2月6日付 読売新聞編集手帳
公開中の映画「ALWAYS三丁目の夕日’64」は
五輪開催に沸き立つ昭和39年の東京が舞台だ。
ご近所の目を集めるカラーテレビ、
氷屋の軒先に登場した自動販売機。時代の転換点を写す小道具に
「あの頃」を懐かしむ人は多かろう。
その中には、
愛煙家もいるにちがいない。
家庭で職場で街角で、
誰に気兼ねすることなく一服できた何ともおおらかな時代よ――。
日本たばこ(JT)の調査で喫煙率のピークは昭和41年、
成年男性で83・7%だった。
世の中の軸足が<成長>から<環境>や<健康>へと移り、
男性の喫煙率は昨年、
33・7%まで低下した。
厚労省は「喫煙率目標」の導入を目指すというから、
スモーカーの肩身は狭くなる一方である。
そんな喫煙者の間で話題を集めているのが、
今月発売された「ザ・ピース」だ。
材料や製法に技術の粋を尽くし、
20本入り1箱千円はJT史上で最も高い。
昭和21年にデビューしたピースは「平和」という名に終戦直後の匂いが立ちこめる。
昭和の紫煙は、
流行歌の中で孤独と挫折、苛立(いらだ)ちやためらいの場面も演出してきた。
さて<平成のピース>の運命やいかに。