で、一人ひとりの個別ニーズに応じた支援を行なうというのが、インクルージョン(inclusion)の考え方。障害者福祉の分野においてはこちらの考え方が主流になりつつあるそうです。一人ひとりにきめ細かく・・・となると、介護者にもより高い専門性が必要になりますね。これって福祉に限らず、さまざまなサービス事業で多様化する顧客ニーズにきめ細かく対応するビジネスに必要な観点でしょう。

 

 

ボディメカニクスの7原則

 介護職の人の多くが腰痛に悩まされているという話をよく聞きます。腰痛の主な要因は①動作要因(無理な姿勢)、②環境要因(滑りやすい床面や段差など)、③個人的要因(年齢や既往症や基礎疾患など)、④心理・社会的要因(職場での対人トラブル、過度な疲労など)が考えられます。それぞれに対処方法が考えられますが、大前提となるのがボディメカニクスへの理解。

 ボディメカニクス(骨格・筋肉・神経・内臓などを中心とした身体の動きの仕組み)の7原則とは、①支持基底面を広くする(安定した両足の位置)、②重心の位置を低くする、③重心の移動をスムーズにする、④重心を近づける、⑤てこの原理の利用、⑥利用者の身体を小さくまとめる、⑦大きな筋群を使う。・・・慣れないうちは時間がかかると思いますが、利用者にとって安全かつ楽な姿勢での移動、利用者が持つ力を引き出し、生かすという視点を忘れないようにしないといけませんね。いずれにせよ、ご家庭で介護をされている方にも役に立つ知識だと思います。

 

 

エンゼルケア

 私は祖父が自宅で息を引き取る瞬間に立ち会うことができました。かかりつけの主治医が臨終に間に合ったので、事なきを得ましたが、もし家族やヘルパーだけのとき、呼吸が停止するという事態に至ったら、すみやかに主治医を呼ぶ。動転して119番をしたりすると、救急隊が到着した時点で明らかに死亡していたら警察に通報され、不審死扱いになり、検死という手順を踏むことになる。たいへんなオオゴトです。

 施設ではそのような心配はありませんが、ご家族が到着するまで時間がかかるようなら、寝具を整え、顔をきれいにし、居室内をかたづけるなど“お別れの時間”のための準備をします。これをエンゼルケアというそうです。

 具体的には①器具(医療用カテーテルなど)の除去、②体液や排泄物が漏れ出ないための処置、③褥瘡などの傷を保護する手当て、④身体を清潔にするためのケア、⑤その人らしい外見に整えるケア。こういうことを、長くお世話していた利用者さんに対し淡々と行なう。これは介護職にとっても少なからず心に負荷がかかるものではないかと想像します。【そんなときは一人で抱え込まず、関わったスタッフ同士で話しをする。同じ施設でともに暮らしてきたほかの利用者さんにも、無理に隠さず、お別れの声をかける機会を設けるなど配慮をしましょう】と教科書にありました。・・・あらためて介護職とは、人の死と隣り合わせの仕事であり、人を理解し、人とつながる価値を見出すため、己の力をうちから搾り出す仕事であると実感します。

 



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